第8話 PANTA『走れ熱いなら』

 PANTAは、頭脳警察解散後のソロの時期を、エアポケットと呼んでいるようです。試行錯誤が繰り返されている感じだからかもしれませんが。まだ明確な方向性が示されていない、そんなイメージがあるのは、アルバムの半分の曲を、花之木哲さんや三原元さんといった人との共作になっているからかもしれませんね。


 演奏のメンバーは、関西のブルース系の人脈から山岸潤史さんや国府輝幸さん、更にロミー木下さんや鳴瀬喜博さん等のセッションメンバーも参加しています。

 今回はチャーは参加していませんが、恐らくチャーの人脈からでしょう、ジョニー吉永さんが今回参加しています。更にこちらは前回からの参加で、妹尾隆一郎さんが1曲ハーモニカで参加しています。


 シングルカットされた『あやつり人形』では、当時はあまり取り上げられなかったレゲエにも挑戦したりしています。その中の歌詞で「遠い南の島から銃声が聞こえてきた」という部分もありますが、自分がボブ・マーリーの映画『ONE LOVE』を見た時に、もしかしてこの事を歌っているのか?と今更ながら思ったりもしています。


 https://www.youtube.com/watch?v=CWsc8xLaMxA


 そして『最終指令自爆せよ』の作詞をした三原元さんとの共作である『人間もどき』は頭脳警察時代に作られたナンバーで、なかなかに過激な曲です。曲の終わりの方のインプロでは、山岸潤史さんのギターと国府輝幸さんのハモンドオルガンが実にいい演奏をしています。


 https://www.youtube.com/watch?v=Pjgok122znI


 そしてこのアルバムで印象に残る曲がもう1曲。『やかましい俺のROCKめ』です。

 ソロになってみてこれでいいのか?との葛藤も感じさせられる、そんな曲です。PANTAの中のロック魂が燻っていると思えます。


 https://www.youtube.com/watch?v=iLvQedOjU3s


 もしかしたら、もう一度バンドをやりたいのではないか?と思えるきっかけとなったのは、恐らくスージー・クアトロと全国をツアーで回った事ではないかと思います。前座とかではなくて、第1部がPANTA、第2部がスージー・クアトロと言った感じで。これは、ファーストとセカンドアルバムの間の出来事でしたが、セカンドアルバムを制作してみて、やっぱりバンドの音がいいと感じて、それがPANTA&HALへと繋がっていくのではないかと思います。


 余談ですが、『あやつり人形』も『人間もどき』もPANTA一人での作詞ではないですが、天皇制を批判しているような内容となっています。しかしながら、PANTA自身は天皇制を目の敵にしているというわけではないようです。その割には、後に発売される『1980X』というアルバムは、最初はX‐DAYをテーマにする予定だったとの事です。結局、X-DAYが来たのは、アルバム発売してから約10年後となりましたが。

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