第11話 PANTA&HAL『TKO NIGHT LIGHT』

 残念ながら、PANTA&HALは1980年2月に行われたライブをもって解散します。スタジオアルバム2枚のみの儚い命でした。PANTA自身は、いいバンドだから解散したくはないと思っていたようですが、メンバー間のズレのようなものが出てきてしまった様です。実力があるメンバーゆえの音楽性の相違。これ以上続けない方がいいと判断されました。残念な事です。


 PANTA&HAL最後の作品となるのは、『TKO NIGHT LIGHT』。1980年7月16日の日本青年館でのライブを収録したライブアルバムです。HALの後期のライブとなります。PANTAは殆どライブアルバムを出していませんでした。頭脳警察の初期の方では、『1』がライブアルバムですが、この時点では入手困難。それ以外ですと、1971年の三里塚における幻夜祭のイベントでの頭脳警察のライブが『幻野 幻の野は現出したか 〜’71日本幻野祭 三里塚で祭れ』に収録されています。頭脳警察以外のアーチストも収録されていますが、成田闘争で緊迫していた時代の空気を感じさせる、ドキュメントとしても一級品ですので、機会があれば聴いてほしいものです。(また無茶を言う)


 その為、実質的にはPANTA初のライブアルバムと言えるものです。ライブアルバムとはいえ、2枚のアルバムには未収録の曲が多数ありますし、極めてテンションは高いです。PANTA自身も、敢えてミスの部分も修正はしませんでした。そのままの姿で聴いてほしいという事だろうかと。最初は1枚で出す予定だったのが、2枚組にしたのは、出来が良かったからでしょうね。(CDでは1枚にまとめられました)


 1曲目は『HALのテーマ』。当時の流行だったニューウェイブとハードロックを意識したというわけではないけれど、最初の頃のフュージョン的な雰囲気は無くなっています。アルバムのテーマに合わないのでスタジオアルバムには収録されていませんが、HALとしては外せない曲ですね。


 https://www.youtube.com/watch?v=I37gJ-tbsB4


『フローライン』は、この時点では構想中だった大作『クリスタルナハト』の収録候補曲と言われたものです。完成はずっと先になりますけれど。重さを感じる名曲です。


 https://www.youtube.com/watch?v=Ijxry3P9YRg


 他にも注目したいのは、『ステファンの六つ子』。『1980X』の先行シングルとして発売された『ルイーズ』のB面に収録されていますが、アルバムには未収録です。『裸にされた街』と並んでHALのバラードの名曲です。


 https://www.youtube.com/watch?v=PjRRdaVRva4


 2枚のアルバムに収録された曲もスピード感とシャープさを増しています。会場も盛り上がっていて、生で見たかったなぁと思うものです。更に最後期になると『メルティングポット』といったスピードナンバーもありますし、早期の解散はやはり勿体ないなと。


 余談ですが、レコ倫とも揉めた『マーラーズ・パーラー』は、ロック色を強めて『マーラーズ・パーラー80』として収録されています。レコ倫のブラックリストに載っているのかどうかは知りませんが、色々とクレームは付けられていたそうです。何しろ、『ブル新』という歌詞が共産党左翼用語だからダメだとか言われたようです。それに対しては「日産ブルー〇ードの新車の事だ」といったらそれは通ったようです。それよりも「これは〇〇ガイの書いた歌だ」という発言があった事を知った時は、PANTAもかなりキレたらしいです。もしかしたら、ビートたけしさんに先駆けて襲撃を行って傷害事件になったかもしれません。何しろPANTAと仲の良いミュージシャンは、安岡力也さんとかジョー山中さんとか白竜とか。アナーキーの仲野茂さんも喜んでついていきそうだし。まぁ何もなくて良かったです。

 それよりも『マーラーズパーラー』の歌詞で修正を余儀なくされた部分は『KCIA』。

 レコードでは『AICKアーケークークー』となっていますが、何が問題なのかは自分ではよくわかりません。理由はあるんでしょうけれど。


 https://www.youtube.com/watch?v=qDKuGdq3jkg






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