第27話 アーウィナの全裸に大興奮

 ……まずは大浴場へ入ろうと言って、なんとか逃れることができた。


 2人で旅館の大浴場へ行き、俺は男湯へ。アーウィナは女湯へ入った。


「はあ……」


 どういうわけか大浴場の露天風呂には誰もいない。

 広い風呂に俺ひとりで快適だが、なんとも違和感があった。


 それはともかく……。


「部屋に戻ったらまた一緒に入りたがるだろうなぁ」


 俺だって男だ。一緒に入りたい。

 しかし入れば平静ではいられない。息子は暴れん坊将軍になってしまうし、そんなことになればもう我慢ができないだろう。


 アーウィナだって子ともじゃない。

 裸の男女が一緒にいればどうなるかなんてわかっているだろうに……。


「そうだ。わかっているはず。わかっていて一緒に入りたがるってことは……」


 俺とそういうことをしてもいいという合図では?


 そう考えると、ますます興奮してきてしまう。


「い、いやでも、俺はまだ高校生だし、ゴムとかそういうの持ってないし、やっぱりダメだと思うし……」


 ひとりでぶつぶつ言いながら妄想を膨らませていく。

 と、そのとき……。


「うん?」


 誰かが露天風呂へ入って来る。

 湯気でよく見えないが、恐らく他の客……。


「えっ?」


 しかし胸の部分に膨らみが見える。


「ま、まさか……」


 アーウィナが?


 男湯にアーウィナが入って来たんじゃないか?


 そう思って驚いた俺だが……。


「あら?」

「えっ?」


 現れたのはアーウィナではない。

 赤髪の知らない美人女性であった。


「ここって女湯……じゃなかったかしら?」

「い、いえ、ここは男湯……のはずです」


 入るときに暖簾を確認したので間違い無いと思うが……。


「あらそう? まあ、あなたしかいないし構わないわ」

「そ、それはダメだと思いますけど」

「どうして?」


 女性が俺の側へと寄って来る。


「あなたかわいいわね。お姉さんがいいことしてあげようか?」

「い、いや、結構です」

「ふふ、そんなこと言って、こっちのほうは……あら?」


 女性が俺の下半身を見てきょとんとする。


「全然、大きくなってないじゃないっ!」

「えっ? いや……」


 不思議と興奮が無い。

 それよりもこの女性がなんなのか奇妙でしかたなかった。


「大きくしなさいよっ!」

「ちょ、やめてくださいっ!」


 抵抗する俺の下半身へ女の手が伸びた。……そのとき、


「満明さんから手を離しなさいっ!」

「えっ? ふぁっ!?」


 全裸のアーウィナが空から降って来る。

 それを見たせいで、今までおとなしかった俺の息子が……。


「あなたっ! こっちの人間ではないですねっ! なにが目的でこちらの世界へ来たのですかっ!」

「そのガキを誘惑してお前との仲を裂くように頼まれてね」

「なんですって? そんなこと誰に……いえ、だいたいの想像はつきます」

「ふんっ! まあ、こうなっちまったならしかたないっ!」


 風呂から飛び出た女がアーウィナを指差す。


「あたしはギルベルト王国1級魔法使いのギューレイだっ! 魔王討伐パーティの魔法使いとは言え、所詮はまだ小娘っ! あたしの魔法にかかればお前なんてすぐに捕まえ……うぎゃっ!?」


 上から降って来た光り輝く桶が女の頭にクリティカルヒットする。

 そのまま女はうつ伏せに倒れた。


「ふう」


 桶を降らせたのはもちろんアーウィナの魔法だろう。

 光り輝く桶は、元あった場所へと戻った。


「ア、アーウィナ、どうして……?」

「魔力を感じたんです。けど、まさかこっちに魔法使いがいるなんて思わなくて……。申し訳ありません。もっと早く助けられたのに……」

「う、うん。それはわかったけど……」


 俺は裸のアーウィナから目を逸らす。


「は、早く女湯へ戻ったほうが……わあっ!?」


 背中に柔らかな感触と衝撃。

 その正体がなんなのかは考えるまでもない。


「ア、アアアーウィナっ!? 抱きついちゃ……」


 アーウィナがうしろからがっしりと俺に抱きついている。

 しかも全裸で……。


「ようやく一緒に温泉へ入れましたね」

「ダ、ダメだってアーウィナっ!」

「嫌ですか?」

「い、嫌じゃないけど……」

「ならダメじゃないです」

「うう……」


 俺の息子はアーウィナの裸を見たときから元気満々だ。

 今までにないくらい昇竜拳であった。


「満明さんその……わたし、いいですよ?」

「えっ? い、いいって?」

「言わせないでください」


 恥ずかしそうにアーウィナは言う。


 これはもうそういう意味だろう。

 童貞の俺でもわかる。


「い、いや、ま、まだ早いってそういうのはっ」

「ふふ、ここじゃダメってことですか? じゃあお部屋で」

「そ、そういうことじゃなくて……」

「さあ行きましょう」

「いやちょ……」


 そのまま俺は部屋へと転移させられる。


 ……このあと必死にアーウィナを説得し、なんとか事なきを得た。

 しかしいずれは俺のほうから……。


 そんな思いを胸に抱いた。


 ちなみに男湯の入り口には清掃中の看板が立っていたらしい。

 あの女魔法使いの仕業だろう。


 旅館の玄関付近でギルベルト王国の兵士たちを見つけたアーウィナは、彼らをこっぴどく叱って追い返していた。


 ――――――――――――


 お読みいただきありがとうございます。


 股間の息子が昇竜拳で最後は波動拳……。

 しかしおとなしそうに見えて、意外にアーウィナは積極的です。


 ☆、フォロー、応援、感想をいただけたら嬉しいです。

 よろしくお願いいたします。


 次回はテニスの全国大会に現れた謎の魔法使い。

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