2.
タケルという名の青年は、頭を悩ませる。廃墟と化した洋館を出ようとした矢先、玄関ドアが開かないという不測の事態が起きたからだ。
外に出入りできるドアは、そこしかない。そこが封じられてるなら、窓から出ればいい。脱出の道はまだある、そう期待を抱きながら、青年たちは館内の探索を始める。
探索が進むにつれ、青年たちの表情が曇り出していく。館内1階を見た結果、いくつかある部屋の窓が全て封鎖されていることが分かったからだ。しかも、備え付けの蓋の上に何枚かの木板で釘打ちされているという堅牢さっぷりだ。
1階から2階までは、飛び降りても問題ない高さ。2階に一つくらいは、開いたままの窓があるはず。そう期待しながら進んで行った青年たちだったが、最後の部屋を訪れた途端に消え去った。
「くそっ!どうなってんだよ!」
青年の友人こと、ミノルが苛立たしげに窓を殴る。その窓もまた、これまでと同じように蓋の上に何枚かの木板で封じられている。
「これじゃあ、出られねぇじゃねぇか…」
ミノルが悲痛な表情で呟く。一方の青年は、落ち着いた様子で窓を見つめている。
「…」
--窓もダメときたか。それに…。
「…とりあえず、ルミちゃんを探さねぇとな」
「…そうだね」
落ち着きを取り戻したミノルが呟くと、青年は眉根を寄せて返事した。
青年を悩ませるもう一つの問題。それは、途中で逸れたという恋人のルミを探さなくてはいけないことだ。
「…」
「心配だよな」
「え?」
「ここにいるはずの彼女が、どういうわけか見つからねぇんだからよ」
「…うん、そうだね」
「脱出は後だ。とにかく、ルミちゃんを探すぞ。一人で寂しいだろうしな」
ミノルはそう言うと、ぎこちない笑みを青年に向ける。それに対し青年が静かに小さく頷く…、その時だった。
カチャン…、カチャン…。
廊下から聞こえてくる不気味な物音。青年たちは廊下に目を向けると共に、警戒心を高めていく。
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