第3話 頭脳警察『誕生』

『誕生』は、頭脳警察にとって過渡期的な作品ですね。この時期はトシは実質、頭脳警察から距離を置いていたようで、PANTAがほぼ一人で製作している感じです。

 活動に迷い的なものがあったのか、『3』までの過激なイメージはこのアルバムにはありません。ロックというよりは、フォーク寄りな感じのイメージですかね。あえて言えば、世間に反発してきたような感じの頭警が、自らのパブリックイメージに反発した、そんな感じすらします。


 PANTAは、この時までに200曲近い曲のストックがあったといいます。このアルバムのために書き下ろした曲は『破滅への招待』ぐらいだとライナーには記載されていました。まぁ、トシの不在やストリングスの投入とか、今までの頭警のイメージからは、離れた感じのアルバムですね。このアルバムの白眉と言えるものは『詩人の末路』でしょうか。もちろんそれ以外にも『やけっぱちのルンバ』とかの秀作はありますが。


 https://www.youtube.com/watch?v=3uPwFeLSQQA


 https://www.youtube.com/watch?v=1imYl428UJs



 この時期はサウンドを重視していた感じで、編曲は馬飼野康二さんが担当しています。流石に当時はビクターレコードに所属していただけあります。おかげでストリングスも上手く使われたと思います。しかしながら散漫な感じがして、どことなく中途半端かなと。やはり初めて頭警を聴くような人にはお勧めしづらいです。頭脳警察のパブリックイメージともかけ離れていますので……。結局、次のアルバムもトシが不在のままとなっていて、PANTAの色が強くなってくる気がします。


 余談ですが、この時期は四人囃子とライブで共演する事が度々あったようで、一度ライブで一緒に演奏をしたこともありました。『頭脳囃子』とも呼ばれましたが、この時の音源は、後にCD化もされています。

 そして約30年後に、頭脳警察と四人囃子とのジョイントコンサートが開かれましたが、アンコールでの『頭脳囃子』で『誕生』に収録されている『無冠の帝王』が演奏されまして、凄く印象的だったのを覚えています。


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