第31話 ドクロの森には骸骨がいっぱい

 魔法力増強の種を探すため、ミスティラの飛行魔法ドクロの森とやらにやって来たが……。


「な、なんか不気味な森だなぁ……」


 その名の通り、おどろおどろしい雰囲気の不気味な森だ。


 それに霧がかかっていて前がよく見えない。

 ここでの探し物はかなりの困難に思えた。


「なんでわいまでこんなところに来なあかんねん」

「しょうがないだろ。1回、家まで帰ってたら時間がかかるし」

「はあ……しゃーないな。はよしてや」


 俺の腕に抱かれながらクロイツはぶつぶつ文句を言いつつ、酒瓶を片手に抱えたまま腹巻から煮干しを取り出してかじっていた。


「ここにはドクロの魔物がでるの。だからドクロの森」

「ド、ドクロの魔物……わあっ!?」


 霧の中から骸骨の魔物が現れ、俺は叫び声を上げる。


「大丈夫よ。ここの魔物はこちらから攻撃しない限りなにもしてこないの。だから怖がらなくても大丈夫」

「そ、そうなんだ」


 確かに襲い掛かっては来ない。

 そこらを歩き回っているだけだった。


「でも、種を見つけた人は魔物に追われていたらしいし、凶暴なのもいるんじゃないのかな?」

「そうかもね。けど、あたしは見たこと無いわよ?」


 それならそんなに心配することも無いかな……。


「けど、これじゃあ探すのが大変ね。霧でほとんど見えないし」

「うん……」


 しかしここでしか種を手に入れる方法が無い。

 なんとか見つけなければ……。


「ん? あれ?」


 うろうろしていただけの骸骨たちがこちらへ集まって来ているような……。


「ちょ……」


 ようなじゃない。

 間違い無く集まってきており、いつの間にか俺たちを囲んでいた。


「ど、どうなってるんだ? 襲って来ないんじゃ……」

「そのはずよ」

「ほ、本当に?」


 骸骨たちはどんどん俺たちに迫って来る。


「なにか変ね。まあでも……」

「わっ!?」


 骸骨たちに雷が落ちて粉々に砕け散った。


「この魔物は弱いから大丈夫よ」

「そ、そう」


 ミスティラでも瞬殺できるなら……と言っては失礼だが、とにかくここの魔物を恐れる必要は無さそうだ。



 ―――兵士長ジェルミ視点―――



 魔物使いの男が操る骸骨たちが一瞬でやられたのを見て俺は舌を打つ。


「おいっ! 全然、ダメじゃないかっ!」

「そ、そう言われましても……」


 魔物使いが弱気な表情を向けてくる。


「ここの魔物は弱いんですよ。武器さえあれば子供でも倒せるくらいです」

「なんとかしろっ!」

「なんとかって……。うーん……」


 魔物使いは魔物の気配を感じ取れる。

 どこに強い魔物がいるかはわかるはずだ。


「……向こうのほうに強い魔物の気配を感じます」

「よし。そっちへ行くぞ」


 俺は魔物使いを連れて移動をする。


 ……やがて木の無い開けた場所に出た。


「なにも無いぞ?」


 魔物などいない。

 森の中に広場があるだけだった。


「けど、ここから強い魔物の気配がするんですよ」

「とにかくそいつを操ってみろ。そうしたら出てくるだろ」

「そうですね」


 魔物使いは能力を使って魔物の操作を始める。


「うん?」


 なにか地面が揺れているような……。


「うおおっ!?」


 地面が激しく揺れる。


 地震か?


 そう思ったとき、


「な、なんだぁっ!?」


 広場が大きく盛り上がり、下からなにかが出て来る。


「あ、あれは……」


 骸骨の頭。

 それが広場から現れ、そのまま巨大な身体も外へ出てきた。


「こ、これは……キングドクロですっ! 滅多に現れないドクロ系最強の魔物ですよっ!」

「なに? ならこいつを操れば……」

「む、無理ですっ!」

「えっ?」

「魔物操作の力に反応して出てきただけで、こっちの言うことをまったく聞いていませんっ! 僕の力じゃこんなすごい魔物は操れないですっ!」

「なんだとぉっ! うおっ!?」


 骸骨の巨大な拳が俺の目の前へと叩きつけられる。


「おいっ! こいつなんとかしろっ!」

「す、すいませんっ! 僕にはどうにもできませんっ! 早く逃げましょうっ!」


 そう言って魔物使いの男は慌てて逃げ去ってしまう。


「くそーっ!」


 せっかく強い魔物を見つけたのに操れないなんて……。


 報酬をケチってレベルの低い魔物使いを雇うんじゃなかった……。


「しかしこいつを無駄にはしないぞっ!」


 俺が逃げると魔物が追って来る。

 ならばと俺はあの男と魔法使いがいる場所へと走った。


 このままこいつをあの男のいるところまで連れて行く。

 そしてこいつに襲わせれば目的は達成だ。


 計画とは違ったが、予定通りになる。

 そしてアーウィナ様を連れ戻し、国王様からお褒めの言葉をいただくのだ。


「そらこっちに来いっ! うおおっ!?」


 巨大骸骨はものすごい速さで追って来る。


「ひえええっ!」


 下手をすれば俺が先に殺される。

 しかし殺されるわけには行かない。


 だから俺は必死で走った。あの男のいる場所まで。


 ――――――――――――


 お読みいただきありがとうございます。


 今回はミスティラが頼もしいですね。

 しかしザコ骸骨は楽に倒せても、巨大骸骨ははたして倒せるかどうか……。


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 次回はクロイツが活躍?

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