第61話 猫とただいま。


朝から、ボーッとして、

目が覚める。こんなに、

さくらに、触れて過ごしたのは、

初めての、経験だった。


手を見ると、指輪が光る。。。


あんなに、さくらが喜ぶのなら、

もっと、早く、送れば良かったな。

そう思って、少しだけ、へこんだ。


今日は、家に帰る日だけど、

さくらを、もっと、抱き締めていたい。

そんな、想いが、頭の中を、

ぐるぐると、まわった。


寝ている、さくらを、そっと、

抱き締めると、フワッと、

さくらの、優しい香りがして、

穏やかな気持ちになる。


暫く、そのままくっついてると、


「ふふっ。」


と笑うさくら。


「起きてたの?」


「うん。」


そんな、さくらを、「ギュッ」と、

抱き締めると、

手を伸ばして、さくらも、

僕を、抱き締めてくれた。


「ねぇ、琢磨。あたし、

帰りたくないなぁ。。。」


「うん。僕も。。。

だけど、帰らないと。。。

二人で、ずっと一緒にいられる為に。」


「うん。そうだね。でも、

ずっと、こうしてたい。」


さくらの、顔を、覗き込んで、

キスをして、

そのまま、じゃれあった。


こんなに、布団から出るのが、

辛いなんて。


二人で、布団から出ると、

ベットに、腰を掛けたまま、

少しの間、二人で、ボーッとして、

シャワーを浴びて。。。


帰りの支度をした。


「ねぇ、琢磨。良く考えたら、

高校卒業まで、

10ヶ月切ったんだね。」


「うん。そうだよ。」


「入籍したら、一緒に住まない?」

と、微笑む、さくら。

でも、微笑んでいるけど、

何処か、何時もと違う。。。


「そうだね。出来ればそうしたい。

もし、暮らすなら、さくらの、

家に住んだ方が、良いと思う。」


「うん。お母さんに、ちょっと、

頼んでみようかな。」


「うん。僕の家に住んでもいいけど、

そうなると、さくらの、お母さん、

心配だもんね。」


「うん。」


正直な所。

一緒に暮らすなら、自分で、稼いで、

そのお金で、やっていきたい。

そう思うし、結局、これは、

甘えでしかない。

さくらだって、わかってるし、

それでもって、想いが、

さくらの、表情から、

読み取れた。。。


僕達は、見つめ合うと、

口付けを交わして、

ホテルを、後にした。。。


帰りの、バスに乗ると、

僕に、もたれて、眠る彼女。

僕の手を、しっかりと、握ったまま。


そんな、彼女が、

愛しくて、堪らない。。。


そんな、彼女に、あんなに、

切ない表情をさせてしまった、

自分。


もっと、頑張らないと。

そう、僕は、一段と、気を引き締めた。

大切な、さくらを、

幸せにしたいから。。。


バスが、駅に着くと、

彼女を、そっと、起こして、

電車に移動した。


「琢磨、ごめんね。寝ちゃって。」


「ふふっ。いいよ。

さくらの、寝顔、可愛いもん。」


「もう。」


「ねぇ、琢磨。今日は、

なに食べたい?リクエストあれば、

好きなもの、作るけど。」


「う~ん。じゃあ、

ハンバーグが、食べたい。」


「え、だって、食べたばっかりじゃ?」


「あのハンバーグさ、味が、

良くわかんなくて。」


「どうして?」


「さくらが、指輪でさ、あまりにも、

幸せそうな顔をするから、

胸が、いっぱいになってさ、

何て言うのか。。。

ハンバーグより、さくらだったから。」


「ふふっ。そっかぁ。。。

あたし、琢磨の大好きな、

ハンバーグに、勝ったって事だね。」


「ふふっ。ちょっと、待ってよ。

さくらと、ハンバーグじゃ、

最初から、

さくらに、決まってるじゃん。」


「ふふっ。知ってる。

けど、仕方ないから、

ハンバーグ、作ってあげる。」


「うん。さくらの、ハンバーグが、

世界一、美味しいからね。」


そう言うと、さくらも、微笑んで、

僕の手を、「ギュッ」と握って。


「そりゃそうだよ。あたしの、

ハンバーグには、琢磨への、

気持ちが、詰まってるからね。」


と、僕の目を見詰めながら言った。


「うん。知ってる。」


電車の中で、二人で、小さな声で、

会話をしながら、最寄りの駅へ。


駅前の、スーパーで、

ハンバーグの材料を、二人で、

買ってから、帰った。。。


さくらの、家に着いて、


「ただいま~。」


と言って、家に、上がると、

お母さんと、

クロが、お帰りって、迎えてくれた。


お母さんと、クロのいる、

この家は、僕にとっても、

とても、落ち着く空間だなぁって、

改めて感じた。。。


クロに、

かりかりと、おやつをあげて。


僕は、さくらに、ハンバーグを、

作って貰って、大満足。


その後、お母さんに、指輪の事で、

いじられて、僕も、さくらも、

恥ずかしがらずに、

笑顔で返した。


さくらが、お母さんに、

一緒に、暮らす話を、切り出すと、


「何時でもいいわよって。」

笑顔になって、

即答で、言ってくれた。


とても、嬉しい事だけど、

僕も、さくらも、やっぱり、

勉強も、頑張らないと、いけないから、

高校を、卒業して、ちゃんと、

したいって、話したら、

お母さんも、嬉しそうに、頷いた。


帰る時間になって、

家から、出る時に、


「ねぇ、琢磨。頑張ろうね。」


と、微笑んで、言うさくらに、


「大丈夫。僕とさくらだもん。」


と、笑顔で返すと、

さくらは、僕に抱きついて、


「うん。」


と、一言返した。。。


お母さんが、後ろから、


「お母さん、いるんだけど。」


と、ポツリ。。。


さくらが、照れて。


僕は、笑った。









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