第6話 揺れる大地のこぼれ話~三鉄編

 東日本大震災の時のお話をひとつ。


 皆さんは『三陸鉄道』をご存じでしょうか?

 三陸海岸を縫うように走る、日本最大の第三セクター鉄道です。


 この路線で使用されている車両はいわゆるディーゼルカーで電車ではないのですが、地震発生時にはこの特性が遺憾なく発揮されました。


 地震発生時、三鉄では二本の車両が運行中でした。直ちに停止した三鉄車両は本社と連絡を取り、安全な場所にて待機を余儀なくされます。その際、停止した車両、識別名213D(南リアス線さかり駅発釜石行き)は大船渡市と釜石市の境の吉浜駅~唐丹とうに駅間の鍬台くわだいトンネル内、識別名116D(北リアス線久慈駅発宮古行き)は普代ふだい村の白井海岸駅~普代駅間の山中で、それぞれ停止しました。

 無線にて運行指令室と連絡が通じ、停車位置を把握。その場所は安全であることが確認されたため当該位置にて待機、移動しないようにと指示を受けていました。

 その後、沿線には津波が襲来、停電の発生とともに通信ケーブルの途絶があり、運行指令室との連絡ができなくなってしまいます。

 最後に受けた指示では、停車位置は高台であり津波の恐れもなく安全であることが確認されています。外は寒く雪もちらついていたため、乗客には外に出ずに車内に留まるよう指示、乗客もそれに従いました。

 各所で断線や停電が起こっていたためCTC制御(列車集中制御装置)による運行は出来ませんでしたが、213Dは運転士の判断でトンネルから出るための徐行を開始。その後、線路沿いにある吉浜の民宿で三陸沿岸が大津波で壊滅的な被害を受けたという情報を得、その後乗客2名と共に懐中電灯の明かりを頼りに1.4kmほど歩いて無事帰着することが出来ました。

 一方の116Dでは、災害優先携帯電話を使用(前年に導入されていた)し消防へ救援を要請。しかし、盛岡の消防本部も直近の久慈や普代の消防も通信が混乱を極めており夕刻7時半頃になってようやく車による救援が到着、無事に乗客15名を救助することが出来ました。

 

 普通の電車の場合ですと、停電になった時点で何もできなくなってしまいますが、ディーゼル車両は、文字通り車体にディーゼルエンジンを搭載しており燃料がある限り自立運転が可能なのです。車内では発電と暖房が効くため、その後この車両は臨時の現地災害対策本部としても使用され、大活躍しました。


 牧歌的でローカル線の代名詞みたいな車両ですが、いざというときには頼りになる能力を持っています。


 ちなみにこの、のどかな車両。見た目とは違って結構お高いですw

 新幹線車両がだいたい1両1億5518万円くらい(グリーン車はもっと高い)なのですが、なんとこのディーゼル車、一両1億6543万円ほどするそうです。新幹線より高いっ!

 たぶん一番安いであろうガスタービンヘリコプターである、ロビンソンR66とだいたい同じくらい(1億6500万円くらい)と言えばわかりやすいでしょうか。(←わからんて)

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