第3話 隣の女子に白い目で見られる。
あれから五日後。
俺のハンター養成学校での日々は筒がなく進行していた。
この学校では通常授業が大きく分けて2種類ある。
数学や社会、化学などの教養科目を学習する授業と、ハンターに関する法律や戦い方といった様々なものを座学で学ぶ授業だ。
一年次は大体、教養科目が七、ハンター学が三の割合だと聞いている。ハンター学と言っても、ハンターは実地での訓練がメインだからね。座学自体はそんなに多くない。
世界に魔粒子が溢れて、人の発展はかなり遅れたって聞いてるけど、この学業も昔より質が下がったみたいだ。
現代の人間は魔物と戦ったり、ダンジョンを攻略しなくちゃいけないからな。それも仕方ない事だと思う。
もちろん、ハンターや魔術師にならない人達は、俺達と違ってしっかり勉強しているぞ。そういった人達に専門的な分野は任せておけばいい。
彼らが生活基盤を支えてくれる代わりに、俺達ハンターはその安全を守る為に、しっかり戦わないといけないんだ。
まだハンターじゃないけどね。気持ちが大事なんだ。
ハンターの授業には当然魔法も含まれる。一応この学校にも魔法の才能を持っている生徒もいるし、現代の人間は皆魔力を持っているからね。戦闘では皆魔力を使うから当然のことだ。
魔法の才能を持っていて、何故ハンター養成学校に来ているのかって? それは俺にも分からない。話したことないし。
そう。入学してから山田以外にほぼ接触無しである。
ああ。とか、はい。とか、うん。しか言っていない気がする。
山田をやったから(
俺が真南宮家の欠陥品という噂は、山田が知っていたように、不確実でも世間にあったんだろう。それが、俺がこの学校に入学したことで確信に変わっていったんだと思う。
それでも俺に話し掛けて来ないのは、たぶん真南宮家がコワいんだと思う。俺でもそう思う。七大魔術大家なんて日本人なら全員知ってると思うし、屋敷もかなりデカい。あれを見たら…うんそりゃコワいわ。
外に出て改めて分かったな。魔術大家の影響力ってやつを。
まあ、その家の出身者の当の俺は、何の恩恵も受けていないし、何なら現在進行形でデバフを貰ってるわけなんだけどな。
祖先がどれだけ凄くても、どれだけ凄い魔術書を持っていようとも、俺には古臭くて、血統と誇りだけの最低な家門にしか映らないけどな。姉さんは例外だけど。
でも、この歪な平穏はいつまで続くか分からない。俺が真南宮家と完全に縁が無いと分かれば、山田の様に絡んでくる奴がまた出て来るかもしれない。逆に壁が無くなって対等に話せることもあるかも。うん、そっちを期待したいな。
そう言えば、その山田は大人しくしている。あの保健室で何があったのかはコワくて聞けないし、目が合った時は何か言いたそうにしていたが、結局何も言わずに目を逸らしていた。何なんだろうな。
因みに今は、校舎から出て外の広場で魔法の授業中である。
実際に魔法を使うわけじゃないけどね。
魔法の基礎中の基礎、魔力を感じる所から始まり、今は体内で魔力を動かす練習中だ。俺は三、四歳の頃からずっとやっているが、普通の人達は今から始めるのが一般的らしい。
当然、俺以外にも経験者はいて、クラスメートからコツを聞かれて楽しそうに教えている。俺には誰も聞いてこないんだけど。
こんなのは誰でも簡単に出来る。俺が初めて魔力を動かした時も一発で出来た。その時、俺を褒め称えていた連中を俺は許さない。
俺を勘違いさせやがって。
俺が勝手な逆恨みをしていると、ふと視線に気づいた。
隣の女子がこっちを見てぎょっとしたと思ったら、フイっと顔を逸らされた。
ん? ああこれか。
俺は授業が始まってからずっと、手の平に魔力で小さな四角いキューブを作って遊んでいた。細かく十段くらいに分けて、左右に回転させていたんだ。
しょうがないだろ。これが俺の生きてきた全てとも言える。どれだけしょぼくても、俺には魔力を動かすくらいが俺の魔法の全てなんだ。
本物の魔術師にはどう足掻いても勝てないし、ここにいる人間にもいつか追いつかれる。だから今だけは…。
そこまで考えて俺は気づいた。今のは自慢してるって思われたのか?
さっきのも、うわー…。なんかこいつ自慢して来るんですけど…きっつ。って感じだったかも。
いやいや! そんなわけないじゃん!
自慢のつもりは全く無かったんだけどな、猛烈に恥ずかしい。
俺は顔が赤くなってしまった。
くそっ。止めだ止め! やーめたっと。
はあーー。
早く明日にならんものかね。
明日はようやくダンジョンに入れる。
申請すれば、生徒も学校が管理しているダンジョンに入れるようになる。その予行演習が明日あるのだ。
それさえ済めば週末は入りたい放題だ。
魔法が使えなくても『刀の才能』はあるし、一人で入るわけじゃないからな。危険は承知の上でもやっぱりワクワクする。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
(うーん。どうしても上手く行かないのよね)
魔力を感じるのは当たり前なんだけど、私は武技以外で使ったこと無いから、いまいちよく分からなかった。
だって、魔法なんて使えないし、武技を使う時は勝手に魔力が使われるから、練習なんてしたこと無かったんだもの。
でも、先生はハンターになるなら必須だって言うし、頑張らないと皆に置いて行かれるわ。
周りの人も苦戦してるようだし、後で経験者の人に聞いてみよう。
そう言えば隣の人って、あの真南宮家の人間なのに、魔法が使えないって噂だったけど、どうなのかしら?
私が気になって隣の男子、真南宮君の方を見ると、信じられないモノが目に飛び込んできた。
隠してやってるようだけど、隣なので私には隠せてない。手の平で何か小さくて黒い箱の様な物が、凄い速さで様々な方向に回転しているのが見えた。
(え? 何アレ!?)
私はその黒い何かを見ていると、何故だか急に不安になってきた。
そんな時、真南宮君が、ジッと見ている私の視線に気づいて、彼と目が合ってしまった。私はすぐに顔を逸らした。
(盗み見したって思われたかな? 殺されないわよね?)
それくらい、その黒い何かは怖かった。
幸い、その後も何も言われなくてホッとしたけど、アレって何だったのかな?
魔力って見えない筈なんだけど…。
怖くて聞けなかったわ。
目を付けられたくないし、黙っていよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます