第21話 星村先輩の強引な企み

 ―――星村龍馬視点―――


 生島なんかにあれほどかわいい恋人がいることが気に入らなくてしかたない。


 俺が声をかければ靡かない女なんて今までいたことがなかったのに、どうしてあの女はイケメンの俺ではなく生島を選ぶのか?


 テニスの腕はともかくとして、顔は圧倒的に俺のほうが良い。

 だったらあんな男はフッて、俺を選ぶべきだろう。


 女なんて顔が良い男を選ぶのが普通だ。

 それなのにあのアーウィナという女は俺に惚れない。これはあり得ないことだ。


 昨日、あの女にフラれたことが悔しくてたまらない。

 いや、これは怒りだ。俺をフッたあの女に対し、俺は怒りを感じていた。


 こうなったら無理やりにでも自分の女にしてやりたい。


 そう考えた俺は、あの女を自分のものにするための行動を始めた



 ―――生島満明視点―――



 早朝、アーウィナとともに学校へ登校をして来ると、


「生島」

「あ、ほ、星村先輩……」


 昨日、アーウィナにフラれて怒り顔していた星村先輩に声をかけられる。


 昨日と違って、今朝は俺に声をかけてきた。

 なにか嫌なことでも言われるんじゃないかと、少しに不安になる、


「大会のことで話があるから、放課後に部室へ来てくれるか?」

「えっ? 大会?」


 俺は地区大会で優勝をしたので、次は県の代表を決める大会に出場する予定がある。部活には出ていないが、勝ち上がったのならば大会には出る必要があるだろう。


「ああ」

「わ、わかりました」

「じゃあ」


 そう言って星村先輩は去って行く。


 昨日のことはなにも言われずよかったが、なんだか呆気に取られてしまった。


「あれ?」

「うん?」


 アーウィナが自分の下駄箱を開いて声を上げる。


「どうしたの?」

「下駄箱にお手紙が入っていまして……」

「手紙?」


 アーウィナの手には一枚の封筒があった。


「なんでしょう? これ?」

「ラブレター……じゃないかな?」


 アーウィナはものすごく美人だ。

 昨日も男子からすごく注目されていたし、ラブレターを送られても不思議はない。


「放課後に……空き教室に来てほしいそうですね。けどどうしましょう? 満明さん以外の方にこのようなものをもらっても……」

「無視するのも悪いし、ちゃんと断ったほうがいいんじゃない?」

「……そうですね。はい。そうします」


 誰がアーウィナへラブレターを送ったのかはわからない。

 もしかしたらものすごいイケメンの男子の可能性だってある。それでもアーウィナは断ってくれるだろうと、俺は確信していた。



 ……



 放課後、俺はテニス部の部室へ来る。


「少し遅れちゃったな」


 トイレに行っていたら遅れてしまった。

 アーウィナは例のラブレターを送ってきた相手に断りを言うため、指定された空き教室へ行った。一緒に来てほしい言われたが俺は星村先輩に呼ばれていたし、ラブレターの返事はアーウィナひとりで行ったほうがいいだろう。


 話が終わったら昇降口で落ち合う予定だ。


 なるべく早く話が終わればいいなと思いながら、俺は部室へ入る。


「あれ?」


 部室に先輩の姿は無い。

 少し遅れてしまったので、絶対にいると思ったのだが。


「先輩も遅れてるのかな?」


 そう思ってしばらく待つことにした。



 ―――星村龍馬視点―――



 ……アーウィナが空き教室に入ったの確認した。

 俺はあとを追って同じ教室へ入り、後ろ手で鍵をかけた。


「えっ? あなたは……」

「やあ」


 アーウィナが驚いたような表情がこちらを見ていた。


「あなたは……星村さん? 確か満明さんを部室へ呼び出したはずでは?」

「ああ。そっちはあとでいいんだ。それよりも君に用があってね」

「用って……」


 アーウィナは俺が下駄箱に入れた手紙を取り出す。


「これのことですか?」

「そう。ラブレターだ」

「申し訳ありませんが、あなたとお付き合いする気はありません。それでは」


 出て行こうとするアーウィナの手を俺は掴む。


「君は俺と付き合うべきなんだ。君は美しい。俺と並んで歩けば絵になる。学校中、いや、どこでだって人気者になれる。俺は君がほしいんだよ」


 この女が隣にいれば俺自身の箔も付く。

 俺が女にモテるという最高のアピールにもなるんだ。だから絶対、この女を自分のものにしたかった。


「離してください」

「ダメだ。俺と付き合うまで離さないぞ。俺は勉強もスポーツもできるし、その上、顔だって良い。生島なんかより俺と付き合ったほうが絶対にいいって」

「離してください。これが最後ですよ」

「いいから俺と付き合えよ。付き合うって言わなきゃ帰れないからな」

「……しかたありません」

「ふっ、ようやく俺と付き合う気になったか。最初からそうしてれば……」

「違いますよ」

「なに? え……うわっちぃっ!?」


 女を掴んでいる手から火が現れ、俺は慌てて離す。


「な、なんだっ!? んがっ!?」


 そしてどこから取り出したのか、アーウィナの持っている棒で頭を殴られてその場に倒れた。


「今日はこのくらいにしてあげますけど、今度こんなことをしたらもっと痛い目に遭わせますからね。それじゃ」


 そう言ってアーウィナは空き教室を出て行く。


 俺は殴られた頭の痛みに呻きつつ、なにが起こったのかわけがわからず、ただただ困惑していた。


 ――――――――――――


 お読みいただきありがとうございます。


 星村先輩は諦めが悪いですね。

 あんまりしつこいと強力な魔法で存在を抹消されてしまうかも……。


 ☆、フォロー、応援、感想をいただけたら嬉しいです。

 よろしくお願いいたします。


 次回は朝、起きたらアーウィナがいなくなっていて……。

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