第15話 レベルアップしてチンピラと対決

「いだぁっ!」

「あんぎゃああっ!」

「死ぬーっ! いや、死なないだろうけどいたーいっ!」


 アーウィナに言われた通り俺はモンスターと戦い続ける。

 死なないし怪我はしないけど、攻撃されたら痛くてしんどい……。


『レベルが上がりました』


 戦ってモンスターを倒しているとそんな声が聞こえる。


「レベルが2に上がりましたよ。あと6つです。がんばりましょうっ!」

「お、おお……。てか武器とかあるとありがたいんだけど……」


 敵は棍棒を持っていたり、牙や爪で攻撃してくるのに俺は無手だ。


「素手で戦わないと喧嘩の修業にはなりませんよ」

「ま、まあそうだけど……」


 武器はもらえないらしい。


 しかたないと諦め、俺は洞窟の先へと進んでモンスターを倒し続けた。



 ……



「……はあ、はあ」


 それからオークやらリザードマンやらのモンスターを倒しに倒してレベルを6まで上げる。


 疲れた。

 怪我はしないけど、疲労はあった。


「けど」


 レベルが上がるごとに俺の身体が引き締まっていくのがわかる。

 今では最初に出て来たゴブリンなど一撃であった。


「さあそろそろボスですよ。気を引き締めて行きましょう」

「う、うん」


 まあどうせ死ぬことも怪我することもないんだ。

 ボスとは言え心配することもないだろう。


「あ、ちなみにボス戦は負けたら死にますから気をつけてくださいね」

「ええっ!?」

「戦いにはやはり緊張感も必要ですからね。仕上げとしてボス戦は通常の戦いと同じになっています。けど大丈夫ですよ。ここのボスはレベル5でも倒せますから」

「そ、そうなの? なら大丈夫かな……」


 今の俺はレベル6だ。

 レベル5で倒せるなら心配する必要は無い……かな。


 アーウィナの言葉を信じ、俺は意を決してボスのいる場所へと向かう。


「ぐぅおおおおおっ!!!」

「うわあっ!?」


 いたのは巨大なゴブリン……いや、ちょっと違うかも?


「ボスはオーガです。斧での攻撃は遅くて避けやすいですけど、食らったら一撃で死にかけると思うので気をつけてくださいね」

「えっ? 一撃でって……うおおっ!?」


 さっそく斧での攻撃が降ってきて俺は慌てて避ける。


 アーウィナの言う通り確かに攻撃は遅いが……。


 ズガァァァン!!!


 避けた斧での一撃が地面を深く抉る。


 こんなの食らったら死にかけるどころか即死すると思うのですが……。


「こ、これは気を抜けないな……」


 今までよりも気合を入れた俺は、斧での攻撃に気をつけながら必死にオーガと戦った……。


「はあ……はあ……や、やった……」


 荒く息をつく俺の前には倒れて姿を消していくオーガの死体があった。


『レベルが上がりました』

『レベルが上がりました』


「おお」


 一気にレベルが2つも上がり、俺は目標であるレベル8へとなる。


「おめでとうございます満明さんっ! ついにレベルが8まで上がりましたねっ!」

「う、うん」


 俺の身体はここへ入ったときとは見違えるほど引き締まっている。

 まるで歴戦の軍人のようであった。


「それじゃあ修業が終わったのでこちらへ戻しますね」

「あ、うん」


 それから俺は一瞬で元の場所へ戻って来る。

 不良が俺へ向かって拳を振るったまま止まっているのもそのままだった。


「満明さん、見違えましたねっ」

「そ、そうだね」


 中肉中背の普通体形だった俺の身体が今はがっしりしていた。


「では時間を動かしますね」

「えっ? いやちょ……」


 目の前には不良の拳がある。

 このまま時間が動けば顔を殴られてしまう……。


「おらっ!」


 時間が動き出した瞬間、予想通り俺の顔面に不良の拳が当たる。


「へっへっへ……って、いてーっ!!」


 しかし痛みを訴えたのは不良のほうだった。


「な、なんだこいつっ!? むちゃくちゃかてーぞっ! いてて……っ」

「うん?」


 殴られた俺はなんともない。

 ちょっと痒いかなと感じた程度だ。


「はあ? そんなわけねーだろ。面倒だ。全員でやっちまうぞっ!」


 不良たちが一斉に襲い掛かってくる。


 強面の不良どもだが、俺は怖くもなんともない。

 洞窟に出てきたモンスターたちにくらべればかわいいものだった。


「ふん。ほい。えい」


 襲い掛かってくる不良をひとりずつ殴って倒していく。

 全員が一撃で倒れてしまい、気付けば周囲には悶絶しながら呻く不良たちが転がっていた。


「う、うう……な、なんだこいつ? めちゃくちゃつえーじゃねーか……。聞いてねーぞこんなの……」


 一番に身体のでかい奴がバケモノでも見るような目を俺へ向けてくる。


「あ、じゃあ買い物へ行こうか」

「はいっ!」


 腕に抱きつくアーウィナを連れ、俺は予定通り買い物へ向かった。



 ―――星村龍馬視点―――



 不良らが叩きのめされるのを隠れて見ていた俺は戦慄する。


「な、なんだあいつ……」


 生島がボコボコにされたところで出て行って、あのかわいい子を格好良く助けようと思っていた計画は失敗だ。まさか生島があんなに喧嘩が強いなんて思わなかった。


 あのかわいい子を自分のものにしたいからと言って、下手に手を出せば自分もあそこで転がっている不良らと同じ目に遭う。しかしあの子を諦めることはできない。


 どうしようかと考えつつ、俺はその場を離れた。


 ――――――――――――


 お読みいただきありがとうございます。


 修業魔法なんてあったら便利ですね。

 おうちでお手軽に鍛えてに戦士になれそうです。


 ☆、フォロー、応援、感想をいただけたら嬉しいです。

 よろしくお願いいたします。


 次回は伊織の策略で満明の母が帰って来ます。

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