第28話 アーウィナのライバル登場?
なんだかんだでテニスの大会は勝ち上がり、今日は全国大会だ。
少し前まで1回戦負けばかりだったのに、信じられないという気持ちであった。
「満明さん、がんばってくださいね」
「うん」
アーウィナも応援に来てくれている。
格好悪いところは見せられないなと、俺は気合を入れた。
「――ふふん。そいつがあんたの男なの?」
「えっ?」
女の子に声をかけられそちらを向く。と、そこには俺と同じくテニスウェアを着た背が高い男性と、長い金髪を三つ編みにした中学生くらいの女の子が立っていた。
「君は……」
「あら? ミスティラ。どうしてここにいるんですか?」
「アーウィナの知り合い?」
「はい。魔法学校時代の同級生です」
「へー」
ということはこの女の子も魔法使いか。
「あんたがこっちの世界へ来たって聞いてね。追いかけて来たの」
「追いかけてって……どうしてですか?」
「あんたに勝つためよ」
「勝つ?」
ミスティラはドヤ顔で言うも、アーウィナはよくわからなという表情であった。
「あんたのライバルとして、今日こそは勝ってやるわっ!」
「ライバル……でしたっけ?」
「むきーっ! 魔法学校時代に主席を争ったのになにその言い草っ! 主席の座は譲ったけどねっ! 魔法使いとしてはあたしのほうが優秀なんだからっ!」
「は、はあ、そうですか」
「そうなのっ! それで、そいつがあんたが育ててる男なの?」
「育ててるって……満明さんをですか?」
勉強やテニスの上達でお世話になっているので、育てられていると言えばそれも間違いではないが、アーウィナにそのつもりなどないと思う。
「別にわたしは満明さんを育てているわけでは……」
「ふふん。隠したってダメ。こっちの世界でこっそり最強の従者を育てて、あたしより優れていることを証明しようって言うんでしょ? あんたの思惑なんて優秀な魔法使いのあたしには簡単にわかるんだからね」
「そんなつもりは……」
「だからあたしもこっちで従者を育てることにしたわ。この男よ」
と、ミスティラが見上げたのは隣に立っている背の高い男だ。
「従者はひどいなミスティラ。僕らは友人だろう?」
「話を合わせなさいよ。格好つかないでしょ」
「はは、まあいいけど。僕は
「そ、そうですか」
手を差し出されたので握手をする。
背も高いが顔もイケメンだ。
外見だけなら俺よりもスペックが高く、腰が引けてしまう思いだった。
「もう外見からしてあたしの勝ちね。この大会でも彼が優勝するわ」
「優勝するのは満明さんです」
「無理ね。あたしが育てた男のほうが強いもの」
「そんなことありませんっ!」
アーウィナが珍しく声を荒げる。
俺だって負けるつもりはない。
顔や背丈で負けても、テニスでは絶対に勝つ。
「悪いけど、試合は僕が勝たせてもらうよ。君じゃ僕には勝てないしね」
「なんでそう思うんだ?」
「僕のほうが格好良いからさ」
白い歯を輝かせて、宮部はそう言った。
よし絶対に負けない。
こいつには負けたくないと、俺は闘志を燃やした。
そして俺と宮部は順調に勝ち上がり、決勝戦で相対することになる。
「ふふん。さすがはミスティラのライバルが鍛えた男だ。決勝戦で会えると思っていたよ」
「あんたもずいぶんあの女の子に鍛えられたようだな」
「まあね。それを無駄にしないためにも、優勝はもらうよ」
「負ける気は無い」
俺たちは睨み合い、やがて試合が始まる。……と、
「あれ?」
試合はあったという間に終わり、俺がストレートで勝った。
なんとも呆気なく、肩透かしを食らった心地であった。
「ま、まさか……この僕がこれほどあっさり負けてしまうとは……」
「あ、ありがとうございました」
試合後の握手をして俺はアーウィナの元へ歩いて行った。
「おめでとうございます満明さんっ!」
「ありがとう」
アーウィナとの練習を無駄にせず、優勝することができた。
以前まではいろいろと自信を持てない俺だったが、アーウィナとの出会いで大きく変われた気がする。彼女の存在は俺の中で本当に大きかった。
「この―っ! なんで負けちゃうのっ!」
「す、すいませーんっ!」
声のするほうを見ると、ミスティラが宮部を杖でポコポコ叩いていた。
「もうあんななんかいらないっ! もっと強い男を見つけるんだからっ!」
「そんなーっ! 待ってよミスティラーっ!」
宮部が縋りつくも、ミスティラは無視してずるずると引き摺って行く。そしてこちらへとやって来て、
「お、おぼえてろーっ!」
そう言って道の向こうへと駆けて行った。
……
それから俺たちは買い物をして家に帰る……と、
「えっ?」
なぜか俺の家の居間でミスティラがくつろいでいた。
「な、なんでここにいるんだ?」
「うん? あんたをアーウィナから奪うため」
「奪うためって……」
「アーウィナより優秀なあたしが負けたのは、あんたが宮部より優れていたからよ。だからあんたをもらってあたしの従者にするの」
「そんなムチャクチャな……」
「うるさい。あんたはあたしの従者になるの。アーウィナは別の男を見つけて従者にするのね」
「満明さんは従者じゃありません。それに、あなたに譲る気はありませんよ。満明さんはずっとわたしと一緒です。ね、満明さん?」
「もちろんだよ」
従者であろうとなんだろうと、ミスティラのものになる気など無い。
「いつまでそう言っていられるかしら。絶対にあたしのものにするから」
不敵に笑うミスティラ。
その表情に少し不穏なものを感じた。
――――――――――――
お読みいただきありがとうございます。
満明君、いつの間にか強豪テニスプレイヤーになっていますね。
将来はプロテニスプレイヤーか、それとも……。
☆、フォロー、応援、感想をいただけたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
次回はミスティラの魔法に大ピンチ。
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