第14話 親友との出会いは俺を変えた②

「ねぇ。さっきは手を振り払ったり、冷たい態度をとってごめん。」


俺は多少、悪いと思っている。


悪いと思っていないとこいつらに怒られるからな。


女の子はさっきと変わらず、体操座りで頭をかがんで、顔を隠して言った。


「なんでさっきはあんなことしたの?」


女の子は俺が昼にとった態度と行動について、聞いてきた。


俺は下を向き、これを言うかをよく考える。


女の子を避けた理由、パニック状態になった理由を言った方がいいのだろうか…


前者は言える。

だが、後者は言えない…


俺は下を向いて考えていたが、言わないとダメだ、と思い顔を上げると、女の子は顔を上げて泣いていた。


「俺が叫ぶ前に避けた理由は…人と関わりたくなったからだ…」


俺は小さい頃から、幼児施設や学校も行ってなかった。


俺はその代わりに、書物を読み、難問を解き、いろんなことを脳に詰め込んできた。


俺はパニック状態にならないように、言葉を…今までのことを…制限しながら、話す…


「俺は…小さい頃から…いや、産まれてきてから、人と関わってきたことなんてない…両親とも…ほとんどない…」


「な、なんでなの?」


女の子は泣くのを止め、この俺に疑問を持ってくれた。


「俺は今まで、見たことは全て覚えている…産まれてから全て…」


女の子は右手を臍部と左側腹部の間辺りに置き、目は興味津々に輝いていた。


俺はそんなに興味を持つことなのか?と驚いた。


話してやれ?謝るんじゃなくて?

ああ、隣にも座って話してやれ?

わかりましたよ。


俺は女の子の隣に座り、あの日の出来事の一部を話す心の準備をした。


俺は一度、深呼吸し、話し始めた。


「俺はあの日………


夜 19時


女の子のお腹が鳴るまで、俺は女の子にあの日の出来事を話していた。


「じゃあ!あの日は!頑張って乗り越えたんだよね!」


「ああ、そうなるな。目的を目指して…」


俺は会話を楽しんでいたのか、余計な一言を行ってしまった。


「目的?」


グゥ〜


お腹の音が鳴ると、女の子は頬を赤くして、お腹を抑えた。


俺は少しだけ喋る予定だったのに、いつの間にか2時半ぐらい経っていた。


喋り過ぎてしまった。


流石に俺だけが話していたわけじゃないし、お腹が減るのは当然だろう。


「父さん。母さん。夜ご飯はどうする?」


俺は自分も腹が減ったので、両親に夜飯をどうするかを聞くため、後ろを向いた。


だが、両親はいなかった。

他の部屋にいるのかそれとも両親同士で先に食べに行ったか、買いに行ったか。


「ははは。君の両親は家に帰って行ったよ!!」


あいつら…


俺が楽しそうに話していたことに気づいて、先に帰りやがったな。


で、俺は1人で帰ってこい、ということか。


女の子のお父さんは俺の周りで京佳と一緒に寝れば?寝れば?とかなんとか言っていたが、俺は無視し続け、どうやって帰るかを考えていた。


日本では青少年は午後11時以降は補導される。

だから、午後11時までには帰宅しなければならない。


今は19時過ぎ。

歩きで50分程度だが、クズに絡まれた瞬間、終わる。


交通機関を使うと30分程度だが、幸いに金を持っていない?幸いを使うな。不幸にも、だろ。


というか、いつからいた?

ずっと?それはそうかい。


は?泊まっていけ?京佳のお父さんもそうおっしゃっていらっしゃるのだから?


京佳って?誰だ?


あ…無視していて気づいていなかったが、この女の子の名前か…


「どうするんだい?蓮太郎くん?泊まってくかい?」


はいって、言え?

待て待て。京佳がなんか言いたそうだから、待っておこう。


「お父さん。京佳が何か言いたそうです。一度、ご意見をお聞きしましょう。」


京佳は人差し指と人差し指を合わせて少し動かし、もじもじしていた。


「お父さん…もういいから!帰ってもらおうよ!」


だってよ。俺に泊まって欲しくないらしい。

すまないがここは帰る。


おい!日和がぁ!?漢なら!?泊まりたい!?というところだぁ!?


それは、わがままに過ぎないだろ。

また今度こればいいだけだ。


本当にそれでいいのか?

ああ、それでいい。


「じゃあ、俺はこれにて、帰らせてもらいます。本日はありがとうございました。」


俺は京佳と京佳のお父さんに一礼し、玄関へと向かおうとしたが、振り向く寸前に見えた京佳の顔はとても残念そうな顔をしていたように見えた。


おい。あの顔は言ってあげなきゃならないだろ?


俺はその言葉を無視して、リビングを出ると…


「そこで…待…て…て…」


!?


その瞬間、俺の全身に恐怖という言葉が走った。


俺は一瞬にて、鳥肌が全身に立ち、両腕を両手で掴み、ブルブルと震えた。


足が…動かな…い…


誰か…助け…て…


俺は今まで生きてきた中で初めて「助けて」という言葉を使った。


俺は心の中で誰に助けを求めていると、右前の扉が開いた。


誰…だ…?


青ざめた顔で誰が出てくるかドキドキする暇もなく、待っていた。


助…けて…く…れ…


扉からいきよいよく出てきたのは幼い男の子だった。


男の子は俺を無視して…気づかずに…リビングに向かっていた。


あ…あぁ…もう…いや…ダメだ。


動け…動いてくれ…


俺は全力で足を動かそうとするが、やはり動かなかった…


なんで動かないのだろうと、疑問に思いながら、恐怖と戦っている俺は足下を見ると…


両足は酷く震えながら誰かに両足首を掴まれていた。


「俺は…神なんだ…ぞ…?」


俺はまた無理矢理、足を動かそうと試みるが、俺の足は一向に動かない…


そして、また、全身に恐怖が走る言葉がこの静かな空間に響く。


「そこで…待…て…て…」


誰か…誰でも…いいから…

俺を…僕らを…助けてくれ…


俺は気を失いそうになると、誰かが俺を後ろから抱きしめた。


数分前 古俣 蓮太郎がリビングを出た直後…


「京佳、本当によかったのか?」


「いいの!!あいつなんて!!………」


お父さんはいつも余計なことを言ってくる。


私が恥ずかしい思いをすることを…


いつもいつも………


優しいよ…

私の昔からお父さんは………


私は昔から自分から他人とは関わって来なかったため、友達はほとんど…いやいなかった。


そして、昔からこうだったお父さんは余計なことばっかり言っていて正直に言うと、ウザかった。


人前でも…公衆の場でも…


お父さんがいると、恥ずかしい思いをしていた。


でも、そのお父さんへの思いが変わったきっかけがあった。


あれは年長の運動会のとき、私は昔から足が早かった。


そのため、私はリレーのアンカーを任せられた。


本番当日、同じクラスの人が頑張って走っていた。


私はそれを見ていると、とうとう私の番が回ってきた。


私はバトンを受け取り、今の順位を確認すると、4クラス中2番だった。


1番目の人との距離もそんなにひらいていなかった。


これなら、追いつけると思って走っていたが、ちょうど半分のところで転んでしまった。


私はまずい、どうしよう、とパニックに陥ってしまった。


早く立たなきゃ、早く…早く!


そう思っていたのだが、転んでしまったときに足を擦りむいてしまったらしく、痛くて立ち上がりにくかった。


そして、そう陥っている隙に3番目、4番目の人と追い抜かされて行った。


もう無理…なのかな?


私が諦めかけていると、聞き覚えがある声が聞こえてきた。


「京佳!!頑張れ!!京佳なら!!間に合う!!」


お父さんだ。こんなときでも、いつも通り。


「ふふ。」


私はお父さんの声に励まされたのか元気をもらったのか、私は無意識にすぐに立ち上がり、走り出した。


私が気づいたときには、2着でゴールしていた。


「え?2…位?」


「京佳!!すごいぞ!!」


これが初めて、お父さんの思いが変わった出来事だった。


「本当は泊まっていって欲しかったんじゃないのか?」


私は頷くか、少し躊躇った。


今日、初めて会った人に…

なんで私はこんなにいて欲しいと思っているのだろう…


でもこれだけは言える…

一緒に話していて楽しかったことだけは…


私は頷いてしまった。


「うん…」


でも、もう遅いよ。 


もう…私じゃ追いつけない…


私は悔しくて手を強く握りしめた。


「追いつけないと思っているのはだーれだ?」


お父さんには図星だったか…


「京佳なら、追いつけるよ。」


私はまたお父さんの言葉で諦めかけていた気持ちが吹き飛んだ。


「京佳、いってらっしゃい。」


私はマイナスの気持ちからプラスの気持ちに切り替わった。


「うん!」


私はリビングを飛び出した。


俺は何者かに抱きしめられたが、すぐにそれが誰かがわかった。


「京…佳…?」

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