7.
青年たちが探していたルミは、衣服やおもちゃが散乱しているクローゼットの中で、目を閉じたまま蹲っている。その姿はミノルの不安を煽り、その場で両膝を突かせる。
「おい、ルミちゃん。起きろって」
ミノルは彼女の肩を揺さぶりながら、囁き声で呼びかける。しかし、彼女は目を閉ざしたまま、何も発しない。
「生きてるよね?」
青年はミノルの背後から彼女を見つめながら呟く。
「安心しろ。気絶してるみてぇだ」
ミノルは振り返ることなく、ルミの顔を見ながら答える。
「それなら良かった」
「ああ、そうだな。ってか、おい」
「ん?」
「『ん?』じゃねぇよ。お前の彼女だろ?俺と代われ。友達の俺より彼氏のお前に介抱されたいだろうよ」
「そうだね…ん?」
会話の最中、青年が目を細めて、クローゼットをじっと見つめ始める。それに対しミノルは、怪訝な表情を彼に向ける。
「どうした?」
「それ、脱出に使えるかも」
「どれだよ…あ」
怪訝な表情で後ろに振り返ったミノルが目を見開く。その目で捉えているのは、クローゼットの中で散乱したままの衣服やおもちゃの中に混ざっているバールだった。
「なんで子供部屋にこんなもんが…」
ミノルは不思議そうにバールを右手に掴む。釘抜き部を上にし、持ち手部分から視線を上げていく。
「だいぶ古ぃけど、まだ使えそうだぜ」
「それなら窓に打ち付けられた木板を剝がせる」
「そうすれば外に出られる!」
ミノルは弾んだ声で答えると、青年に笑顔を向ける。その希望に満ちた表情で、彼はこう告げる。
「こんなところ、さっさと出るぞ」
「うん」
青年は口角を上げて返事する。そうして部屋を出ようとする…、その時だった。
カチャン。
マネキンの足音が青年たちの顔色を無くす。その音は、自分たちの背後から聞こえたように感じたからだ。
青年たちは、ゆっくりと後ろを向く。その先にあるベッドを見た途端、背筋が凍った。下の隙間からマネキンが顔を出し、彼らを見つめていたからだ。
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