第50話 夕闇の居城
「おお!? こっこはどこだぁ?」
我とトンカツは第三ウェーブを凌ぎきると、謎の光に包まれた。
たどり着いたのは以前アギトらと共にいた、ダンジョン攻略
「ふむ。どうやら我々は無事にスカアハの攻撃を凌いだようである。つまり……」
前回と同様に何かをもらえるというのだろう。
……うん? トンカツがふらふらしておる。
「うおお! 俺様は高いところが苦手なんだ! お、落ち、落ちるぅーー!」
「おいバカ者! 何をしておるか!」
後ろの岩の上でふらつくトンカツに手を差し出すと、それにつかまり……真っ逆さまに落っこちた。
「それでは異世界者より教わった歌を歌います。真っ逆さまに堕ちて
「歌っておる場合じゃないわ! 異世界の歌とはなんだ! 誰に聞いたのだ!」
『選択シテクダサイ……』
遠くにそんな声を残しながらも、我とトンカツはぐんぐんと落ちていく。
トンカツは目をつぶりながら歌っておったが途中でギャアギャアと騒ぎ始めおった。
……こやつ、身に着けてるものが重すぎる。
全身が鋼鉄鎧なので目しか見えぬ。
「ヌワワワわー! もうダメだぁいー!」
「しっかりせぬか。それでも魔王であるか! しかしこのままではまずいな。落ちると……どうなるのだ?」
「道具屋、助けてくれぃーー!」
「しがみつくでない! む、お主……」
こやつの体は生身と言えるのか?
体の大半を改造しておる。全身鋼鉄の鎧と思うたが、肉体が鎧ではないのか。
……今は考えておる場合ではないな。
ポケットに素材を忍ばせておいてよかったぞ。
「魔鉄鉱よ。その身を我が下僕に変えよ。サクリファイスホークブリザーディア!」
「ヒューーールルルルルル!」
「よし。上へ参るのだ!」
「おおう、道具屋! 何してるか分からねーけど助けてくれぇーい!」
我に必死でしがみつくそやつをつかみながら、我の生み出した氷の魔鳥につかまり、落下速度はゆるやかとなる。
ここはまるで異空間であるな。
このような現象は転移魔法の研究を行ったときに、近いものを見たことがある。
つまりこのダンジョンには転移に関する知識が詰まったダンジョンであろう。
我ですら小型化して持ち運ぶ転移の移送方陣は造るのに苦労した。
いや、結果として異世界へ転移したため失敗に終わったのだが。
この場所の謎を解けば、さらなる転移について知ることが出来るやもしれぬ。
「助けてくれよぉ! いつまで落ちるんだよぉーー!」
「……落ちる、か。これは落ちているのではないな。行き場を選択しているのだと思うぞ」
「なに? 行き場?」
これは落下しておるようで落下しておらぬ。
その証拠にホークブリザーディアには上るように指示したが、周囲には下っているように見える風景が続いておるだけだ。
「下らぬ錯覚で我を誤魔化せはせぬ。さぁ我らを外に出すのだ!」
『選択シテクダサイ』
「ふむ、よかろう。それならばスカアハの下へ連れて行け」
『選択ヲ……受領シマシタ』
褒美があるというならもらってやろう。
我が望むはあ奴との対談である。
約一名全く理解しておらぬ魔王も一緒におるわけだが……。
「おいぃ。俺様ちゃんと帰れるのかよぉー! この重量で地面に激突したら、さすがの俺様でも死ぬぞぉー! それでは聞いて下さい。オーニシマサヨシ、死んだ! です」
「ええい歌うな! 何であるかその歌は! そのような題目の歌があってたまるか!」
「あるんだなぁ、これが」
なんだと!? 死んだらそもそも歌えぬではないか。
いや、死にながらも歌うゾンビはおったな。歌えるか。
うむ、きっとゾンビが歌う歌に違いあるまい。
……などと考えておったら再び光に包まれて、我ら二人はとんでもない場所におった。
夕闇に映し出される彩り鮮やかな城。
血のような赤に染まりし門があり、木々にはこちらを見る不気味な鳥が止まっておる。
ここは、なんであるか。
我の知る空間ではない。
魔も感じられぬ。
鳥のあの目……まるで全てを見透かすようである。
「あらあらあら、順序が違うね。来てしまったなら仕方ない。それが褒美というならば、ね」
「おい、門がしゃべったぞ? この門が敵か!?」
などと言いながら門をたたき壊すトンカツ。
……お主。いくらなんでもそれはまずかろう。
凄いバカ力で門がひしゃげて埋まっておる。
この腕力、間違いなく魔王クラスのものであるな。
「おいさっさと行くぞ道具屋。高いところじゃなきゃへっちゃらだ。へっちゃら? 歌ってもいいですか」
「それはならん!」
「なんでだよぉー! わくわくするだろぉー!」
「ええい、いいから先に進むぞ。大体なぜお主は歌うのだ。歌とは場と空気を読んで歌うものであろう」
「ほーう! 道具屋も歌うんだな? 聞かせて下さい道具屋の
ぐぬう。こやつは……なんという種の者にからまれてしまったのだ。
これでは先に進めぬではないか。
いや、無視をして進むのが得策であろう。
どうせしゃべりながらついてくるであろうしな。
地面に埋まった門を抜けると、鳥共が周囲の木々に止まってこちらを見下ろしてくる。
監視……しているのだろうな。
スカアハの奴め。ようやくまともに話が出来るか。
と、城を目指し進んでいくと……首がぐるりと一周する、髪を一本で結んだ血の気の無い女がこちらへ足を動かさずに進んできた。
気色の悪い。なんであるかこれは。
『選択ガ受領サレタノデ案内シマス』
「んあ? さっき聞いてた声だな」
「こやつがしゃべっておったのか。これは……ドールだろう」
『イイエ。ドールデハアリマセン』
頭にキンと響く声である。
ドールではないとすると……なんであるか。
ええい、ここは異世界である。
我の知らぬ存在がいても当然であるな。
「おい見たか道具屋! あの姉ちゃん、履いてないように見えるぞ!」
「……お主はどこを見ておるのだ」
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