PANTAソロ その1

第7話 PANTA『PANTAX’S WORLD』

 PANTAは頭脳警察の解散後、ソロ活動に向けて行動を移しています。実は正確には頭脳警察の末期の時点ですでにメンバー候補の人を調べていたりしていたようです。なかなか強かですね。キティレコードからも話が来ていて、PANTAも移籍する気だったようですが、ビクター側から、新しいレーベルを作るから残ってほしいという話もあり、結局、フライングドックという新しいレーベルからアルバムを出すという話になりました。


 本来なら頭脳警察では出来なかったバラードを中心としたアルバムを作りたかったようですが、その時に他の人のコンサート巡りをしてきた結果、今の日本のロック界には軟弱なものしかいないのか、という結論が導き出されたようです。その為、初のソロアルバムとなる『PANTAX’S WORLD』は、PANTA曰く、「ナタでぶった切るようなロック」のような作品となったのでした。


 集まったメンバーは、ソロデビュー直前の竹中尚人さん(チャー)、ウエスト・ロード・ブルース・バンドの塩次伸二さん、元サウス・トゥ・サウスの井上茂さん、元フラワー・トラヴェリン・バンドの和田ジョージさん、元スモーキー・メディスンの佐藤準さん、更にジョン山崎さん、妹尾隆一郎さん、金子マリさん等、錚々たるメンバー。それに加えて、当時ドゥービー・ブラザーズと一緒に来日していたメンフィス・ホーンズを使いたいと我儘を言ったのですが、流石にそれは叶わず、知り合いに声を掛けて頼り、パンタックス・ホーンズなるものを作ってしまいます。総計、20人を超える人が集まりました。そしてPANTAの作品の中では、最も分厚い音の作品になったとも言われています。


 1曲目はソロの最高の名曲といえる『屋根の上の猫』。冒頭のトランペットからしてカッコいいの一言。語彙力と言われようともカッコいいんです。ライブで演奏された日には、大声で一緒に歌いますよ。それだけエネルギッシュな曲であるとともに、『同化』という究極の愛について歌っています。まぁ最後は猫になって屋根に登るんですけどね。後に大槻ケンヂさんもストレートなカバーをしています。


 https://www.youtube.com/watch?v=gaStPap83Rg


 このアルバムは、ストレートなロックだけでなく、ちょっと捻くれた感じの曲も混じっています。元々芝居用に提供された『三文役者』は、クセがあって演奏しにくいとか、『青い烏のブルース』は、和風ブルースでサビらしいものがないとか。

 そしてPANTAのソロの名曲でありながら問題作でもある『マーラーズ・パーラー』。

 レコ倫とも揉めるきっかけとなった曲で、意味があるのかないのかわからない言葉の羅列が続きます。なお、作家の橋本治さんは、著作『秘本世界生玉子』の中で、私説のマーラーズ・パーラー論を記しています。個人的には、アルバムのフォークっぽい雰囲気のものよりも、ライブでのロックな感じに演奏している方が好きですね。


 https://www.youtube.com/watch?v=uTJbjh_xe3g


 余談ですが、PANTAX’S WORLDというのは、頭脳警察時代のPANTAの作詞作曲の登録名です。(ソロになってからは、本名の中村治雄が登録名となっています)

 PANTAは最初、ジャスラックを儲けさせたくないと思っていて、印税に関する登録はしなかったそうです。しかしながら実際は、ジャスラックにとっては、支払うべきところに払わずに済むだけなので、全く意味のない事がわかり、頭脳警察が解散した時にまとめて登録したら、今までのものがまとめて支払われて驚いたというエピソードがあります。



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