第54話 猫と進級。


桜の咲く季節。

僕とさくらは、三年生に進級した。


空手の試合を、動画なんかで、

見た連中から、色々聞かれたり、

少しの間は、そんな話題で、

人気者になって、

大変な目に遭ったりして。。。


学校からの、帰り道で。。。


「ねぇ、琢磨。春休み終わってから、

何か、大変だね。」


「うん。僕も驚いてるよ。

何で、みんな知ってるんだろ?」


空手の大会の話しは、

クラスの友達にも、話してなかったし、

僕の中では、こっそりと出たと、

思ってたのに。。。


少し、考えてから、さくらが、


「まぁ、体育館で、稽古してたのを、

みんな見てたんだろうね。

琢磨、目立ってたし。」


と、僕に言う。


「でも、みんな、空手の話題に、

触れてこなかったけどなぁ。」


「琢磨が、

言わなかったからじゃない?

。。。気を使ったとか?」


「そうなのかなぁ。

せっかく、取材とか、逃げたのに。」


「ふふっ。だから、余計に、

色々、聞きたかったんじゃない?」


「そう言うもんかな?」


「そう言うもんなんじゃない?」


まぁ、僕にとって、進級しても、

さくらと、

同じクラスのままだったのが、

嬉しくて。。。

その事の方が、

悩ましい事だったので、

空手の事とか、

後から、色々聞かれても、

結構、気にしてなかった。


「それにしても、琢磨。

女の子と話す事、最近多くない?」


「え?」


「え?じゃない。色んな子が、

琢磨の所にきてるじゃん。」


「まぁ、そうかも。でも、

僕には、さくらしかいないからさ。

それに、

本当に、あの大会の話しとか、

空手やってたのとか、

そう言う話ししか、してないよ。」


「なら、良いんだけど。。。

琢磨、格好いいからなぁ。。。」


「もう。。。さくら。

僕から見て、さくらほど、

素敵な女性は、存在しないから、

そんな事、言わないで。」


じっと、さくらの目を見て、

そう、話し掛ける。


「うん。ごめん。

ちょっと、焼きもち。。。

琢磨の事、信じてる。」


「でも、考えてみたら、

僕も、さくらが、他の人と、

あんまり話してたら、

焼きもち焼くと思うから、

今回、僕も、悪かったと思う。

ごめん。さくら。」


歩く足を止めて、

そう言って、僕は、頭を下げた。。。


「うん。琢磨が悪い。

でも、琢磨の事、好き過ぎて、

きっと、あたしも、焼きもちを、

焼きすぎだったかも。」


そう言うと、苦笑いした。


そんな彼女が、可愛いと思うのと、

困らせた自分に、反省もした。


彼女の家に着くと、二人で、

お勉強。。。


家に上がると、クロのおやつは、

僕の、役目だ。

だから、クロも、僕と目が合うと、


「な~。」


と、僕に、話し掛けてくる。


これを、僕は、「おやつ~。」

と、最近聞こえるようになった。


勉強の方も、しっかりと、

取り組んでいるから、

このまま行けば、彼女と、

同じ、大学も、行けると思う。


「ねぇ、琢磨。あのさ、今日ね、

お母さん、帰り遅いんだって。」


「じゃあ、お母さん帰るまで、

僕が、一緒にいるよ。」


「うん。そうしてくれると、

あたしも、心強いし、安心。」


彼女の、微笑む顔が、とっても、

可愛い。


「ねぇ、さくら、じゃあ、

遅くまでいるんじゃ、

何か、お菓子とか、買いに行く?」


「え?お菓子?」


「うん。だって、その分、遅くまで、

勉強出来るじゃん。

って、事は、

お腹空くかもしれないし。」


「あ、なるほど。そうだね。

ついでに、帰り遅くなるから、

琢磨の家に寄って、

着替え取りに行く?」


「あ、そうしようかな。

今日は、お風呂借りて帰ろうかな。」


「うん。そうして。」


勉強を少し早めに切り上げると、

さくらと、

一緒に、着替えを取りに行き、

帰りに、コンビニで、お菓子を買って、

帰った。


今日は、

偶然バイトもない日だったから、

戻って来て、二人で、また勉強を、

始めた。。。


「ねぇ、さくら。」


「ん。なぁに?

ふふっ。わかった。」


「うん。お腹空いた。」


「じゃあ、少し早いけど、

ご飯作るね。」


彼女が、台所に向かうと、

僕は、いつもの様に、テーブルを、

片付けて、クロには、かりかりを、

出して、あげる。

クロの、かりかりを、食べている所を、

見てるのも、僕は、好き。


今日は、何が出てくるのか。。。

いい匂いがしてくる。。。


「はい。お待たせ。」


今日は、野菜炒めと、漬物。

お味噌汁が、出てきた。


「美味しそう。」


「ふふっ。琢磨は、何作っても、

そう言うもんね。」


「うん。だって、本当の事だもん。

本当に、美味しいし。」


「ふふっ。ありがと。」


何時も通り、山盛りによそった、

ご飯を、黙々と食べて。。。


「ごちそうさま。」

と、ニッコリ。


そんな、僕を見て、さくらも、

幸せそうに、笑う。


「休憩したら、お風呂入っちゃって。」


そう、促して、

僕に、珈琲を入れてくれる。


「はい。琢磨。」


珈琲を、僕に渡すと、「スッ」と、

僕の隣に座る彼女。


ふわっと、さくらのいい匂いがして。

ちょっと、頭が、ぼーっとなる。


「ねぇ、さくら。」


「ん。」


「あのさ。

我慢しようとおもったんだけど。」


そう言うと、さくらは、


「うん。いいよ。」


そう答えてくれた。


それから、彼女と暖かな時間を、

過ごして。。。


お風呂に、一緒に入った。。。


「ねぇ、琢磨。なんか、

こう言うのも、いいね。」


「うん。本当に、幸せ。」


「うん。あたしも。」


「でも、さくら、お母さんって、

遅くなるからって、前に、

早く帰って来た事なかったっけ?」


「あ、そうだね。確かに。」


僕たちは、バタバタと、

お風呂を出て、急いで着替えた。。。


丁度、そのタイミングで、

クロが、ゲージの中から、


「な-。」


と、鳴いた。。。


そのタイミングで、玄関が、


「ガチャ」と開く。。。


「ただいま~。」


と、お母さん。


お風呂上がりの、僕とさくら。


「あらあら、仲良しね。」


そう言うと、お母さんは、

微笑みながら、台所で、水を汲んで、

飲んだ。


「お母さん、今日は、飲み会じゃ、

無かったの?」


「え?そうよ。でもね。

あんまり、遅いと、心配じゃない。

琢磨君が、いてくれるなら、

今度から、メール頂戴ね、さくら。

そうしたら、お母さん、

ゆっくり飲んで、帰って来れるから。」


「うん。そうする。。。」

(琢磨が、言ってくれなかったら、

    本当にやばかった。。。)


僕と、さくらは、少し、

妙な空間に、ドキドキした。。。


その後、身支度を整えた僕は、

お母さんに、挨拶をして、


「お邪魔しました。」


と、玄関を出た。


直ぐに、さくらが、後をついてきて。


「琢磨。おやすみなさい。」


そう言ってくれる、彼女を、

そっと抱き締めると、


「おやすみなさい。」


そう僕も返して、

キスをした。


夜も、11時。少しだけ、肌寒い。

そんな、中でも、僕は。。。


幸せな気持ちに、包まれて、歩いた。

ちょっと、ドキドキした夜を。。。




















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