第7話
「というわけで今学期から編入することになった叉江守 大樹だ。みんな仲良くするように」
「さ、叉江守 大樹です。いろいろあって2学期からこの高校に転入することになりました。よろしくお願いします」
先生の紹介に続き自分でも軽く自己紹介をする。転入初日に必要なのはどれだけ接しやすいそうな雰囲気を出せるかによる。失敗すれば『グッバイ僕の高校生活』になるからな。まぁ、いろんな意味で夏休みにグッバイしてるんだけど.....
「席はそこの余っている席に座りなさい」
「わかりました」
そんなこんなでつつがなく自己紹介を終えた大樹は先生に指示された窓際一番前の席を指さした
大樹が指定された席に着くとSHRが始まった。
どこの高校でもSHRは同じらしく退妖魔士の育成機関だから初日から非日常的なことでもしてるのかと思ったがそうでもなかったようだ。
少し肩透かしを食らった大樹は転入してきたばかりの自分には関係のない提出物やらの話を退屈そうに聞いていると視線が自分に向けられているのをを感じとり右隣へ顔を向ける
「僕がどうかしましたか?」
その視線は例えるなら子供の知らない物への好奇心のようだったので思わずこちらから声をかけてしまった
「よ!俺の名前は
「あ、あぁ....よろしく。えっと....檜花くん」
「おいおい、『くん』付けなんてやめてくれむず痒い。呼び捨てでいいぜ。ついでに敬語もな要らんぜ!なんたって俺たちは席が隣なんだし」
「わかり...おっと」
危ない危ない。また、敬語が出そうになった。
「わかった。改めてよろしく檜花」
「おう!」
「おい、コラそこ!先生の話を聞け!」
話が弾んできたところで先生からの叱咤が飛んでくる
「ありゃ、先生そんなにいわないでくださいよ~せっかく叉江守と仲良くなろうとしてるのに」
そんな叱咤に怯まず檜花がさもまっとうであるかのように言い返す
「その心がけはよし。でもな、時を考えろ」
「そんな~...」
まぁ、当然そんな言い訳が通るわけもなく
「今回もあんたが悪いのよ。バカ夏輝」
「そんな、天城まで....さ、叉江守はこっち側だよな!そうなんだよな!」
どうやら檜花が怒られることは日常的によくあるようで後ろにいた天城と呼ばれた女子生徒が『も』を強調して罵倒する。そして、それを聞いたクラスメイト達はクスクスと....いや、ニヤニヤと笑っていた。どうやらこの二人はいい感じのようだ。
「え、え~と....ごめんな?」
「ほぉ~ら」
天城さんはそう言うと檜花の両耳を引っ張り出した
「わ、わっ!やめて、耳を引っ張るなって!」
そんなこんなあってようやくSHRが終わり授業が始まった
1~5時間目は普通の高校と同じような授業をした。授業の速度や内容もそこまで難しくなく今の僕でもついていけるレベルだった。6時間目は符術用の札を作る時間だった。札は予め筆で書かれた印に霊力を流し込むことでその効果を発揮する。それ単体の威力はそこまで高くないが戦術の幅が広がることで使われている。退魔士にとって基本的な術の一つだ。
大樹は夏休みの間札の使い方だけでなく作り方までみっちり仕込まれたので授業中も手際よく札作りを済ませた。そこで一日の時間割は終了した。
放課後
特に何もすることのない大樹は学校から10分の距離にある宿舎へ寄り道することなく帰り記念すべき学校初日は終了した
・
・
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「あぁ~.....つかれた。」
宿舎は古くはないが新しくもないどこにでもあるアパート。その2階最奥の一室が僕の部屋だ。部屋にはいまだ開封されていない段ボール箱が数個ある
「はぁ...先にご飯でも食べるか」
『お前は面白くないな』
誰もいないはずの空間から突然ゆったりとしたそれでいて何処か威厳を感じさせる声がする。それと同時に大樹の胸に真っ黒な穴が開きそこから一振りの刀が現れる
「おい、僕の許可なく勝手に顕現するなと何度言えばわかる」
『そう、硬いことを言うでない。我が主よ。今は亡き主はもっと寛容だったぞ』
「それで何の用なんだ?わざわざ僕と談笑するために顕現したわけじゃないんだろ」
『まったく....我が主はせっかちなのだな。仕方がないでは本題だ。我が主は随分とぬるい湯に浸かっているようだが我とのパスがある限りこのような日々はそう長くは続かんぞ』
「.......」
わかっている。こいつを持っている限り僕の周りには妖怪が集まり災いをまき散らしてくる。
「今の僕の力は前主の何割ほどだ?」
『そうだな.......かろうじて1割に届く程度だ。今は亡き主は1級レベルを100体相手にしても瞬殺できてしまう。純粋な技能だけでな』
.......恐ろしい。何度聞いても僕がその域に達する想像ができない
ピピピピピィィィ!!!
そんなけたたましい電子音が突然鳴り響く
「妖怪か......この反応は少なくとも7級か」
『行くのか我が主よ?』
当然だろう
それが僕の役目だ
「当然!」
そう言うと宙に浮いていた
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