第7話 魔法でテニスの練習を

「アーウィナっ」


 家に帰って来た俺は台所にいたアーウィナに声をかける。


 彼女も買い物に行ってついさっき帰って来たところなのだろう。

 食材を冷蔵庫へ入れているところだった。


「あ、おかえりなさい満明さん。すいません。出迎えられなくて……」

「そんなことよりテストの結果がすごく良かったんだっ。アーウィナのおかげだよっ。ありがとうっ」

「そんな。テストの結果が良かったのは満明さんががんばって勉強をされたからですよ。わたしはがんばるきっかけを与えただけに過ぎません」


 そう言ってアーウィナは微笑む。


 アーウィナはそう言ってくれるが、テストで良い結果を残せたのは間違い無くあの魔法があったからだ。


 俺はもう疑わない。

 アーウィナはラノベの世界から現れた魔法使いだと、俺は信じていた。



 ……



 それから夕飯を食べ終わった俺は、今まで忘れていたことをハッと思い出す。


「あ、テニス部やめるの忘れてた……」


 もうすぐ大会がある。

 大会が始まる前にやめないと、出場選手の登録とかで迷惑をかけてしまうだろう。


「テニスとはなんですか?」

「えっ? ああ。スポーツだよ。言葉だけじゃわかりづらいだろうし、えっと、ちょっと待ってね」


 俺はスマホでプロ選手の動画を見せる。


「へー。この道具で球を打ち合うのがテニスなんですね」

「うん。俺は学校の部活でテニスをやってるんだけど、やめるつもりなんだ」

「どうしてですか?」

「どうしてって……」


 伊織と星村先輩が一緒にいるのを見るのが辛いから。

 なんて女々しい理由なので、あまり言いたくはなかった。


「なにか深い事情があるんですね」

「ま、まあ……」

「テニスが嫌いというわけではないんですか?」

「嫌いではないけど……」


 そもそもは伊織がテニス部に入るからというのが始めたきっかけだ。しかし始めてみればおもしろかったし、嫌いというわけではない。


「あんまりうまくもないし、続けてもしかたないかなって」

「じゃあたくさん練習してうまくなりましょうっ!」

「そ、そう言われても……」


 練習はそれなりにしてきたつもりだ。

 しかしそれほどうまくはなっていなかった。


「大会は練習試合も含めて勝ったことないしさ。俺、才能無いんだよ。たくさん練習したってそんなにうまくならないよ」

「そんなことありませんってっ!」

「でも……」

「もっと効率良く練習すればうまくなりますよっ」

「効率良くって?」


 今までも顧問の先生や先輩に指導を受けて練習をしてきた。

 それ以上に効率の良い練習など思いつかないが……。


「あ、この人ってすごくテニスがうまい人なんですよね?」

「えっ?」


 アーウィナが指差したのはスマホの動画に映っているプロ選手だ。


「まあプロだしね。世界チャンピオンとかじゃなかったかな」

「じゃあこの人に教えてもらいましょう」

「ええっ?」


 そんなの無理に決まっている。


 俺はアーウィナの提案を聞いて即座にそう思った。


「この人はプロの選手なんだ。俺なんかの指導をしてくれるわけないよ」

「この人、本人に教えてもらうというわけではないですよ」

「えっ? それってどういうこと?」


 アーウィナがなにを言っているのかわからない。

 しかしなにか考えがあるようではあった。



 ……



 そして次の日の放課後、家に帰るとテニスの準備をするようアーウィナに言われて、俺はウェアに着替えた。


 俺がテニス部をやめたいのはうまくないからというより、伊織の件があるからだ。しかしもしも最後に試合で活躍できて思い出を作れるならば。


 そんな気持ちでアーウィナの言う通りにしていた。


「着替えたけど、ここじゃテニスはできないよ」


 俺の家は普通の民家だ。

 庭にテニスコートがあるような豪邸ではない。


「大丈夫です」


 そう言ってアーウィナが何事か呟くと、


「えっ? な……」


 一瞬で別の場所へと移動する。

 そこはどこかのテニスコートだった。


「こ、ここは……えっと、転移の魔法でどこかに?」

「いいえ。ここは異次元空間です」

「い、異次元空間?」

「はい。異次元空間に作ったテニスコートです」


 またなんかすごい魔法を使っている。

 しかし確かに周りには誰もいないし、普通ではない場所なのはわかった。


「けどテニスコートがあっても……」


 相手がいない。

 アーウィナはもちろん初心者だろうし、練習相手になるとは思えなかった。


「指導はわたしがします」

「けど、アーウィナは初心者でしょ?」

「はい」

「それじゃあ……」

「ですから、魔法でテニスのうまい人に変身します」

「えっ?」


 それからアーウィナが呟いて魔法を唱えると、


「わ、わあっ!?」


 アーウィナだった姿が、動画で見たプロ選手へと変わった。


 ――――――――――――――


 お読みいただきありがとうございます。


 魔法使いと言うか、ドラ〇もんのようになっていますね。

 まあドラ〇もんがロリ巨乳な美少女でも、それはそれで嬉しいです。


 ☆、フォロー、応援、感想をいただけたら嬉しいです。

 よろしくお願いいたします。


 次回はテニスの大会へ。

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