第5話 その避難経路、本当に安全ですか?~歩いておこう
「ご自宅から最も近い避難所の場所、分かりますか?」
この質問には、大抵の人がYESと答えられるでしょう。
では、
「その避難所まで、実際に歩いてみたことありますか?」
この質問に自信を持ってYESと答えられる人はどれだけいるでしょうか?
先日、我が村で防災マップ(ハザードマップ)なるものが各戸配布されたのですが、私の住んでいる地区の避難所は、事もあろうに洪水時の浸水予想地域に位置しているのです。
事前にちゃんと確認しておかないと、そんな安全かどうかもわからない場所に避難させられるということにもなりかねません。皆さんも防災マップを確認して、本当にその避難場所が安全か、災害の種類によっては別な場所か或いは自宅に留まる、ということまでも選択肢として考えておくなど、ご家族内でも良く話し合っておいてください。大規模災害の時の集合場所や、連絡手段の共有も重要になります。
平成三陸大津波(東日本大震災)でも、避難所によって明暗が分かれるという事実がありました。当時設定されていた平野部に設けられた小高い盛塚のような津波避難場所は多くが津波に呑まれ人命が失われることになりました。他にも、避難所に設定されていた地域センターの海抜が低く安全ではなかった例も見受けられます。
例え避難所であっても慢心せず、より安全な方へと更なる避難を行うということを忘れずに。非常時には、自身の安全は自分で見極めなければならないのです。
当然これらは、行政側でしっかりと安全性を担保するべき案件ではあります。ですが、いざ災害時には行政がさほど役に立たないという事は実際に被災した人たちからすれば身に染みて分かっていることでもあると思います。
私の村の防災マップが良い例です(自嘲)
誰かのせいにして本質が解決するなら、いくらでも責任を押し付けますが、事は自分と家族の命に関わること。被害に遭った後に、行政を恨んで生きる様なことにならないためにも、避難所と避難経路はしっかりと自分の目と足で確認しておくべき事だと思います。
───普段通勤などで毎日通っている場所だとしても、実際に自分の足で歩いてみると意外なことに気づくはずです。車で移動している人でも、できれば実際に自分の足で歩いておくことをお勧めいたします───
側溝が思っていたより深かったり、普通の道路だと思ったら下に川が流れていたり。マンホールの場所や、グレーチング(金属製の網蓋、側溝の蓋に使われている)の位置なども確認しておくと、いざというとき配慮できます。
洪水時はなるべく、橋や川沿い、用水路の脇や崩れやすい斜面などを避け、より安全なルートでの避難を心がけてください。
それから、避難所まで歩くとどのくらいの時間がかかるのか、という部分も重要です。
津波の想定される地域の場合、直近ではなく遠くにある避難所の方が安全に移動できるというケースもあります。最寄りの津波避難タワーには物資が乏しいという状況も考えられます。洪水や津波の場合、間違いなく長期戦になるということも頭の隅に置いておかなければなりません。可能なら洪水の起こっていない地域まで移動するということも想定に入れるべきかもしれません。
※車での避難については、別な回にて言及したいと思っております。
最短が必ずしも最善ではない場合もありますので、避難経路、移動時間と津波到達予想時間との兼ね合い、家族構成による避難所との相性なども知っておくといいでしょう。広い避難所は物資が集まりやすいですが、反面、避難者数も多くなりがちで子供やお年寄りがいる場合は配慮が必要になる可能性もあります。
………………………
冒頭で、我が地区の避難場所の不備について記しましたが、実際のところ、そこに避難するような人は我が地区では皆無です。
何故なら、そこが自宅より安全ではないということを地区の全員が理解できているからです。(意味のない避難場所という点では不備のままですが)
我が地区では、定期的に清掃活動や草刈りが実施されており、基本的には地区の全員が参加します。
そのため、自分の住んでいる地区の地形や川の状態、用水路の深さや脆弱な場所等を日々の活動を通じて熟知しているのです。
併せて、各家の顔を全ての人が把握しています。これは、軽視できない田舎の強みでもあります。都市部ではこのようなコミューン的形態は失われているのかもしれません。
災害時の初動は、地域住民のコミュニティが頼りになる部分です。
そして、初動こそが命を守る最も重要な部分でもあります。
日頃より近所付き合いを行い、お互いに助け合える状態にしておくことが、防災には求められるのかも知れません。
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