第71話 猫と魔王


今日は、朝から、鏡の前に、

立っている。。。


「魔王」


今日は、この、シャツを着て、

外に、出ないといけないからだ。


「これって、上に、一枚羽織って、

出かける方が、いいかな?」


自問自答してから、上に、襟つきの、

シャツを、ボタンを閉めずに、

羽織った。


さりげなく見える、「魔王」の文字。


このシャツ、背中に大きく。

前にも、大きく。両面に、

「魔王」って、書いてある。


まぁ、気にしてるのは、僕だけか。

そう思って、玄関に向かう。


今日が、日曜日と言うこともあり、

両親と、顔を合わせると、

「珍しいな、琢磨が、そう言う、

シャツ着てるのって。」


と、親父が言うと、横にいた、

母さんが、


「魔王って、書いてあるのそれ。」


僕に近寄って、

シャツを、開いて、ニッコリ。


「これね、さくらが、

選んでくれたんだよ。」


そう答えると、母さんが、


「うん。琢磨なら、なに着ても、

似合うね。」


と、微妙な事を、僕に、笑顔で言った。


そんな、微妙な気分で、


「行って来ます。」


と言って、外に出ると、

足早に、さくらの家に、向かった。


この夏の暑さの為、さくらには、

基本、家の中で、待ってもらっている。


さくらの、家に着くと、呼び鈴を、

押す。


「ピンポーン。」


「は~い。」


「ガチャ。」


と、玄関から、さくらが、顔を、

覗かせる。


とても嬉しそうで、満面の笑み。


「琢磨。カッコいい。」


「え、このシャツ、そんなに似合う?」


「うん。」


まぁ、さくらが、嬉しそうだから、

いいか。。。そう思った。


「お邪魔します。」


今日は、日曜日だから、

さくらの家にも、お母さんがいた。


「琢磨君、おはよう。」


「おはようございます。」


小説を読んでいた、お母さんが、

僕を見て、微笑む。


「ねぇ。琢磨。」


「ん。」


「あたしのシャツどぉ?」


「うん。似合ってるよ。」


本当は、一番最初に、「似合ってる。」

そう、言いたかったけど、

さくらの、「琢磨、カッコいい。」

に、ちょっと、びっくりして、

言いそびれてしまった。


昨日、さくらに、買ったシャツは、

襟と、袖口が、丸くて、可愛いと、

思って、買った、シャツ。


さくらが、着ると、何でも、

可愛い。。。


今日も、一緒に、お勉強。


参考書を開くと、お母さんが、僕に、

アイス珈琲を、出してくれた。


「いただきます。」


夏に飲む、アイス珈琲は、

とても美味しい。


「ふぅ。」と一息。


そんな、僕を、さくらが、じっと見る。


「ごめんね、琢磨。喉かわいてた?」


あんまり、美味しそうに飲んだから、

さくらが、僕に、気を遣う。。。


「いや、喉乾くと言うより、

ほら、僕、アイス珈琲好きじゃん。」


「うん。」


ちょっと、元気を失くす、そんな、

さくらを見てると、ホント、

さくらって。。。


気が利かなかった事で、落ち込む、

そんな、さくらを見てると、

僕は、上のシャツを、脱ぎ、

「魔王」を出す。


僕の、そのリアクションに、

さくらも、微笑む。


「うん。カッコいい。」


「でしょ。」


さくらの、カッコいいの、ポイントは、

良くわからないけど、

悪い気はしない。むしろ、嬉しい。


何時も通り、三時間程、勉強して、

お昼の時間。


さくらと、お母さんで、素麺と、

天ぷらを、出してくれた。


夏に食べる、素麺って、ほんと、

美味しい。


食べながら、見る、さくらは、

可愛いし。


「琢磨君、そのシャツに、書いてある、

魔王って、魔界の王様っ事?」


お母さんに、変な質問を受けて、

僕も、素で、


「はい。そうだと思います。」


と返した。


「お母さん、あたしが、選んだの。

カッコいいでしょ。」


さくらは、満面の笑み。


「あー。さくらの趣味かぁ。」


お母さんは、変に、納得していた。


ご飯が、終わって、さくらと、

休憩していると、お母さんが、

友達と、出掛けて、

さくらと、二人きり。


涼しい部屋で、二人で過ごす。


「ねぇ。琢磨。」


「なぁに?」


「何か、眠たくなっちゃった。」


「そうなの?」


「うん。」


「じゃあ、お昼寝する?」


「うん。」


そのまま、さくらと、くっついて。


「ハッ。」

とすると、夕方まで、寝てしまった。


「さくら、起きて。」


さくらを、軽く、揺すって起こすと、

「ん。今、何時?」


と、寝ぼけて聞くさくら。


「夕方だよ。」


「お母さんは?」


「まだ、帰ってきてないよ。」


ゆっくりと、身体を起こすと、

さくらは、僕に、抱きついた。


「うん。じゃあ、抱きついても、

平気だね。」


「ふふっ。そうだね。」


エアコンで、冷えた体に、

さくらの、暖かさが、心地よい。。。


僕も、さくらを、抱き締めて。


暫くそのまま。


すると、さくらは、僕に、

抱きついたまま、

また、眠ってしまいそう。。。


「さくら、きっと、もう、

お母さん、帰って来るから、

起きようよ。」


「うん。でも、何か、こうしてると、

落ち着くんだもん。」


「うん。僕も。」


さくらの、あまりの、可愛さに、

僕も、抱き締めた。。。


さくらの、いい匂いで、胸がいっぱい。


「ガチャ。」


と、玄関が、開くと、


「本当に、仲良しね。」


と、お母さんが、帰ってきた。


その声で、さくらも、起きて。


ちょっと照れながら、僕と、

さくらの、長い、お昼寝は、終わった。


何時も通り、ご飯を食べてから。


今日も、さくらと、少しだけ、

夜の、ドライブに、出掛けた。。。


「魔王」のシャツで。












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