第2話 頭脳警察『3』

 ファーストが発売中止、セカンドが発売1か月で回収、発禁となり、流石に懲りたのか今回はまともに発売させようと、PANTAは頭脳戦を仕掛けてきました。

 レコ輪に提出する歌詞をわざと過激な歌詞にして、修正した振りをして本来の歌詞を通すといった、ある意味、小細工的な事さえやって、これで何とか3枚目にして初めて流通に乗せる事が出来たわけです。大手からの発売というのは、それだけでも大変な時代だったというわけですね。


 このアルバムの冒頭に収められているのは、『ふざけるんじゃねえよ』や『嵐が待っている』といった、多くの人が抱いているこれぞ頭警というべき攻撃的な曲。特に自分の思い通りにならない苛立ちを歌った『ふざけるんじゃねえよ』は、自分でも好きな曲ですね。今では何ていう程でもないですが、当時としては、まるでマシンガンみたいな曲だと言われた事もあったようです。セカンド収録の『銃をとれ』と並んで、ライブで歌われると盛り上がる曲です。この曲は、中島貞夫監督『鉄砲玉の美学』という映画にも使用されています。ヤクザ映画でロックが使われるのは珍しかったとの事です。(因みにこの映画では他にも頭脳警察の曲が使用されていて、『孤独という言葉の中に』と『今日は別に変らない』はシングルで発売されています。アルバム未収録の曲です)


 https://www.youtube.com/watch?v=5QLZ_Opd5DQ


 そして今作では攻撃的な曲ばかりでなく、『光り輝く少女』のようなメロディアスな曲もあったり、『前衛劇団モータープール』のようにフランク・ザッパを彷彿させるような変態的な曲もあったりとバラエティに富んでいます。PANTAの自伝のタイトルにも使用された『歴史から飛び出せ』といったスピード感溢れるナンバーも秀逸です。


 https://www.youtube.com/watch?v=ouTp_ebr_JA



 しかしながら、やりたい事を何も考えずに詰め込んだ感じになってしまい、その結果、相棒のトシと衝突してしまいます。結局暫くの間、トシは頭脳警察を離れることになってしまいます。折角無事に発売出来たのに、ターニングポイントになってしまったのは皮肉な事です。トシの参加していない次の2作分は、やや精彩を欠くように感じられます。


 余談ですが、『頭脳警察3』が再発された時に、一度だけトシをジャケットにした仕様で出た事があります。再発ながら、オリジナルよりもずっと見つけにくいものでして、帯付きのものは滅多に見かけないですね。

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