第16話 PANTA『反逆の軌跡 (Don’t Forget Yesterday)』
神経症の悪影響があったかもしれませんが、PANTAの精神状態はあまりよくなかったですね。PANTAにとっての黒歴史になるだろう、所謂『俺、もうやめた』事件が起こります。
巨大化するロック産業と比べて、ちっぽけな自分に嫌気がさした、そう思ったのでしょう。スタッフが新しいアルバムの打ち合わせをしている中で、いきなりドアを開けて「俺、もうやめるぞ」と。スタッフは何があったかわからなかったでしょうね。PANTAにとっては、もうやってられないよっていう気持ちだったと思いますが。
しかしながら、ラジオから流れてきたというスティングの『ラシアンズ』という曲。当時のアメリカとソ連の東西冷戦を批判した曲ですが、スティングはグラミー賞の場で堂々とこの歌を歌ったのでした。「まだ世界には骨のある奴がいるものだ。俺も負けていられない」と、再びPANTAはやる気を取り戻します。偶然にも『ポリス』と『頭脳警察』という警察を名乗るグループのメンバーによるエピソードです。「日本には俺がいる」という自負の下、新しいアルバムの製作をします。
https://www.youtube.com/watch?v=efneCqFW61Y
とはいえ今回のアルバムは、強がっている自分ではなく、自分の弱い部分を敢えて曝け出す、そんな感じのコンセプトです。弱い部分の自分を晒す事でもっと強い自分を目指していく、そんなPANTAの考えに対しては、「ロッカーらしくない」との反対の声の方が強かったです。勿論、PANTAは強行しますけれど。音としては、変な小細工は関係無しっていう感じでしょうか。
https://www.youtube.com/watch?v=3V-n7LXa2EQ
『反逆の軌跡』というと、PANTAが世の中の理不尽に対して怒りを見せてきた、そんなイメージで捉える人が多いとは思いますが、PANTA自身は、『世間のPANTAのイメージに対する反逆である』と述べています。表のイメージではなく、自分が持っている弱い部分を見せる事。それが世間で思い込まれているイメージへの反逆になると。ちょっとややこしい感じですけどね。だから、今までは歌う事のなかった『俺も少し疲れてるみたい』というような弱い部分を表現するような歌詞で曝け出しています。
https://www.youtube.com/watch?v=0YwnxgnSLJI
勿論、ハードな曲もありますね。ファーストソロの『Pantax’s World』以来のゲスト参加となるチャーのギターも冴える『13号埋立地から』とか。疾走感のある『死ぬまで離さない』とかはライブでも演奏されますね。
https://www.youtube.com/watch?v=klJMB4dzy4A
https://www.youtube.com/watch?v=VFBZrrKBrzI
結果として、PANTAの生身の部分を曝け出したような私小説のような作品となっています。それにしては、意外と聴きやすい感じに仕上がっていますね。その反動なのか、次作はまた癖のある作品が出来る事にはなりますが……。
余談ですが、このアルバムの発売から4年後に荻野目洋子さんのアルバムである『FAIR TENSION』をプロデュースしますが、その中の『昨日より輝いて』という曲は、『反逆の軌跡 (Don’t Forget Yesterday)』の歌詞を女性向けにレストアしたものになります。ロックな曲をアイドルに提供するのは珍しいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=LNpek2rxBBY
もっとも例外として、アイドルではないとはいえ、ハードな曲を女性に提供した例もあります。内藤やす子さんに提供した『とおせんぼ』という曲です。これ、絶対女性が歌う様な曲じゃないよなぁ。内藤さんだから違和感なく歌えたと思いますが。
https://www.youtube.com/watch?v=pBUO-28xn1s
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