第8話 俺は大切なものを無くしてしまった

「みんなのおかげで!最初の鬼は3人だよ!!それでは山鬼ごっこ!よーい!!始め!!」


京佳の合図と共に136人は一斉に逃げていった。


「京佳。どゆこと?」


「恋太郎!みんなを集めるためにこうしておいたよ。安全面に関しては最初に全員にLINEで山のマップやルールを送って、お母さんたちにも協力してもらっているから、大丈夫!!」


「京佳のお母さんにSCPのことを話したのか!?」


「え?ダメだった…かな?」


まず、大人が信じるわけないが、京佳のお母さんは京佳の言うことなら、信じる人だから、周りに話してなければいいけど…


と思いたいが、流石に無理がある!そうですね。みなさんもそう思いますよね?


「まぁいい。あとでどれぐらいの人に広がっているか、聞こう。」


とは言ったものの京佳のお母さんの職業は警察。


下手すれば…


いや、まだないか。

流石に世間問題まではいかないよな?


うん。みなさんもそう思いますよね。

でも、実際に虎神を見ている人はいる。


おそらくはどっかの番組で取り上げられるレベルになるだけだが、思うが…


そして、取り上げられたなら、取材してもらった、京佳様と結婚する宣言をしろ、だって?ふざけているのか!?


「お取り込み中、悪いけど、SCPって何?」


「あ、いたの?」


「あ、はい。最初からずっといましたよ?」


これは話すしかないか?


ダメだって?なんでだ?誤魔化しようがないだろ!?


え?京佳様との2人だけの時間が減ってしまう?そんなのいらねぇわ!!


俺は紀藤さんと松村様に事情を説明した。


「えーと、そうなると、もう虎神っていうSCPは退治できたってこと?」


「それはわからない…」


「え!?でも、ノートにまとめているのでは?」


「…」


「恋太郎?どうしたの?」


正直に話せって、言わないでよ。

言っていいのか?


言いよ。俺のノートはもうここにはない…


なら、言えよ。それはできない…


早く、言えや。…


「恋太郎?大丈夫?」


「俺のノートは今…あるよ。でも、書いた退治方法と少しズレているだ。ちゃんもその通りやるだけでは、意味がない。ブラックストーカーのときも、割り切ってなんとかなった。」


「え、うん。じゃあ、今回も何かをズレているってこと?」


「ブラックストーカーのときは追いかけるの意味が足で追う方じゃなくて、追う意の方だったから、たぶんそう。」


「では、どうすれば良いのでしょうか?」


考えろ。これで終わるはずはないと思う。


虎神が出たのは知っている数だと、木曜日の夕方と金曜日の朝の2回。


土曜日と日曜日の起きている間は見ている限りだと、出てなかった。


「特徴はとある山に現れ、ときどき姿を人々に見せる…退治方法は100人で同時に「鎮まれ」と大きな声で言う…」


ズレているとしたら…


「それは記憶の中での情報だよね?」


「ああ、そうだけど。」


「じゃあ、見にいこうよ。」


それは無理だ。

なんで?まず、そのノートがブラックストーカーがで始めたときから無くなっていたから…


は!?なんでそういうこと早く言わないの!?それはあのノートは京佳からもらったもの。


無くしたなんて言えない…


そんなのどうでもいいだよ!!今、大切なのは正直に言うこと?そんなの、俺だって、わかってるよ!!


言わなきゃいけないんだ…


でも、京佳の前で言えないんだ…


じゃあ、死んだけ?酷くない!?ほからないで。


よし、できた。え?何が?俺が今、言った?

え?何を?


ほからないで?え?京佳様なら、無くしたって、言っても俺を見捨てたり軽蔑したりはしない?


本当?本当なら、頑張って言うよ。


「ごめん。京佳たち。本当は!」


そう言おうとすると、虎神が姿を現した。


どういう定期で姿を現すんだ?


「虎神!?なんで!?」


「わからない。でも、1週間…5月27日まだは大丈夫だ。」


「さっきのが効いていないとなると…恋太郎!どうするの!?」


思い出せ!何か他に書いたことを!


2014年5月27日

-

ブラックストーカーの次は何にしようかな。


俺はいつも通りSCPを考えていた。


ピンポーン


「誰だ?」


いや待て。俺の家のチャイムと鳴らすということは、郵便か京佳以外ありえない。


「じゃあ、いっか。」


俺は無視しようとしたが…


ピンポーン ピンポーン ピンポーン


「うるせーわぁ!!」


「おぉ!恋太郎が出てきた!」


バタッ


「ちょっ!閉めないでよぉー!」


「知らない人だったので、帰ります。」


あまりにもチャイムを鳴らしてきてたので、カッとなって、出てしまった。


「酷いよ!!恋太郎が、そんな人だったなんて!!クラスのみんなに行ってくる!」


「ちょい待てぇ!!それだけはやめろ。あ…」


「確保。」


俺がドアを開けた瞬間、俺は京佳に腕をがっしりと捕まえられた。


「今日はどこに連行されるのかな?」


「今日は!私のお父さんと日向と一緒に!動物園に行きます!!」


「それは俺の親の任意かい?それとも、誘拐かい?」


「もちろん、任意です!」


親よ。ふざけるなぁ!!

俺はSCPを作りたい!!


俺は結局、動物園に行くことになってしまった。


「ねぇ!恋太郎は何の動物が好き?私はペンギン!」


「俺は虎かな?」


「なんで?ライオンかクマと思っていたのに!」


「だって、虎はアジアでは、力や威厳の象徴とされているから。威厳があるだけで、かっこいいだら?」


「わからない!」


「じゃあ、なんで聞いたねん!!」


俺たちは京佳のお父さんの車に乗りながら、京佳の弟の日向に不思議そうな目で見られながら、動物園に着いたのである。


「到着!!入り口まで!競争だぁ!!」


「イェーイ!!て、のるわけねぇだろ。どうぞお1人で競争しておいてください。」


「もう!!じゃあ!1人で行くもん!」


京佳が走って行くと、京佳のお父さんは心配そうな目で後ろ姿を見ていた。


「恋太郎くん。京佳は活発で元気で猪突猛進な子だから、守ってあげてね。」


「はい。わかりました。ですが、いい加減恋太郎はやめてください。


「あ、はい。すみません…」


残された俺たちは動物園の入り口に向かうと京佳が早く来てー、と全身でアピールしていた。


「恋太郎!!早く!!」


「動物は逃げないからゆっくり行こう。」


「それでも早く!!」


はぁ。やっぱり、親友は今日も大変ですな。


「ここから1番近い虎を見に行こう!!」


そう京佳が言うと、俺たちは虎を見に行った。


「恋太郎!見て!虎だ!」


「はい。そうですね。虎ですね。」


俺は虎を見ながら思い出した。


虎って、確かプライドが高くて、温厚、知的、生真面目でそれを露骨に外に出さないんだっけ?


あ…

-


そうだ。思い出したぞ。


「京佳。退治方法を見つけたぞ。」


整理しよう。


虎神の特徴はとある山に現れ、ときどき姿を人々に見せる、ともう1つ。


この街で1番威厳で温厚、知的、生真面目でプライドが高い人に取り憑く…


俺は一度、虎神の恩恵を受けた人をこの目で見ていた。


「え!?恋太郎!教えて!」


「ああ。わかった。」


俺は退治方法を言おうとしたが、紀藤さんがこう言った。


「あの…それは私たちも聞いてもよい内容ですか?」


「ああ。もちろんだよ。」


俺は退治方法を3人に伝えた。


「じゃあ、俺は協力してくれる96人を探す。他の3人は例の人を探してくれ。で、見つけ次第連絡を。」


「了解!」「わかりました。」


3人同時に返事をし、山鬼ごっこが無事に終わると、俺たちは帰ったのであった。

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