第21話 災害時に役立つ…かもしれない小ネタ集

 今回は、災害時はもちろん、平常時からつながる防災への小ネタを交えつつ、発想を広げるきっかけになるような事をまとめてみたいと思います。


 ○ けがをしない様に、踏み抜き防止ソール


 災害時には道路や屋内問わず、足元に様々なものが散乱することになります。足の怪我はそれだけで避難行動に対する致命傷になりますので、必ず丈夫な靴を履いて行動してください。靴の中に敷くソールを、踏み抜き防止の強化ソールに変えるだけでも安全性が増します。

 革手袋や安全靴が用意できるならベストでしょう。ちょっとした怪我でも感染症の恐れもありますし、災害中は医療の支援は期待できません。自分の身は自分で守るが鉄則です。


 ○ 水を運ぶという作業


 給水車の支援が受けられる場合、次には水を自宅まで運ぶという作業が発生します。給水用のタンクの準備はもちろん、運ぶ際に省力できるキャリーカートなどを準備しておくと便利です。台車でも代用できますが、路面に細かな障害物が散乱している状況も考慮すると、なるべく車輪の大きな物のほうが良いでしょう。

 この他、背負い型の水袋という物もあります。手で持つよりも安全で楽に運べるので、持っておくと便利です。


 ○ 普段使っているものをそのまま転用


 サバイバルツールのような、「10種類の工具がこれ一個」的な道具は携帯には便利ですが実際の作業で使うには決して使いやすいものではありません。工具類は、普段から使っていて使い慣れているものを取り出しやすい場所に収納しておくほうが、いざというときには役に立ちます。

 ヘルメット類も、わざわざ防災用ではなく自転車用に普段から使っているものなどを転用するほうが無駄がなく使いやすい場合もあります。

 特に、キャンプ用品などはそのまま防災用品として転用できるものが多くありますので、普段使っているものの中から防災に役立つものを選び出す、という選択肢も有り得るということを覚えておいてください。

 

 ○ 経口補水液の作り方


 夏場で汗を大量にかいた際に、真水で水分補給をしようとすると充分な吸収が得られず脱水症状になることがあります。

 水1リットルに対し、砂糖40g(大さじ4杯程度)塩3g(小さじ半分)を混ぜると即席の経口補水液になります。飲みにくい場合はレモンなど柑橘果汁を加えると爽やかで飲みやすくなります。

 スポーツドリンクなどが無く電解質の不足を感じた場合は、意識的に塩分を取ったりしながら体調維持に努めてください、。

 子供が、急な嘔吐や下痢を起こした際には水分補給が大事になります。覚えておくとよいでしょう。



 ○ カップ麺は水でもできる?


 お湯が作れない場合に手元にカップ麺しか無い。そんな場合は、水を注いで(夏場なら)30分ほど待つと常温水であっても食べられる硬さに戻ります。油分の少ない商品の方がスッキリと食べられますので、意識して選んでおくといざという時役立ちます。冬場の場合は2倍程度時間がかかります。温度により必要時間が変わるだけ、と捉えれば熱湯でなくても時間調節で食べられるということです。



 ○ 蓄光シール


 部屋のドアノブや廊下の所々、防災用具の入っている収納戸棚の扉などに『蓄光テープ』を貼っておくと、急な停電時にも行動の補助となります。要所にあらかじめ貼り付けておくと、いざという時、明かりだけに頼らずに避難できる場合があります。

 懐中電灯や、その他必須になる道具類にも貼っておくと便利でしょう。



 ○ キッチンばさみでまな板要らず


 避難生活中は、兎角ゴミや洗い物が発生しますが、その処理ができないことも多いため、なるべく手間を掛けずに食事の準備をすることが望ましいです。

 いつもどおりの手順で行うことにも一理ありますが、食材のカットはキッチンばさみで処理できる程度のもので済ませてしまうという方法もあります。

 こうすると、まな板を使用せずに済みますし毎回洗浄、消毒するという手間も省けます。



 ○ ゴミ袋で命を守る


 壁に囲まれた快適な避難所までたどり着けない場合、屋外にて一夜を過ごすと云う場合も発生するかもしれません。津波避難タワーなどは、最低限の設備しか備えられていないことも多く、天候によっては吹き晒しの中で一夜を明かすということになるかもしれません。

 体温の低下は命に関わります。

 そのため、風を浴びるような場所の場合はとにかく風を通さないための備えが肝心になります。雨合羽やレインコートでもいいので、直接風を通さない上着を身に着けましょう。

 適切な防寒着がない場合、ゴミ袋に頭と腕を通す穴を開けて、頭からすっぽりと着込むように被り、その上から服や上着を着ると風を通さず寒さを凌ぐ役に立ちます。

 ビニール袋をというのがコツです。

 ビニール袋以外でも、新聞紙やチラシ、レジ袋やお菓子の包装など内側に仕込めるものならなんでも良いのです。その場にあるもので賄うという発想の柔軟性を持っておきましょう。


 ○ ジッパー付き袋の再利用


 ちょっとおもしろい投稿を見つけましたので、ご覧になって見て下さい。

 https://x.com/MPD_bousai/status/1658245876597260291

(Xにページ移動します)


 ○ ロープワーク


 防災用品の中で、実は役に立たなかったと言われることも多いロープ。

 太いロープでいわゆる、救助用に持っておくと良い、という解説も見かけますが素人が実際にロープを使った救助をすることは危険でもありますので、本当の緊急時以外は止めたほうが無難です。

 それよりも、ハサミで切れる程度の太さのロープを用意しておいて、色んな物を固定したり物干し用に渡したりするという用途に向けたほうが役に立ちます。

 テントやタープは風に対して非常に脆弱です。テント設営の際には、過剰なくらいロープで補強しておくことを忘れないようにしましょう。

 物干しなどの際に、ロープを弛み無く強く張るにはコツが要ります。

 『トラッカーズヒッチ』という結び方を覚えておくといざという時重宝しますので、覚えておくとよいでしょう。


 ○ 車は常にバックで駐車、これならすぐ発進


 本当に些細なことと思われるでしょうが、東日本大震災の津波から逃げる際、車をバックで駐車しているか、前から突っ込んで停めているかで明暗が分かれた例が実際にありました。

 車を前向きに駐車しているか後ろ向きかで、発進態勢を整えるまでの時間が5~10秒ほど違います。

 たかが数秒、しかし映像をみればわかる通り、その数秒が生死を分けるのです。

 ほんの些細な心がけが生存率を変える、災害対策とはそんな些細な積み重ねなのです。


 ○ ハエ取り器


 夏場はハエが大量発生する場合があります。衛生状況の悪化にもつながりますので、ハエ取り器を作って駆除しましょう。

 大きめのペットボトルに、日本酒70cc、酢50cc、砂糖大さじ2杯程度を入れてよく振って溶かし、ボトルの中央より上側に3cm角程度の穴を数か所開けて吊るしておくと蝿を捕獲できます。



 ○ タスカルフラワー


 普段はインテリア造花として飾っておいて、いざというときに防災用品に早変わり。株式会社・岩や様の面白いアイデア商品です、一度ご覧になってみてください。これを参考にご自分で作ってみても面白いかも。



 ○ バイテクバイオエースを使った、野営トイレの設置


 最後は、災害時に一番困ると思われるトイレの問題について。

 少し手間がかかりますし場所や環境的要件も難しくなりますが、いざというときのために覚えておくと参考になるかもしれません。

 少し市街地に近い地域で下水道が破損してトイレが使えないときに、庭に穴を掘って乗り切った、というお話を知人から聞いたことがありました。

 少人数短期間なら、単純に穴を掘って済ませるという方法でも良いのでしょうが、やはり埋めた場所のというのは気になることでしょう。


 今回ご紹介するのは、バイテクバイオエースという農業資材を利用したコンポスト型トイレのご紹介。

 適当な深さの穴を掘り、周囲にある草を刈り取ったもの(刈り取った後乾燥させておくとなお良いでしょう)を敷いて、その上に米ぬかを少々ふりかけておきます。

 そこに、排泄を行い上に再び草と米ぬかをふりかけ、更に上から『バイテクバイオエース』を少々ふりかけます。後は上から排泄物が見えなくなる程度にさっと土を振りかけておけば、さらにトイレとして利用できます。

 肝要となるのは、土、干し草、米ぬか、排泄物、のサンドイッチ構造を崩さないようにかぶせていくことです(土をかけすぎない事)。そして、一層毎に『バイオエース』をふりかけておくと、発酵具合にもよりますが一週間程度で有機物は半分以下に分解されます。


 この『バイテクバイオエース』(サカタのタネ、パセリー菜ブランドも有り)とは、微生物を利用した肥料の一種で有機物の分解に特化しているものです。上記のサンドイッチ構造の中に生ゴミを混ぜても一緒に分解してくれます(水分はなるべく少なくして混ぜましょう)。避難生活中に発生する有機系のゴミはここに混ぜ込んで分解させることも出来ます(おむつなどに含まれる事がある化学繊維やビニル系のものは混入しないようにしましょう)。

 米ぬかは、微生物の餌となるものです。発酵を促進する効果がありますが水分を良く吸収してしまうので多く混ぜすぎると水分を吸いすぎてべちゃべちゃした培地になり微生物が働けなくなってしまいます。少量混ぜる程度にしておきましょう(米ぬかが手に入らない場合はバイオエースの量を増やすとよいでしょう)。

 重要なのは、雑草などの草、乾いた植物性のものです。これがコンポスト培地の基材となります。

 周辺に刈り取って集められるほどの草が生えている場合は有効な材料になります。もし、草がない場合は枯れ葉やおがくず、木質ペレットなどを入手して混ぜ込むことになります。かならず、生ゴミ・排泄物<基材(草、おがくず)の配分になるように混ぜ込んでください。


 注意する点としては、雨で穴の内容物が流出しないようにシートなどで簡易的にでも屋根を作っておくことです。流出しない程度の雨ならかかっても大丈夫です。

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