第4話 アーウィナとの生活は戸惑いがいっぱい
2人に会ったせいか、俺は沈んだ気持ちで帰路へと着く。
「はあ……」
へこむ。
しかし男としては完全に負けているので、しかたないかという諦めの気持ちもあった。
「ただいま」
「あ、おかえりなさいませっ!」
帰ると玄関に立っておじぎをする女の子……アーウィナの姿があった。
「もしかして玄関でずっと待ってたの?」
「はいっ! いつ帰って来られてもすぐにお出迎えできるようにしてましたっ!」
「そ、そうなの? もしかして俺が学校へ行っているあいだも……」
「もちろんですっ!」
……変わった子である。
「あ、これ、弁当買ってきたから食べようか」
夕飯には早いが、俺もお腹が空いているので一緒に食べようと思う。
「はいっ!」
アーウィナと一緒に居間へ移動して食事を始める。
「これはなんですか?」
「えっ? 箸だけど……」
「ハシ? ハシとはなんでしょうか?」
ハシを知らないらしい。外国の人なら使えないこともあるだろうが、存在すら知らないというのはやはり不思議であった。
「箸は食べ物を掴むのに使うんだけど……あ、じゃあスプーンとフォークを持ってくるよ」
台所にあるスプーンとフォークを持って来て渡す。
それでも箸を使ってみようとがんばっていたが、結局はスプーンとフォークを手に取った。
「君ってその……本当にアーウィナなの?」
「はいっ! わたしは間違い無くアーウィナ・ノーウィンですっ!」
「う、うん……」
姿は確かにアーウィナだ。不思議な力も使えるし、やっぱり本当にラノベの世界から出て来たアーウィナなんだろうか?
しかし俺の中の常識が、そんなことはあり得ないと言っている。
だってラノベだよ? ラノベの中から出てきたなんてあり得ないじゃん?
……そうなんだけど、瞬間移動したのも事実だ。
はたして真実はいかに?
考えても明らかになることではなかった。
……
そして次の日の朝……。
「ん……うわぁっ!?」
目覚めるとアーウィナが隣に寝ていた。
「ア、アーウィナっ!」
「……うん? あ、おはようございます」
「おはようじゃなくてね……」
アーウィナには両親の部屋で寝るように言ったはず。
しかしなぜか朝になると俺の隣で寝ていた……。
「自分のベッドで寝ないとダメだよ」
「わたしと一緒に寝るのは嫌ですか?」
「い、いや、そういうわけじゃないけども……」
恋人同士ではないのだ。
嫌というか、ダメだと思うのだが……。
「じゃあ一緒に寝ましょうっ!」
「け、けど俺たちは恋人同士とかじゃないからね。恋人同士ではない男女が一緒のベッドに寝るのはダメだと思うよ」
「大丈夫ですっ! わたしは満明さんのこと好きですからっ! 満明さんも……わたしのことは好きですよね?」
「う……」
潤んだ瞳で見上げられて心臓が鷲掴まれたような感覚に陥る。
こんなかわいい子に自分のことが好きかどうか聞かれたら?
答えははいしかないじゃないですか……。
とは言え一緒に寝るわけにはいかず、俺は「はい」と答えつつも、アーウィナには両親の部屋で寝てもらうことにした。
……
朝食はいつも通りシリアルだ。
自分の分とアーウィナの分を用意して食べ始める。
「これおいしいですね」
「うん」
うまいことはうまい。
しかし俺は毎日のように食べているので飽きていた。
「けど満明さんはあんまりおいしそうじゃないですね?」
「俺は毎日食べてるからね。そろそろ飽きたかな」
「あ、じゃあ明日からはわたしが朝ごはんを作りますっ!」
「えっ? いやでも悪いよ。そんなことしてもらっちゃ」
縁もゆかりもない他人の女の子に食事の用意をさせるなんて申し訳ない。
「いえやらせてくださいっ! お世話になってますし、食事とか……お掃除とかお洗濯もやらせてもらいたいですっ!」
「そ、そりゃやってもらえたら助かるけど……」
「じゃあやらせてもらいますねっ!」
「あ、はい。お願いします……」
勢いに押されてやってもらうことになった。
――――――――――――――
お読みいただきありがとうございます。
シリアルはおいしいけど毎日は飽きる。
美少女の作った料理はまずくてもおいしい。そして嬉しい。
☆、フォロー、応援、感想をいただけたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
次回はアーウィナの服を買いに行ったり、料理を食べたり……。
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