第2話 ローリング備蓄のススメ~田舎で暮らそう

 時と場所を弁えないのが災害。


 日本に住んでいる以上、地震の無い場所は存在しないと言って良いでしょう。いつ何時、地震に襲われるか、其は誰にも分かりません。


 海外の人に言わせれば、「何でジャパニーズはそんなおっかない所に住んでいるんだ!?」と言われるらしいですが、昔からここに住んでるんで、しょうがないのです。


 さて、私自身は北東北の山の中に暮らしております。はっきり言って地震対策としては完璧ですw

 身も蓋もない言い方をすれば、このように『被害さえ出せない』ほどの田舎に住んでいれば地震のリスクは最小限になります。

 地形的にも、土砂崩れや水害の起こらない場所。道路も4系統あり、多少寸断されたところで孤立することもない。

 このような土地に住んでいれば、大規模災害時には自分の食事を確保するという最小限の行動に専念できます。


 さあ、みんなで田舎に住もう♪

 ……田舎が都会になってしまいましたとさ。


 なんてオチは無いでしょうけど。


 田舎に住んで長ければ、日々の暮らしがそもそも「スタンドアローン」性を重視した暮らし向きになっているかと思います。


 すなわち、ある程度自力でなんとかする暮らし方が自然とできているということです。


 今回お話しするのは『ローリング備蓄』という考え方。


 田舎に住んでいると、毎日買い物に行く人は珍しいと思います。そもそも、近所に店が無いということも珍しくありません。


 ではどうするか?


 一週間程度の食料の蓄えは普段からしている、ということですね。無くなったら買いに行く。一週間分まとめ買いが、田舎では普通の事なのです。

 その一週間の最終日に災害に遭ったらどうするのか? という問題は残るでしょうが、少なくとも『今日明日食べる物が無い』等という状況は田舎だとほぼあり得ません。


 これを、考え方のベースにします。


 家族四人、一回食べる分のカップ麺を四個。

 これを常備しているとしましょう。災害用ではありません、普段食べるためのものです。なので、食べたらまた買ってくる訳です。


 これを、四個ではなく八個、或いは12個用意しておくのです。で、古い方から順番に食べてする。これで、災害時に向けた備蓄がひとつできることになります。


 普段食べている、日持ちのする食材を少し多めに買い置きしておき、食べながら備蓄するという考え方。これが『ローリング備蓄』です。(ローリングストック、とも)


 このやり方の優れている点は、


 ○消費期限切れを起こす心配が無い

 ○普段食べ慣れているもののため、舌に合わない、アレルギーその他の問題も起こしにくい

 ○買ったものが無駄にならない、空間リソースが少なくて済む


 等々、良いことづくめです。


 災害用にわざわざ用意した食べ物というのは、普段食べ慣れていないもののため、いざ食べようとしても、空腹を満たす以上の効果は期待できません。カンパンなどを備蓄でよく見かけますが、実際に食べたことのある人は案外少ないと思います。


 普段ご飯を食べている人にあれを食事の代わりに……と言われるとなかなか辛いものがありますよね。

 災害時であっても殆どの場合、インフラが止まっている以外は普段通りであることが多いのです。これは、メンタル面まで含めて、です。災害が起こったからと言って味覚までがそれに適応するわけではありません。


 ───災害時に大部分を占めるのは、映像で見るような「避難所の被災者」ではなく、電気ガス水道の止まった自宅で過ごす「」なのです。

 その大部分の人が、混乱の波にのって一斉に物資を求める状況こそが避けるべき現実課題です。被災地に物資を送るだけが被災地支援ではありません。自分の必要になる物を予め自分で用意しておいて、いざ災害時には外に助力を求めず自力で完結するという事は何よりの被災地支援になり得る、ということを覚えておいて欲しいのです───


 そんな中、わざわざ食べ慣れないものを食べるという方法はあまりお勧めできません。普段食べているものがあるなら、それが最良。災害時だからと言ってカンパン食わなければならない訳ではないのです。


 缶詰、レトルト、インスタント食品、水と火が確保できる状態なら乾麺や乾パスタも良いでしょう。特に、田舎は井戸と薪ストーブが標準みたいな土地柄も結構あります。近所同士で融通しあえるなら、いろんな食品が現実的な選択肢となり得ます。

 逆に、普段からどこの家庭も常備されていると思われるのが『米』ですが、これはあまり使い勝手がよくありません。米を炊くには、電気ガス水道、災害時に止まる可能性の高いものに、ことごとく依存します。

 特に、米は研がないといけなかったり、水の使用量が多かったりして、田舎の被災地でもだいぶ後(災害発生から3日~1週間程度、電気が復旧してからという家庭が多かったと記憶しています)になってから使い始めました。備蓄として考えるなら最低でも『無洗米』がいいでしょう。被災地に送る場合も、この点を考慮した方がいいですね。

 災害時の備蓄としてはアルファ化米が一般的ですが、レンジでチンして食べられる、いわゆる「サトウのご飯」みたいなパックご飯などでも、カップ麺オンリーの食事に依存しなくて済みます。

 パックご飯は電気が使えなくとも湯煎で(時間は思ったよりかかりますが…)温めることができて、味も申し分ありません。アルファ化米と共にストックに加えておくことをお勧めいたします。


 一方、難しいのが飲料水。


 諸説ありますが、飲料・調理用含め、体内に取り込むための水は、一人一日3リットルが目安。

 3日分をのスタートラインと考えれば、一人9リットル。四人家族なら36リットルにもなります。


 備蓄場所まで含め、これを常時用意しておくにはかなりのリソースを必要とします。


 この場合も、上記ローリング備蓄の考えを応用します。全て真水で用意するのは難しいですが、普段飲んでいる飲料を箱買いしているご家庭も多いと思います。ペットボトルのお茶やスポーツドリンクなんかですね。

 これらを一部、飲料用水の肩代わりとして使えば全て真水で賄う必要はありません。調理用水も、レトルト食品や水分量の多い食品を組み合わせることでいくらか圧縮することができます。


 災害時への備えは、完璧を期するとなかなか上手く行かなかったり、あれこれ考えて結局手付かずだったり、ということがあります。


 普段の生活から、それらに応用できる部分を取り出し、できる部分から少しずつ始める事が、防災備蓄の第一歩になり得ると思います。



○参考文献

防災ポーチを知っていますか?  /  縦縞ヨリ さま

https://kakuyomu.jp/works/16818093077812375840








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