第23話 宝箱の中身第二弾である
新装開店、そして直ぐに販売終了。
これにより我々は時間に余裕を持つことが出来た。
そしてふと、ルルが手を挙げて注目を集めた。
「あんな? うちら自己紹介とかしてへんやろ? ベリやんのことは少し分かったんやけど、バレッタちゃんのこととか全然知らんから、自己紹介せぇへん?」
「確かに……私もバレッタさんのこととかルルちゃんのこととか全然知りません。ドーグさんに至ってはお客さん第一号ってことくらいしか知りませんよ?」
「ふむ。我はベルゼハデスにあるマジックオブコート国北方に隠れ住んでおった魔王、ベリドーグである。我は至高の道具を造り上げ、我の道具の素晴らしさを世に知らしめるため行動しておるのだ。ぐわーっはっはっはっは!」
「せやから魔王ってなに? 勇者に退治される可哀そうな人ちゃうの?」
「ドーグさん。一つお尋ねしてもよろしいですか?」
「なんだバレッタよ。遠慮は無用だ」
「実はこの世界で魔王を名乗る魔族に心当たりがあるんですが……」
なんだと!? この世界にもやはり魔王はおるのだな?
「それは一体どのような……」
「実はドーグさんと同じように色々な道具を発明する……変な魔族として知られていまして。ですからその魔族と同じく魔王と名乗ると痛い人だと思われるんです」
「痛い……人だと!? ばかな! 魔王であるぞ!?」
「ええ、ですから……」
むう。それでヤザクの反応がおかしかったのか。
そのようには見えない……と言われてどうも引っかかっておったのだが。
魔王とは、恐れられ、人が近寄れぬような存在。
一体その魔王はどのような魔王であるか。
「して、その魔王の名は?」
「確か……トンカチ魔王です」
「トンカチ魔王て。なにそれ絶対おもろい奴やん。会ってみたいわぁ」
「ドーグさんも魔王を名乗ってるんだから気が合うんじゃありませんか?」
「ふむ……トンカチ魔王か。力強い響きの魔王であるな。どこに行けば会えるか分かるか?」
「さぁ。そういうのは冒険者の方が詳しいと思いますよ。今日はお時間もありますから、後で冒険者ギルドに行ってみませんか?」
ほう。確かにアリアドルの旅団にも礼をせねばならぬ。
製作を終えたら行ってみるか。
「うむ。その前に自己紹介、そして宝箱開封を済ませようぞ」
「そうですね。私の宝箱、早く開けたかったんですよー!」
「うちもダンジョン行ってみたいわぁ。ベリやんの生み出したモンスターじゃなくて、本物のモンスター見てみたいし」
「すっごく怖いんですよ? 本気で殺そうとしてくるんですからね!?」
「心配せぇへんでもうちらには頼りになるベリやんがおるから平気やで。か弱い女の子三人、ちゃんと守ってや?」
「え? え? 私も行くんですか?」
「当然やろ。バレッタちゃんが行かななんも始まらんわ」
「行く前に終わってますよ……絶対気絶しますって」
うむうむ。
――和やかな雰囲気のまま自己紹介が始まり、我はその間魔王のことを考えておった。
何度かルルにど突かれたが。
バレッタも大分打ち解けたようである。
我の三人に持つ印象。それは実に分かりやすい。
紫色娘と呼んでいただけあって、バレッタの印象は紫。
この中で一番背が低く、最も幼く見える。
ルルの肩くらいまでの背丈しかなく、ルルが可愛がろうとするのはそのせいである。
その髪も目も紫色である。
イーナはぱりっとした白色が似合う娘だ。
道具屋に咲く
長い黒髪が白色を更に映えさせておる。
ルルは黒髪のよく似合う、燃える炎のような元気娘である。
肩で切りそろえた髪に常に笑顔を浮かべる、力ある人族であるな。
いずれも道具屋の看板として相応しい娘たちである。
……これしか覚えていないというと、娘たちは怒りをあらわにするであろうからあえて言うまい。
さて、そろそろ宝箱を開けるときがきたようである。
今回の宝箱も地下一階層にあったものだ。
罠は無い。
うむ、では開けて……「よっしゃ。うちが開けたるで! レア来い、レア来いー! なんや久しぶりのガチャ気分やでー!」
「ルルちゃん!?」
「何かの呪文でしょうか……?」
「それーー! ってなんやこれ。ただの紙切れと絵しか入ってへん」
「紙と絵ですか。うーん、はずれっぽいですね」
「いかん、その場から離れよ!」
『え?』
急いで娘たちを宝箱から離れるように告げる。
これは光に触れると発動するタイプの魔道具で間違いあるまい。
紙が勝手に燃えだしよった。
「何これ。怖い」
「ドーグさん、これは一体?」
「
しかしどのような魔術であるか我も知らぬ。
本来であれば内側から爆発するトラップや、周囲に毒を散布するトラップなど多種多様である。
そしてその類であれば見破ることは容易だが、揮発型魔術はそうはいかん。
……だがこれは、今のところ何も発動しておらぬ。
紙は燃えて無くなり、残ったのは絵だけである。
一体何が起こるというのだ!?
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