第3話 あると便利?な発電機~あの日の夜の思い出

 災害の事を書くなら、この話題を避けるわけにはいかないと思うので、簡単ではありますがここに書き留めておきたいと思います。


 平成23年(2011年)3月11日に起こった東日本大震災。

 災害の一次的原因が地震であり、それによっても被害は発生していますのでこれは致し方ないとは思うのですが、『東日本大震災』という名称に関してはいささか違和感を覚えます。

 亡くなった方への配慮に欠けている、とお思いの方いらっしゃいましたらコメント欄にてご批判ください。


※ちなみに「東日本大震災」は、政府が付けた災害の呼称

※「東北地方太平洋沖地震」は気象庁が地震の呼称として付けたもの


 東京でも死者を出したこの災害、当然すべての地域に配慮すべきではありましょうが、やはりこの災害の本質は『津波』にあると思うのです。現に、殆どの死者行方不明者は津波によって発生しています。そのため、震災という名で呼び習わすことには災害の本質を見誤ることにもなるのではないかという懸念が、私の中にはずっとあります。『平成三陸大津波』という名称も、どこかしらできちんと明記していただきたいと思うのはわたしだけではないと願いたいものです。


 ………………………


 あの日、幸いにして我が家は全員の安否をすぐ確認でき自宅で合流もできたので、やれやれと日が暮れる前に夜を明かす支度を始めたのを覚えております。

 食べるものに関しては、ありあわせのものとお湯を注いで作れるもので済ませることにし、薪ストーブにてお湯を沸かし身体を拭き清めて足を洗い、お風呂の代わりにしました。


 日が暮れて辺りが暗くなる間際、隣の家の一人暮らしのおばあちゃんが我が家を訪ねてきました。

「テレビ、見せでくだせぇ」

 そう言って。

 停電になっているため、いつも習慣として見ていたテレビが見られず、さりとて寝るにはまだ早い、と困っていたところ、隣の家(←我が家ね)に明かりがついているというのに気づいて訪ねてきたそうです。ちょうどその時、ガス代の集金の人がたまたま家に来ていたタイミングだったので、その方にも声をかけて一緒に家に上がってもらったことがありました。


 我が家には、インバーター内蔵式の発電機がありまして、電子機器なども含め(テレビ、パソコンもOK)一応使うことが出来ます。父が、テレビくらいは見たいだろう、と言って簡易的な配線をしてくれました。

 そうこうしているうちに、近所のおじいちゃんやおばあちゃんが何人かうちに集まってきました。暗闇で一軒だけ明かりがついているのを見て、あの家には電気がある、という事に気づいたそうです。


 テレビを付けたところ、件の……上空から見た仙台平野に真っ黒な津波が押し寄せていく映像が映し出されたのを鮮明におぼえております。それを見た全員が、あぁ……、というなんとも言えないうめきを漏らすことしか出来ませんでした。

 映像情報というのはやはり強烈で、これが歴史に残る大災害になるということを、誰もが直感で感じ取り疑うことはありませんでした。


 それから一時間ほど、みんなでテレビを見てから近所の人は帰って行きました。困ったことがあったら言ってくださいと伝え、その日はそれぞれ就寝となりました。

 おそらく、一日二日での復旧は不可能だろう。この先一ヶ月程度は間違いなくインフラはストップする、そのつもりで覚悟を決め明日からの暮らしを考えました。

 深夜、東京の親戚にやっと電話が繋がり、安否確認を済ませ今後についての話をしてから電話を切りました。こちらに避難してくるかもという予想もあったのですが、幸いにして親戚宅は被害もないということでとりあえず様子見ということでした。


 ○ 発電機


 うちにあった発電機は、1500wのガソリン発電機で大抵の家電は駆動させることが出来ます。ちなみに、起動電力という考え方がありまして、例えば500wの消費電力の家電を動かす際に、500wの発電機で良いかというと答えはNoです。

 ざっくりとですが500wの家電の場合、始動する時だけは倍の1000w必要になると考えるとわかりやすいでしょう。容量が間に合っているのに何故かブレーカーが作動して上手く使えない、という話をよく耳にしますがそれはこういう理屈なのです。

 逆に、携帯電話などの充電に使えれば良いというのであれば500w程度の発電機でも充分賄えます。家電をしっかりと運用するつもりなら、なるべく容量の大きな発電機を選ぶことをお勧めいたします。


 さて、最近ではガソリン発電機の他にカセットコンロ用のガスボンベ(スプレー缶みたいなやつ)で運転できる発電機も普通に見かけるようになりました。


 当然ながら、発電機は燃料が無ければ動かすことは出来ません。


 これは、地域性や住んでいる場所、建物の形態にもよるのでしょうが、集合住宅などではたぶん使うのは難しいと思われます。というのも、発電機は「音が結構大きい」のです。そのため、隣近所で融通し合って動かす場合などはいいのでしょうが、自分が使いたいからといって好き勝手に動かしていると苦情が来る恐れがあります。排気ガスの問題もありますので、もちろん屋外でなければ使えません。マンションのベランダなどでは難しいかもしれませんね。

 そして、普段車を使っている人や地域などでは問題ないかもしれませんが、都市部で車が必要ない暮らしの場合、家にガソリンを常備しているということも考えにくいと思います。その場合は、前述のカセットボンベ式の発電機が選択肢として上がってくるでしょう。反対に、地方や田舎の方で車が必須の地域でしたらおそらくガソリン式のほうが有利だと思います。このへんは、実機や実例などを検索して自分の生活スタイルに合った機種をお選びください。


 この発電機に関しましては、人によっては全く必要ないという考えもありますし、必須という考えもあるかと思います。

 都市部でしたら、地域センターや役所、そのほか公的機関にて携帯電話の充電サービスが受けられるケースも多いとは思いますが、仮に充電が切れると現実問題として重要な情報(充電箇所に関する情報までも)が得られないという死活問題にぶつかることになります。インフラが完全に停止している地区の場合、一週間ほども給電が受けられないということもありえます。乾電池式の充電器もありますが、あまり長期間向きではありません。現代においては、携帯端末の使用は不可欠になりつつあります。

 食べ物の備蓄に合わせて、携帯機器の充電方法も検討課題に挙げておいたほうが良いでしょう。


 さて、なぜうちに発電機があるのかと言いますと……。


 うちは前述の通り、薪ストーブと井戸で災害時も大丈夫と言いましたが、それには「発電機が使える場合」という前提があります。

 薪ストーブはもちろん電気無しで動きますが、井戸に関しては電動ポンプで汲み上げているのです。すなわち「停電になると水が出ない」という弱点があるのです。他所だと、手動ポンプ(レバーを人力でがっちゃんがっちゃんと動かして汲み上げるもの。『となりのトトロ』の冒頭でサツキとメイが使っている場面がありますね)を併用しているご家庭もありますが、残念ながらうちの手動ポンプは以前、竜巻で引きちぎられてしまってそれっきりなのです。

 半日程度なら、汲み置きした水でなんとかなりますが、数日に渡る場合は結構な不便を強いられます。

 実際に何度か、バケツにロープを付けて「釣瓶つるべ」で汲んでみたのですが、これはけっこう大変でした。実際にやってみれば分かるのですが、ポリバケツの釣瓶というのはのですよね。ロープが取っ手に付いていることも相まって、バケツは底を下に向けてプカプカと浮いているだけでちっとも水を取り込んでくれません。(バケツを逆さに向けて投げ落とすという、妙なテクニックを要しますw)そして、深い井戸から人力で水の入ったバケツを引き上げるのは、か弱い女性や高齢者には無理でしょう。これはとても不便でした。

 なので、普段は停電になると発電機をポンプに繋いで水だけはいつでも使えるようにしてあります。


 このような事情があるので、うちでは発電機を用意しているのですが、用途を携帯機器の充電に限定して考えるなら必ずしも必要なものでもありません。

 インフラ(電気ガス水道)に関する代替手段を、全て自力で賄おうとすると莫大な費用と労力がかかりますが、こともあります。そして、使なのですよね。


 災害時のインフラ代替手段は、完璧を求めず、賄える手段を持っておく、ということを第一に考えると想定も対処もしやすくなるかと思います。

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