4.

 青年たちは今、一階の角部屋で束の間の休息を取っていた。

「危なかったな、タケル…」

「そうだね…」

 壁に凭れながら会話を交わす彼らの息は荒い。迫り来るマネキンから全力で逃げてきたからである。

 逃げ切ったものの、青年たちは安心できずにいる。あのマネキンが徘徊する中、逸れた青年の彼女を探さなくてはいけない。あのマネキンをどうにかしない限り、再び見つかって追われるの繰り返しになるからだ。

 束の間の休息によって、息切れと体力が徐々に回復していく。そのまま見つからないようにじっとしている中、ミノルが呟く。

「なあ、タケル」

「何?」

「あのマネキン、子供部屋にあったやつだよな?」

「うん」

 ミノルの呟きに、青年は小さく返事する。すると、ミノルは顔を強張らせながら続ける。

「絶対そうだ。あの2階の子供部屋にあったマネキンの仕業だよ…」

「…」

「思い出すだけでも気持ち悪ぃ…。部屋中荒れてるっていうのに、マネキンだけは異常に綺麗だしよ」

「…」

「しかも、そいつをじっと見てたら急に眠くなって、気づいた時にはお前らが消えたときた」

「…」

「ああ、くそっ。こんなことになるんなら、来なければよかった。夏休みの肝試しで来るような場所じゃなかったんだよ、ここは…」

 後悔しているミノルは歯を食い縛りながら、両手で頭を抱えている。

「…」

 青年は無言のまま、泣きそうな顔のミノルを横目に見る。その直後、右太腿に小さな振動が伝わり、そちらに意識を向ける。

 ズボンの右ポケットに手を入れ、スマホを取り出す。すると、画面にLINEの通知が表示されていることに気づく。

「…ミノル」

「何だ?」

 ミノルは頭を抱え、俯いたまま返事をする。

「返事きてる」

「…マジかよ」

 ミノルがゆっくりと顔を上げる。その驚きに満ちた顔で青年のスマホを覗き込む。彼らの関心を引いたもの、それはルミからのメッセージだった。

 

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