第2話 電波で不思議な女の子?

「え、ええっ!?」


 俺はその子の大きくてたわわなおっぱいをがっしりと掴んでいたのだ。


「な、なんで女の子が……うわっ!?」


 驚いて後ずさった俺はそのままベッドから落ちて尻を打つ。


「いたた……」

「んん……ん」


 女の子が寝返りをうって俺のほうを向く。

 そして薄っすらと目を開いた。


「あ、あの……」


 なんて声をかけたらいいんだ?

 と言うか警察に電話したほうがいいのか?

 いやでも、まだ泥棒かどうかはわからないし……。いやでも不法侵入だし……。


 俺は頭をパニックにさせながら、ただただ女の子の目を見つめていた。


「あなたは……満明さん?」

「えっ? そ、そうですけど……」


 どうして俺の名前を……?

 いやまあ、俺の部屋だし、知る手段はいくらでもあるけど。


「わあっ!」


 俺が答えると女の子は目を輝かせて身体を起こす。


「あのわたし、あなたに会いに来たんですっ!」

「そ、そうなんですか?」


 もしかして親戚の誰かとか?

 けど、同い年くらいでこんなにかわいい女の子の親戚なんて記憶に無い。


「あの、どこかでお会いしたことありましたっけ?」

「会うのは初めてですね」

「は、初めて……ですか」


 それはまあこんな美女と一度でもあっていれば忘れるわけはないか。


「はい。けどずっとあなたのことは心に感じていました」

「心に感じていた?」


 なにを言っているんだこの人は?


 ちょっと電波な子……なのかもしれない。


「わたしが辛くて苦しいとき、いつもあなたの励ましを心に感じていました」

「は、励ましていた?」


 この女の子がなにを言っているのかまったくわからない。

 もちろんこの女の子を励ましたことなど無いし、なにを言ってるのかさっぱりだ。


「だからいつか会ってみたいと思って、こうしてやって来たのです」

「やって来たって……どこから?」

「そこからです」

「そこって……」


 女の子が指差した先。

 そこにあったのは昨日寝る前にベッドの上で読んでいたラノベである。


「わたしはその本の世界からやって来たのです」

「……」


 やっぱり電波な子のようだ。


 しかしラノベからやって来たとは、これまたぶっ飛んでいる。


「君がどこからなんの目的で俺の家に来たのか知らないけど、もう帰ったほうがいいよ。俺に構っても良いことなんかないからさ」

「そんなの嫌ですっ!」

「うおおっ!!?」


 女の子に抱きつかれて俺は思わず声を上げる。


 大きくて柔らかい胸が当たって、俺の思考は慌てふためいて冷静さを失う。


「ちょ、ちょちょっ! 抱きついちゃダメだよっ!」


 慌ててつつも必死で声を絞り出す。


 俺だって男だ。かわいい女の子に抱きつかれて悪い気はしない。

 けれど見ず知らずの男に抱きつくなんて、それは良くないことだ。


「せっかく会えたのに帰るなんて絶対に嫌ですっ!」

「そ、そんなこと言われても……ん?」


 慌てつつ俺は時計へと目をやる。


「あ、もうこんな時間か……」


 そろそろ家を出る時間だ。

 話していたらだいぶ遅くなってしまった。


 今日は遅刻確定だなとため息を吐く。


「なにか予定があるんですか?」

「あ、うん。学校だよ。今から準備して出掛けると少し遅れそうだけど」

「そうなんですか? それじゃあ早く準備しないとっ!」

「う、うん」


 謎の女の子を部屋の外へ出した俺は着替え、居間で軽く朝食を済ませるなどして登校する準備を終える。


「じゃあ俺は学校へ行くから、君も家に帰るんだよ」

「嫌です。わたしは満明さんの家で待ってます」

「いやでも……」

「それじゃあ魔法で満明さんを学校へ送り届けますね」

「ま、魔法?」


 なにを言ってるんだこの子は?

 やっぱり電波な子なのかなと思っていると……。


「えっ?」


 身体の周囲が青い光に包まれる。そして、


「うわっ!?」


 身体が宙に浮いたかと思うと、すぐに落下した。


「いたた……」


 尻から落下した俺はなにが起こったのかと、女の子がいた方向を見上げる。しかしそこに見えたのは女の子ではなく……。


「えっ?」


 門柱に掲げられた黒勇こくゆう高校という看板を見て目を見開く。

 ここは間違い無く俺が通っている高校の校門だった。


 ――――――――――――――


 お読みいただきありがとうございます。


 朝、目覚めたらロリ巨乳な美少女が隣で寝ている。これは男の夢です。しかし実際にいたらやっぱり怖いですけどねー。


 ☆、フォロー応援、感想をいただけたら嬉しいです。

 よろしくお願いいたします。


 次回、アーウィナを名乗る少女に戸惑う満明。

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