第20話 『2次避難』長期戦~地域の特性を理解する

 今回は、物品の個別解説と補足説明をしたいと思います。

 記載内容は一般的なものにとどめてありますので、これらを参考にご自分の環境に合った備蓄を考えてください。


 ◎ 飲料水 (調理用含めて一人一日3リットル、最低3日分)、各種用水


 まず、生命線となる飲料水の確保を確実にしてください。ごく短期間ならお茶やペットボトル飲料で代用することもできますが、体調維持にはやはり真水が重要になります。市販の水は長期間経過すると内容量や品質に変化を生じます(市販のペットボトルは完全気密ではないのです)。水に関してもローリング備蓄に含めて定期的に入れ替えるか、備蓄用の特別なペットボトルに封入された長期保存仕様というものもありますので、検討の上備蓄後も定期的に確認しましょう。

 バケツやタライなどに貯め置きした水は、飲料には適しません。別途、浄水器を通した上で煮沸するなどして食中毒に注意しましょう。

 そのほか、身体を清拭したりトイレに流すための水も別に必要となります。浴槽に水をためておいたりして、使い水の確保もしておきましょう。


 ◎ 非常食 (飴玉、乾パン、缶詰、ブロック栄養食品など、そのままで食べれるものを3日分程度)


 これは、1次避難のときに手軽に食べられるものの延長で考えます。お湯や、火の準備ができなくても食べられる手軽な構成で準備します。災害直後は例え自宅であってもインフラの途絶や、余震の脅威があります。すぐに火が使える状況にはなり得ないことが多いですので、1次避難用を含めて3日分程度は用意したほうが良いでしょう。


 ○ 保存食 アルファ化米、パックご飯、切り餅、インスタント食品(インスタント麺、カップ麺、乾麺、早茹で乾パスタなど)、レトルト食品(加熱できるもの)、魚缶詰、果物缶詰、野菜ジュース、フリーズドライ味噌汁、スープ缶詰など救援物資が到着するまで食べる常用食を1週間分程度


 こちらが、自宅避難での主役となる食料です。状況が見えてきたなら、自宅環境と周辺環境を考慮して食品の温めなども始めましょう。温かい食べ物は体温を維持し、気持ちもほぐしてくれます。特に、お年寄りのいる場合は早めに温かい食事が取れる態勢を整えることが重要です。温めにはカセットコンロが活躍しますので食品と併せて必ず準備しておきましょう。


 アルファ化米とは、パックご飯と違い水でも戻すことができるご飯です。長期保存にも適しており、防災備蓄での必需品とも言えるものです。可能なら、お湯を沸かして温かいご飯として戻すこともできます。


 パックご飯は、「サトウのご飯」などに代表されるパック入りのご飯で、手軽で美味しく食べられるのが特徴です。ただし、電子レンジが使えない場合は湯煎で戻す必要があります。比較的時間がかかります(レンジ2分、湯煎だと15分以上)ので、カセットコンロの予備ボンベに余裕が無い場合などは調理時間にも注意しましょう。(こちらは発電機などがある場合、薪ストーブなどの熱源が確保できる場合の環境で役に立ちます)

 また、アルファ化米に比べ保存期間が短い(アルファ化米5年、パックご飯1年)ことも多いですので、これもローリング備蓄で定期的に入れ替えるか長期保存仕様の包装の物を選ぶようにしましょう。どちらも定期的に消費期限の確認を忘れずに。


 意外と役に立つのが、切り餅です。保存期間も比較的長く(1年から2年程度)お正月に食べきれなかった分が残っていることも多いかもしれません。ならば備蓄食に組み入れてしまいましょう。普段食べずとも保存用に持っておくと、意外な出番があるかもしれません。また、少ない量でカロリーも多いのが特徴です。直火式のストーブがある環境なら、アルミホイルに乗せて温めることができます。


 各種インスタント食品は、お湯が沸かせる状況なら温かい食事ができますので非常に有用です。注意が必要な点として、一般的なカップ麺はパックご飯よりも消費期限が短いということが挙げられます。こちらも同様にローリング備蓄に組み入れ、常に新しいものに更新しておきましょう。


 缶詰類は保存食品の代表格です。最近では缶切りの要らないものがほとんどですが、念の為缶切りも合ったほうが良いでしょう。

 一般的な水産缶詰の他に、焼き鳥やコンビーフ、ソーセージなどもあります。また、カレーやデミグラスソースなど調理済みのものなどもありますので、食事に変化をつけるためにも何種類か持っておくとよいでしょう。

 また、果物の缶詰は普段食べない方もいるかも知れませんが、避難生活中には貴重な甘味とビタミン源になり得ます。子どものいる家庭の場合には何種類か用意しておくと、避難中の食事の彩りとなりますのでご検討ください。

 避難生活中は、食事バランスが崩れることがあらかじめよそうされます。特に、野菜類は接種が困難になりますので、缶入りの野菜ジュースや100%ジュースなどを織り交ぜ、栄養バランスにも留意してください。


 レトルト食品も備蓄食料として適しています。概ね1年程度の品質保持期限が設けあられておりますので、適宜更新しながら備蓄してください。

 アルミを蒸着した包装材の場合は上記のとおりですが、最近の電子レンジで直接温められるフィルム包装タイプは品質保持期限が短いこともあります。また、加熱後は未開封であっても再保存はできません。備蓄に適しているかどうかは、個別に確認してください。


 フリーズドライの味噌汁は、お湯を注ぐだけで美味しい味噌汁が出来ます。避難生活が長引くとカップ麺ばかりで辛くなることもありますので、少量でも織り交ぜておくことをお勧めいたします。


 行動の制限される避難生活中は、食事が貴重な娯楽の時間ともなり得ますので、なるべく種類を豊富にして気持ちを高めるものにしておきましょう。



 ◎ 衛生用品、外用薬品(傷薬、消毒薬、絆創膏、三角巾、包帯、ガーゼ、テープ)

 これらは、1次品目にも含まれたものになります。持ち出し用とは別に用意しておくと、防災用品の詰め直しが要らなくなります。消毒薬等は使用期限にも注意しましょう。


 ○ ビタミン錠剤、各種サプリメント、内服薬(痛み止め、胃薬、便秘薬等)

 長引く避難生活で、体調を崩す可能性は考慮する必要があります。特に災害時は、病院での軽症者の受け入れは出来ないことがほとんどです。家庭の常備薬等で乗り切る必要も出てきますので、なるべく手広く用意しておきましょう。

 また、食事バランスの悪化から体調に影響が出る恐れもあります。体力の低下は感染症や各種抵抗力の低下にも繋がります。ビタミン錠剤やサプリメントなども活用して、体調維持に努めましょう。


 ◎ 歯磨きセット

 こちらも1次品目と同じものです。


 ◎ 懐中電灯(予備用も含む)

 避難行動のほか、家の中でも使用する事を前提として家族分用意できると安心です。電池も多めに用意しておきましょう。手持ちのタイプのほか、ランタン型や壁掛け型等があると、食事時の照明やお部屋の明かりとして重宝します。

 作業用の充電式照明灯は、明るいので夜間の緊急時の作業に活躍します。可能なら用意しておくのもいいでしょう。


 ◎ 現金(公衆電話用に10円、100円玉も)

 こちらも1次品目と同じものです。一万円札だけですと、使い勝手が悪い場合がありますので、小銭も用意しておきましょう。停電時にはレジが止まることが予想されます。電子マネーなどは使えない場合がありますので現金は必ず用意しておきましょう。店側のお釣り軽減のために、小銭もご用意ください。


 ○ カセットコンロ、ボンベ、鍋

 避難生活中の食事の要となるアイテムです。もちろん火事には注意しましょう。室内で使う場合は換気も必要です。

 温かい食事は、冬期の体温維持にも役立ち免疫力向上にも寄与します。また、衛生状態の悪化は避けられませんので、食中毒予防の意味でも可能な限り加熱したものを食べるように心がけてください。予備のボンベは多めに用意しておきましょう。


 ◎ モバイルバッテリー、予備バッテリー、電源タップ、充電用コード

 避難中の情報収集は大切です。スマホなどの情報端末の電池切れは死活問題ですので、必ず充電できる準備をしておきましょう。電源タップと充電コードは、充電ステーションが開設された場合に順番待ちを避けられます。一人で電源を専有するのは避け、多口タップに通して使うようにしましょう。


 ○ 給水用タンク(折りたたみのできる袋状のタンクもあります)

 給水車が用意された場合に、タンクがないと水を自宅まで持ち帰る手段がありません。必ず用意しておきましょう。災害時用に、折りたたみのできる袋型の水パックもあります。ただし、水は1Lで1kgです。量が増えるとそれだけ重くなりますので、移動距離と体力を考慮して適切なサイズを選んでください。20Lタイプはとても重いので、小さめのものを2つ用意するなどして分散したほうが良いでしょう。リュックのような背負い型の物もありますのでご検討ください。


 ◎ 簡易トイレ

 災害時は、下水道が寸断される場合があります。特に、上水道が生きていても下水道が使えないという場合は大変な困難が予想されます。

 家族の人数と使用回数を熟慮し、とにかく多めに用意しておきましょう。処理用に厚手の不透明なゴミ袋も必要になります。

 それから、いざという時に戸惑ったり使用方法がわからないということのないよう、平時に一度実際に使ってみて確認をしておいてください。


 ◎ ティシュペーパー、トイレットペーパー

 普段使っているもので大丈夫です。ただし、備蓄用はビニール袋などに包んで水に濡れないようにしておきましょう。


 ◎ ウェットティッシュ

 水の使えない場合などに重宝します。


 ○ タオル

 あらゆる用途に応用が利きます。多めに準備しておきましょう。


 ◎ ヘルメット、作業用帽子

 避難時の他にも、自宅に戻り物資を取り出す際、片付けの際や救難時にも使われます。必ず人数分用意しておきましょう。直射日光は熱中症の危険が大きいので帽子も用意しておきましょう。


 ◎ ポリ袋(大小あわせて多めに、不透明の中が見えないものも併せて用意)

 とにかく、使い捨ての道具が多くなります。いつも以上にゴミが発生しますので、多めに用意して起きましょう。また、すぐ処理できない状況も考え、普段使っているものより厚手のものがあると便利です。レジ袋のようなものでも重宝しますので用意しておきましょう。


 ○ ダンボール、ビニールシート(レジャーシートのようなものでも可)

 屋外で行動することが多くなります。地べたに物を置かずに済みますので、敷物として用意しておくと便利です。


 ○ 衣類

 季節に合わせて、何着か用意しましょう。下着類は多めに。


 ○ 毛布

 防寒対策として必要です。


 ○ 湯たんぽ、カバー

 冬季の就寝時にあると非常に便利です。翌朝は中のお湯を使って洗顔等に使うとよいでしょう。そのまま触れるとやけどをしますので、必ず専用のカバーを使ってください。


 ○ 食器類(紙・ステンレス等の割れにくいもの)

 陶磁器の食器は地震時に割れてしまうことがありますので、割れにくい食器を必ず用意しておきましょう。


 ○ ラップ(食器に巻いて用いると洗わずに済むので水の節約になります)

 サランラップなどのラップは、食器に巻いて洗浄の代わりにしたり、傷の応急処置に使ったり防水用途にもなります。用意しておくと便利です。


 ○ 石鹸

 水が使えるようになったら、手洗いを励行しましょう。災害時に感染症が発生すると対処ができないことがあります。各自の心がけで注意しましょう。


 ○ 工具類(バール、ジャッキ、ドライバー、ニッパー、ペンチなど)

 バールは、開かないドアをこじ開ける際に使用したり、倒れた家具をどかしたり、壁を破砕したりと様々な対処ができます。長いほうが便利ですので少し大きめ(1m位の長さ)のものを用意しましょう。ジャッキは油圧ジャッキがあると便利です。

 そのほか、工具類は何かと必要になりますので、取り出しやすい場所に用意しておくことが大切です。


 ○ テント、タープ、折り畳み椅子

 余震の心配がある場合、屋内に留まることが困難な場合があります。その際、避難所であっても視線を遮る個室が確保できるとストレス軽減に寄与します。簡易トイレを使う場合にもあると便利です。キャンプ用品の延長で良いと思いますので、準備しておくと助かります。タープと椅子があると、屋外作業時の拠点としても活躍します。


 ○ ブルーシート、ロープ

 家屋の破損箇所の応急手当に必須になります。その他、屋外に運び出した物品を雨ざらしにせずに済みますので必ず用意しておきましょう。シートだけだと風に飛ばされますので、必ずロープも一緒に用意してください。

 樹木の間に張って、簡易天幕としても使えます。とにかく応用が利き、必須にもなりますので必ず用意しておきましょう。


 ○ 長靴

 洪水時、津波の後、などは普通の靴では移動が困難になります。必ず用意しておきましょう。


 ○ 地図

 防災マップは、避難所間の移動のほか安全な移動ルートの確認にも使います。最新のものを用意しておきましょう。


 ○ ボルトクリッパ

 両手で使う、大型のニッパーのような工具です。

 これは、各家庭に一つ用意するものではないかもしれませんが、東日本大震災時に於いての津波からの避難の際に、敷地を隔てるフェンスを切断して避難ルートを確保した実例が報告されています。ペンチやニッパーでは、切断しきれないような場合でもこれがあれば切り開ける場合があります。一次品目への組み入れも考慮しつつ検討の余地がある道具となります。ご近所で話し合って、誰か一人でも持っているといざという時に役に立ちます。


 ○ 発電機

 これがあると、携帯端末の充電などに重宝します。近所同士で一つあると非常に助かります。地域の防災品目としての導入も検討してみてください。


 ○ 石油ストーブ(ポータブル)

 余震に留意しつつ使用できるなら、暖房と同時に簡単な調理もできます。電源の要らないタイプが一つあるといざというときに役立ちます。灯油の入れっぱなしで年を越えた燃料は変質していますので、必ず使用後は燃料を抜いて保管してください。


 ○ 燃料用タンク

 灯油タンクの他に、発電機がある場合はガソリン専用のタンクも必要となります。ポリタンクにガソリンは入れられませんので、必ず金属製の専用品を使ってください。

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