第39話 初めて降りた地下二階ショッピングモール側では
新しい人の雇い入れも終え、各自の紹介も完了したのである。
ハイエルフ娘であるジュピターは不満があったようだが、あっという間にルルに丸め込まれてしまった。
どうやらこの娘は押しとやらに弱いようであるが……ふむ、採用されたことそのものに不満は無かったようである。
他種族を見下す傾向にあるエルフの中でも、ハイエルフはかなり気位が高いことで知られておる。
しかしこやつの言動にそれは無い。
あまり笑顔を見せる種族でもないのだが、ルルには直ぐに見せておった。
これが相性の良さというものであろう。
ルルの故郷である関西という地域……であったか。
その故郷の人種は、ハイエルフと相性が良いのやもしれぬな。
ラールフット族のルピなんちゃらは、手先が非常に器用である。
我は今、素材をしまってある倉庫に、ルピなんちゃら、そしてバレッタと三名でおるのだが、これから用いる素材を確認して、不足している素材を入荷してもらうために点検をしているのだ。
「おいらはさ。装飾品とか作るのが得意なんだ。それでさ? おいらが作った道具も売りたいんだよね。売れたらおいらがお金を一杯もらえないと困るけど」
「素晴らしいことではないか。みなに提案してみるがよい、ルピなんちゃらよ」
「なんちゃらってなんだよ……おいらはルピチッタだって。あの小さい獣娘もおいらのことルピなんちゃらって呼んでたの、あんたのせいかよ」
「私も本当はバイアレッタなんですけどね、ルピなんちゃらさん。ドーグさん、他に不足品はありませんか? これだけの量だと次回の開店では相当稼がないといけませんけど」
「それでも足りないくらいである。大体この倉庫も狭いのである。我の住んでいた場所にはここの百倍はある収納所があったぞ」
「百倍って……一体何をしまっておくんだよ」
「大型の魔獣共の皮などであるな。それ以外ではミノタウロスやサイクロプス用の斧などや、奴らが体に巻くような大型の鎖、それから……」
「モンスター牧場か! あんた一体どんな場所に住んでたんだ? 本当に変わった店長だな」
「店長? 店長などではないぞ。我はあらゆる道具を創造する……ドーグさんである!」
「仕入れとか道具製作は全部あんたがやってるんだろ? だったらあんたが店長じゃないの?」
「いや、店長は地下二階を担当予定のイーナである」
「ああ、あの娘が店長だったのか。なんか少し頼りないけどな」
「そんなことはないぞルピなんちゃらよ。店の長とは元来、色々な者を受け入れる器量が必要なのだ。お主らのこともあっさり笑顔で全員受け入れたであろう。我はそれを信じておったからこそ相談などせず雇い入れたのだ」
「ふーん、そんなもんかね。早く売り物作りちあなぁ。そういえばさ、本当にあんたの部屋を休憩用に借りていいの?」
「構わぬ。少々やかましいかもしれぬがな。我は今、別の部屋を借りるべく交渉しておるところだ。それとイーナに言伝を頼めるか。絵娘の名前を考えておいてくれと」
「絵娘ってあのですわですわうるさいお色気姉ちゃんのことか。あれ、変な客がつきそうだから何とかして欲しいんだけど」
「ううむ、あ奴の正体を含めて謎な存在である。ダンジョンの宝箱から入手してしまった呪いアイテムとして我は認識しておるのだが……」
「何だよそれ。それを捨てるなんてとんでもない! ってこと? 地下一階は大変そうだよな……」
一見すると子供のような姿のルピなんちゃらであるが、
現在我の部屋は地下一階層にあるモール側の一角である。
この部屋はあまり広くなく、火を起こす古代道具やテーブル、いすに壊れたベッド、測り道具などしかないのだが、これだけの家具が置いてあるだけでも手狭に感じておる。
そして我は地下三階層へ移動予定である。
そのため地下一階層の我の部屋は、地下一階、二階の店員用休憩室にしてはどうかと提案したのだ。
そちらの火起こし道具だけを持ち出し、我は地下三階層のスペースを借りたいと告げておる。
しかも極力広い部屋だ。
なぜなら、多くの武器を用意するのであれば厳重に管理せねばならぬ。
そのため我の休む部屋とアーニーの休む部屋、そして保管用のスペースが欲しい。
それらをバレッタに告げて、現在はマーク殿が検討してくれている最中である。
「さぁ倉庫確認が終わったら次に移りますよ。地下三階層へ向かいましょう」
「へいへい。おいらの職場は地下二階層なんだけどなぁ」
「我も地下二階層のモール側は回ったことがない。ついでに見ていってもよいか?」
「それは構いませんけど、地下一階層とは随分客層の雰囲気が違います。地下二階には特別なスペースもあります」
「ほう。どのような客層が多いのだ?」
「地下一階層と最も違うのは、格闘家が多いところですね。ええと……ここには昔劇場があったんです。その劇場を改装しまして、ある催しが毎日行われるようになったんです。これのお陰で格闘武器が売られてるってわけなんですよ。えへへ……これ、私の考えで通した案件なんです」
「ん? 紫色の姉ちゃんが通した案件で劇場を改装したのか? それってすげーじゃん。おいらそういうのは好きだぜ。ひっくり返るしか能がないと思ってたのにやるんだな」
む、ひざから崩れ落ちたのである。
「うう……どうせ私なんて、私なんて……」
バレッタは比較的落ち込みやすい。
そしてルピなんちゃらは本人に悪気が無いのであるが、言い方が悪いのである。
「バレッタよ。それは褒めておるのだ。落ち込むでない。その発案とはどのようなものであるか?」
「本当にそう思っていますか? まぁ別にいいですけど。毎回気を失っちゃうのは事実ですし。そうですね、そちらは実際見てもらえば分かると思います。行きましょう」
……そして我々は中央塔より地下二階層へ向かい、塔の北側から足を踏み入れた。
地下一階層と変わらず円状であり、左手回りにぐるりと店がいくつも並んでおる。
【布団もふもふ】【アクセサリー君の瞳】【ガツンと一発殴ってやりたい】【急がば走れ】【買うの? 買えよ? 買うんだろ?】など、変な名前の店が多いが……それらの店にも随分と人が入っておる。
そして……中央位置付近に来て驚いた。
そこに店は無く、広いスペースがあるのだ。
上看板があり、こう描かれておる。
【ファイティングモールストリート】
なんという人だかりであるか。熱気もすさまじい。
なんとここでは道義などを着て戦っておる者たちがおるではないか!
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