第11話 ストーカー事件の真相

「けど魔法でどうやって俺の潔白を証明するんだ?」


 今まで見せてもらった魔法では難しそうだが。


「はい。伊織さんがストーカーをされているのが本当だとすれば、真犯人がいるはずです。その人を見つければ満明さんの潔白は証明できますよ」

「なるほど」


 伊織も困っていると伊織の友達は言っていた。

 と言うことは実際に被害があり、犯人が存在するということだ。


「なので伊織さんを精霊に監視させます」

「えっ? 精霊?」


 アーウィナが俺の前で何事かを呟く。と、


「うわっ!?」


 背中に翼を生やした薄緑色の丸い物体が現れた。


「こ、これは……?」

「風の精霊です。この精霊に風と同化してもらって、ストーカーが現れるまで伊織さんの周辺を監視してもらうのです」

「あ、それなら簡単に真犯人がわかるね」

「はいっ」


 真犯人がわかったら伊織に教えてあげよう。

 それから警察に通報してもらって真犯人が捕まれば俺の無実は証明されるはずだ。


 アーウィナの側から放たれる精霊を、俺は安堵の思いで見送った。



 ……



 それから何日か経つ。

 しかし伊織にストーカーしている者は未だ見つかっていない。学校で話そうとしても伊織は俺を避けており、ストーカー被害に関してはなにもわかっていなかった。


「おかしいですね」


 居間のソファーで俺の隣に座っているアーウィナがそう呟く。


「この数日間、伊織さんに精霊をつけていますが、ストーカーから被害を受けているようなことはありません」

「ストーカーするのをやめたのかな?」


 被害が無くなったならそうとしか考えられないが。


「そうでしょうか? わたしは違うような気がします」

「どういうこと?」

「ストーカーなんて初めからいなかったのではと」

「えっ? でも……」


 伊織は被害に遭ったと言っていたらしい。

 ならば犯人は存在すると思うのだが。


「確かめてみましょう」

「確かめるって?」

「はい。まずは伊織さんを呼んでいただけますか?」

「い、伊織を? けど……」

「呼んでいただければ真相がはっきりするかもしれません」


 自信のある表情でアーウィナはそう言う。


 伊織は俺にストーカーをされていると言っている。

 学校では避けられているし、家に呼んでもはたして来るだろうか?


 とりあえず呼ぶだけ呼んでみることにした。



 ……



 電話で呼ぶと、意外にも伊織はすぐに承諾して家へとやって来た。

 それから居間に通してとりあえず座ってもらう。


 アーウィナは2階にいる。なにかするようだが、会わなくても大丈夫なようだ。


 前回はなんとかなったが、やはり面倒なことになりそうなので会わせなくていいのは助かった。


「伊織あのさ……」


 俺は意を決して伊織へと話しかける。


「ス、ストーカー被害に遭ってるみたいだけど、犯人は俺じゃないぞ」

「……知ってる」

「えっ?」


 知っている。

 俺の弁解に伊織はそう答えた。


「満明がストーカーじゃないのは知ってるよ。けどなんでか満明ってことで噂が広まっちゃったみたいで……。満明がわたしのこと好き……だからって」

「じゃ、じゃあ潔白を証明してくれても……」

「うーん。でも……」


 伊織はチラと俺を見る。


「満明じゃないとは思うよ。けど……ストーカーしたいって気持ちはあるんじゃない?」

「えっ? それってどういう……」

「わたしに未練があってストーカーしたくなったりとか」

「そんな馬鹿なっ!」

「けど未練はあるんじゃない?」

「未練って……」


 なんでそんなことを聞いてくるんだ?

 意図がまったくわからない。


「わたしのこと好きなんでしょ?」

「なんでそんなことを……」

「だったらずっと好きでいればいいのに……」


 伊織が一瞬だけ睨むような強い視線を俺へ向けた。……そのとき、


(満明がストーカーって噂を流したのはわたし)


「えっ?」

「なっ!?」


 伊織はしゃべっていない。

 しかし伊織の声が部屋へと響いた。


(変な女と一緒だった。それが気に入らなかった。満明はわたしだけを見ていればいい。他の女に興味を持つとかムカつく)


「ちょ、ちょっとなにこれっ! 満明っ!」

「い、いや俺も……あっ」


 アーウィナの魔法。

 この不思議な声はそれだろうと俺は思った。


「ち、違うからっ! こんなの……っ」

「いやでも……」

「うるさいっ!」


 そう叫んで立ち上がった伊織は部屋を飛び出し、玄関から出て行ってしまった。


「あ……伊織」


 どうして?


 ただ疑問だけが頭へ浮かぶ。


「どうやらわたしが思った通りのようでしたね」


 そう言いながらアーウィナが2階から降りて来る。


「アーウィナ。さっきの魔法って……」

「心の声を聞こえるようにする魔法です。もしかしたらあの方の狂言ではと思ったのですが、その通りだったみたいですね」

「うん……」


 魔法によってわかった伊織の本音。

 しかしあれは本当に真実なのか?


 アーウィナの魔法を疑うわけではないが、思いも寄らなかった伊織の本音を知り、俺は信じられないという思いでいっぱいだった。


 ――――――――――――――


 お読みいただきありがとうございます。


 見た目はロリ巨乳。頭脳は明晰。最強の魔法使いアーウィナさん。

 そして料理もできてやさしい。悪いところ無いですね。


 ☆、フォロー、応援、感想をいただけたら嬉しいです。

 よろしくお願いいたします。


 次回はアーウィナの魔法で満明の潔白を学校中に伝える。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る