6.

青年たちの片手にある懐中電灯が、2階にある子供部屋のドアを照らしつける。

「この中にルミちゃんが…」

「…そうみたいだね」

 表情が固まっているミノルの呟きに、青年はドアを見ながら答える。

 マネキンの近づいてくる足音は聞こえない。ここに来るまで見つかることなく、青年たちは安堵していた。しかし、その安堵は一瞬にして消え去る。

「…行くぞ」

 気を取り直したミノルがドアノブを掴む。気持ちを落ち着かせるように一呼吸置くと、音を立てないようにゆっくりとドアを開いた。

 彼らの視界に映るのは、荒廃した世界。ほこり塗れの煤けた机と棚に、シーツや枕の所々が黒ずんでいるベッド。所々に黒いシミを残したままの床には、錠剤の入っていないブリスターパックがいくつか散乱したままで、穏やかでない出来事があったことを物語っている。

「…何だよ、誰もいねぇじゃねぇか」

 ミノルが入り口で呆然と立ち尽くす。信じられないといった様子で部屋を見渡していく中、左端にある机で目が留まる。

 青年は静かに彼の視線を追う。彼らがじっと見つめるのは、机にある写真立て。埃に塗れ、表面に大きな亀裂が走っているその中には、この館の家族と思われる写真が収まっている。

 青空と木々を背景にして立つ両親と彼らの足元に立つ10歳ほどの男の子。男の子と父親の側には、家政婦のような格好の若い女が立っている。両親と女は、こちらに優しい笑みを向けている反面、男の子は不機嫌そうな表情を向けている。

「…なんでそんな顔してんだか、このガキは」

 ミノルは不快そうに顔を顰めながら、写真立てを伏せた。

「…」

 青年は無言のまま、ミノルの背中を見つめる…、その時だった。


 ガタン。


 背後からの物音に、青年たちはバッと後ろに振り返る。

「…あのクローゼットからだ」

 ミノルが恐る恐る近づいていく。そして、そこを開けた途端、目を大きく見開く。そこには、目を閉じたまま蹲っているルミがいたからだ。

 


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