3.

 カチャン…、カチャン…。


 廊下の奥から聞こえてくる不気味な音。青年たちは警戒心を高めながら、部屋の出入り口から顔だけを出す。

「何なんだ?この音は」

 ミノルが顔を強張らせながら左右を見渡す。

「…左からだ」

「あ?」

 かたわらの青年が冷静に呟くと、ミノルが左に顔を向ける。

 彼らの視界に映るのは、暗く荒廃した廊下。真っ直ぐに続く道の先は、さらに暗さを増した左側に続いている。

 

 カチャン…、カチャン…。


「なあ、どんどん近づいてきてねぇか?」

 そう呟くミノルの顔がさらに強張っていく。

「それに、この音のリズム。歩いてる時にそっくりじゃねぇか?」

「そうだね」

 青年は平然とした様子で返す。

 

 カチャン…、カチャン…。


 足音のようなリズムで発せられる不気味な音。青年たちが突き当たりをじっと見ていていると…。

「ひっ!」

 ミノルが短い悲鳴を上げる。青年は悲鳴に反応も視線も逸らすことなく、眉間に皺を寄せていく。

 廊下の突き当たりから現れたモノ。それは、ショートボブに整えられた黒髪に、真っ赤なワンピースを身に纏ったマネキンだった。


 カチャン…、カチャン…。


 マネキンが緩慢な動きで青年たちに身体を向ける。ギギギッという不気味な音を立てながら動く様は、青年たちに恐怖を与える。

…」

 ミノルの顔は、すっかり青ざめていた。

「タケル…逃げるぞ!」

 ミノルがそう告げたと同時、青年たちは一斉に部屋を出て行った。その直後、マネキンは2人の背中を追い始めた…。



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