第4話
あぁ....体がふわふわする。
あれ?そういえばなんでこんな風になってるんだっけ.......
「う、ゔぅ.....こ、ここは?」
そうだ、あの後蔵に行って....刀をとって.....
「あぁ....父さんは、父さんがぁ~....」
気づけば自然と涙が止まらなくなっていた。大樹は唯一の家族すら失ってしまった
どれくらいたったのかもう涙は枯れ一滴すら零れなくなった。いつしか窓からは夕日が差し込んでいた。
「あれ?そういえば刀はどこ行った...?」
コンコンコンッ!
ノック音が聞こえるや否や大樹は涙をゴシゴシと涙を雑に拭いた
「ッ........どうぞ」
「失礼するよ、やっと目が覚めたかい
入ってきたのは白衣を着た少し背が高いお兄さんだった
「あなたは....お医者さん?」
「ぷっ、お医者さんって」
思わずといった風に口を手で塞ぐ
「ムッ....」
「あぁ、いや~すまないね。あまりにもお可愛い物言いだったのでね。気を悪くしたなら謝るよ」
終始そんな調子でへらへらしながら男は謝った。大樹はこの人と真面目に話すべきではないと思い、相手にするのを早々に破棄した。
「別に.....いい」
「そうか、では、私だけ君の事を知っているのはアンフェアだからね。自己紹介と移行。初めまして。私は君を担当している医師。名前は千寿というんだ。よろしく頼むよ」
「わかりました、では千寿先生,,,,,そうだ、父さんは!?爺さんは!?アレはいったい何だったんですか!?」
凄い勢いで思わず千寿につかみかかる
「ちょ.....待って待って、私はただの医者で詳しいこてゃ何も知らないんだ」
「そ、そうなんですか.......」
あれはいったい何なんだよ
鬼?いや、でもそんなのがいるわけないし....ひょっとして幻覚?
「あ、今から念のために精密検査するからこっちに来てくれるかい?」
「えっ!」
検査!?
「そんな嫌な顔しないで、まぁまぁこの精密検査が終わったらその時の事を詳しく聞きたいって人がいるからさ」
「ッ!?もしかして!」
「そう、君が聞きたいことを知っている人たちだよ」
よっしゃ!これで何か手がかりがつかめるかも!...
「よし!じゃあ先に精密検査をしようか」
「げぇ!」
「それが終わらなきゃ会わせないからね」
「そんなぁ~」
そこからは時間にして2時間もの間検査が続いた。その中にはカウンセリングもあった。先ほど涙が枯れるまで泣いたおかげか心は随分と楽だった。どちらかというと他の検査の方がめっちゃ疲れた......
・・・・・・・
「はい、これでおしまい!」
「やぁっと終わった~~....」
すっかり日が暮れ時刻は9時を回っていた
「じゃあ、今からその人たちを呼ぶから待っててね」
「あ、ちょっと待ってください.....僕がそっちに行きます。ここじゃあできない話なので」
「ん?あぁ、そうだな、じゃあ部屋を用意するからちょっと」
・・・・・・20分後
コンコンコン
「どうぞ」
「失礼する」 「失礼するっすね」
ノック音と共に二人の男性が入ってきた
「.....こんにちわ」
ッ!?なんだこの寒気は....この二人からか?
会ってみたはいいけど、これは、まずい
入ってきた瞬間に爺さんと同じ....いや、少し違うが悪寒がする
「こんにちわ叉江守大樹くん」
「こんにちわっす!やぁ~、やっぱり挨拶は大事っすね!なんてったってコミュニケーションの基本中の基本っすからね!」
「お前は少し黙っていろ。ここは病院だぞ」
「はっ!そうだったっす...これは失敗っす」
「全く....あぁ、連れが失礼をした」
「いえ、お気になさらず」
な、なんなんだ?いい...人たちなのか?
いや、でも爺さんと同じ悪寒がするのに....何かが違うのか?
「そうか....そうだ、まずは自己紹介をしよう。私は
形代と名乗った男性は眼鏡をかけたいかにもサラリーマンといった風な服装をしており、逆に田沼という男性は半そで短パンのどこにでもいそうなチャラい恰好をしている。しかし、決定的に違うとすれば筋肉の付き方だろうか.....
形代さんもそうだが田沼さんはその一挙手一投足に隙を感じない。どこから襲ったとしても反応できるようだ........
って、あれ?
なんでこんな物騒なこと考えてるんだ?
フルフル...と頭で考えていることを振り払った
「形代さんに田沼さん....僕は叉江守 大樹と言います。よろしくお願いします」
「うん、ではそろそろ本題に入ろうか」
「本題.....」
あの時の事か
今は少しでも手がかりが欲しい....
大樹の頭の中にはいろんな感情が渦巻きその中には当然あの化け物への強い憎しみもある。しかし、不思議なことにそんな中でも冷静でいることはできた
「あぁ、君があの日あの夜に見たモノの事だ。我々はその化け物の事を『妖怪』と呼んでいて、簡単に言うと人の負の思念が具現化したものだと思ってくれたらいい。そしてその妖怪を祓うことを私たちが属しる組織が組織している」
「組織.....」
そ、そんな組織があったのか....
でも今までそんな話聞いたことないぞ....ちょっと、いやかなり胡散臭い
「そう、退妖魔協会という。妖怪は人の負の思念をエネルギーとして思念の通りの行動をする。例えば....そう、人を食べるとか」
「ちょ、ちょっと待ってください!そんな話これまで生きてきた中で聞いたことないんですけど!それ本当の事なんですか!?」
「信じられないのも無理はない...しかし、本当だ。たまにニュースで失踪事件とか放送されているだろ?あれは、妖怪に食われ亡くなったほんの一部の人たちの事なんだ」
「そ、そんな」
よくニュースで見る失踪や誘拐が妖怪の仕業.....だって?あぁ....頭痛くなってきた
「我々はそれを未然に防ぐ為に組織された存在なんだ」
「ん.....未然に?」
未然に?みぜんに?
みぜんって....なんだ?じゃあなんで......
「....あぁ、そうだ」
「じゃあ.....なんで、なんであの時父さんを助けてくれなかった!?なんであの時来てくれなかったんだよ!?」
その瞬間、自分の中で何かが弾けた。今まで抑えていた感情が憎しみが例えぶつけるべき相手ではなかったとしてもだ。今、大樹の中にあるのは助けてくれなかった退魔士への恨みと妖怪への憎しみと......そして何より何もできなかった自分のふがいなさへの絶望だった。しかし、今の大樹にそんなことを考えるだけの余裕はなかった
「ッ.....」
「ちょっと待つっす。それは俺の方から説明するっす。この人はなんでもかんでも自分の所為にしちゃう人っすからね。っとその前に....」
形代は大樹に掴まれされるがままになており。それを見かねた田沼がその口を開く
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