第8話 災害時の車~便利で悩ましいあれこれ
わたしの住んでいる地域は、一人一台が当たり前という非常に車の所有率が高い場所柄です。我が家でももちろん一人一台、都合四台所有しております。
都市部に住む人からすると、「そんな馬鹿な」と言われそうですが、決して珍しいことではありません。地域によっては所有率が100%を超えている(一人一台以上所有している)ところもあるそうです。
その代わり、と言ってはなんですがいわゆる都市部の人が想像する高級外車はほぼ見かけません。ぶっちゃけ二台に一台は軽トラックなんじゃないかとさえ思いますw
軽自動車比率も非常に高く、おそらく半数以上が軽自動車であることは間違いないでしょう。逆に、昔ながらの4ドアセダン等はほぼ見かけません。自動車事情も、だいぶ世知辛いものになってきている昨今であります。
さて、自動車による避難……というテーマを取り上げたいと常々思っていたのですが、これに関しては防災の専門家の方々でもまだはっきりとした見解を示せていないのが実情です。やはり基本的には、徒歩で避難。道路は緊急車両のために解放する、という大前提は動かし難いものだと思われます。
近年、自治体によっては自動車避難も容認する、という方針を出し始めているところも幾つか見られます。なぜ、あえて禁忌とされていた自動車避難に踏み切るのか。それはやはり、避難生活が長期化した際に車が有ると無いとでは雲泥の差があるということに尽きるでしょう。現実問題として、避難所までの距離がありすぎる、という点も無視できるものではありません。
※当記事は、自動車避難を推奨するものではありません。自治体の指導や状況に応じた行動を取ることを前提とし、無理な自動車運用は避けましょう。
今回は、自動車の役割という部分から簡単なお話に留めたいと思います。
避難所での暮らしが長引くにつれて、就寝場所に段ボールによる間仕切りが乱立していく様子をご覧になった方も多いことと思います。
避難所での一番のストレス要因はずばり、プライバシー空間の欠如。
床が硬い、ご飯の選択肢がない、トイレが不便、お風呂に入れない。
どれも切実な問題ですが、こと人間のストレス要因は他者によって発生することが知られています。三日くらいなら我慢できるかもしれませんが、「三日が限界」ということでもあります。逆説的に、プライバシー空間さえ保たれているならば、ある程度の不便は乗り切れるということでもあります。
危険を承知で自宅避難に拘る人が多いのには、この要因が影響していることでしょう。たとえ電気が無くても食べ物が乏しくても、自分ひとりでいられる空間が確保できている、これに勝るメリットは無いのです。
特に、女性にとっては死活問題。
あまり、記したい内容ではありませんが避難所であっても女性に纏わるトラブルや被害というものも報告されております。ストレスの平均値が上がってくると、異常行動を起こす輩の発生というのも無視はできません。
避難所であっても、可能な限り男女分けや家族単位でのパーテーションの確立は求められると思います。
さて、安全な駐車帯があるならば自動車の存在は利点だらけです。
車はそれだけで個室の役割をある程度果たしてくれます。燃料が続く限りは、暖房冷房、果ては少々の発電までもこなしてくれます。季節によっては生命線にもなりうるでしょう。すし詰めの避難所よりは、快適性も高いかもしれません。
建物内は余震が怖いので車に寝泊まりする、というお話も多く聞かれました。
車は、寝室であり個室でありシェルターにもなりうるのです。
かくいう私の実体験でも、車があるからこそ移動の自由が確保できている、生命が担保されていると感じる場面は多々ありました。
車必須の地方にお住まいの方にとっては釈迦に説法でしょうが、車の燃料は常に意識し半分くらいになったら常に満タン給油。その他、車内に雨合羽と軍手くらいは常備しているという人も多いでしょうか。
山間部にお住まいで、常に車が使える土地柄なら車の中にある程度の道具を常備しておくというのも一つの選択肢になるかもしれません(積み過ぎに注意です)。車一つ生き残っていればなんとかなる、というケースは多い事と思います。
一方で、慣れない人は車内でずっと過ごすという事が苦痛にもなり得ます。
基本的に、極寒・酷暑以外なら、就寝時以外は車外で過ごすことを前提とし、座りっぱなし、寝たまま、と云う状況は避けるべきです。車は便利ですが、それ一つで完結しようとすると様々な問題が起こり得ます。
2004年の新潟県中越地震の際に、車中泊による避難者が数多く発生しましたが、その際に注目されることになったのが「静脈血栓塞栓症」いわゆる「エコノミークラス症候群」です。これは、長時間同じ姿勢で着座していると起こりやすくなるもので、血流が滞ることにより主に下肢静脈内に血栓が発生し、血流を阻害してしまう症状のことです。
当地震は、本震後も余震とみられる地震が長期間にわたって発生しており、建物内を恐れる人が数多く車中泊を選択しておりました。地震が長期化したことにより、必然的に車中泊の期間も長期化、前述の症状に見舞われる人が多数発生することになりました。
日中は、なるべく何かしらの作業をするなどして身体を動かし、車内に留まる時間を短くするのが望ましい、と言われております。最低でも1時間に一度は、車外に出て体をほぐすストレッチ体操などを行いましょう。
空間的余裕があるなら、キャンプ時のようにテントやタープを併設するなどして、足を伸ばして横になれる空間を確保することが重要です。いざとなったら、車のシートを外してしまうという選択肢も考えられるかもしれません(私は外しましたw)。
前話でも触れましたが、キャンプや車中泊はいざという時の災害時の予行演習にもなり得ます。頭で理解しているのと実際にやってみたことがあるのとでは、理解の度合いに天と地ほどの差があります。可能なら、お子様と一緒に試しておくのもいいと思います。
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