反逆の軌跡~PANTA,頭脳警察作品解説~

榊琉那@The Last One

頭脳警察(70年代)

第1話 頭脳警察『セカンド』

 オリジナル盤の帯に書かれているのは、『ファーストのないセカンドアルバム』の文字。1972年5月に発売されたのが、実質的なファーストアルバムである『頭脳警察セカンド』です。日本のロックのジャケットの中でも村八分の『ライブ』と並んで個人的にお気に入りのものです。インパクトの強さでいうと三億円事件のモンタージュを利用した『頭脳警察1』の方がありますが、あれは半分反則みたいなものでしょう。


 準備されていたファーストアルバム(ライブ録音されたもの)がレコード会社の判断で発売中止、急遽準備されたのがこのセカンドです。しかしながら、このセカンドも発売後すぐに発禁処分になったのでした。恐らくではありますが、1972年2月の、あさま山荘事件の影響があるのではないかと思います。ライフルを持った連合赤軍による立てこもり、収録されていた『銃をとれ』は流石にまずいのではないか。そういった過剰な判断をされたので発売禁止になったのではないかと思っています。(1980年代初めには再発されていますので)


『銃をとれ』からの『マラブンタ・バレー』に続くメドレーは非常にカッコいいです。そしてヘルマン・ヘッセの詩に曲を付けた名曲、『さようなら世界夫人よ』、内田裕也さんのお気に入りの『コミック雑誌なんか要らない』、内なるした感情を綴った感じの大曲、『それでも私は』と名曲のオンパレードで、聴き入ってしまいます。

 レコードにおけるB面も、コミカルながら結婚式稼業を批判している『いとこの結婚式』(何故かシングルも発売されていました)、意味深な歌詞の『暗闇の人生』等、こちらも聴き入ってしまいます。一部の歌詞に〇リファナとかは出てきますが、この時代ならではでしょうね。


 PANTAが生涯をかけて目指してきたテーマ、『自分自身の言葉(日本語)で歌うオリジナル』はここから始まっています。他の人が歌う事が少ない、悪人をテーマにしたもの等は、PANTA自身が学生運動を経験してきたからでしょうか?頭脳警察を聴いてみたいという人は、まずこの『セカンド』か、次作の『3』をお勧めします。しかしながら、このアルバムはSpotifyには入っていないんですよね。何でだろう?


 余談ですが、フォーク歌手のなぎら健壱さんは某お宝鑑定番組にこの『頭脳警察セカンド』をスタジオに持って行って鑑定してもらっていましたね。帯なしながらも数万円の値が付いていたと覚えています。僅か一ヶ月程度の発売で発売禁止となったオリジナル盤は、状態の良い帯付きのものなら、今でも高値が付いているのではないかと。


 https://www.youtube.com/watch?v=OVaqjgwPlMI

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