第2話
父はいつも通り天日に半日中振り回され、僕はというと大量の小説が保管されている書庫で読書にいそしんだ。天日曰く、そこは読書が大好きだった祖母が一生を掛けて集めた本を保管していた場所のようで初めて入った時は部屋中埃まみれで1週間かけて大掃除する羽目になったのを今でも覚えている。
そんなこんなで時間は過ぎていき夕食の時間となった
「何をしておる、お主はもっと飲まんか大輝!」
「か、勘弁してくださいよ」
父はヒーヒー言いながら天日に酒を注がれる。この光景は毎年見ているんで、いい加減見飽きてしまう。
「何を言いよる!情けないのう。お主もそう思わんか大樹よ?」
「......」
「はぁ...何か言ったらどうなんじゃ?そんなでは友達もロクにできまいて」
「うっす」
何度でもいうが僕は祖父とは極論話したくない。必要最低限だけの会話しかしない。
「まったく、ホラ!大輝!お主は最後まで付き合ってもらうからな」
そんな光景を見ながら僕はその場を後にした。大樹は沸かして置いた風呂に入り、毎年ここに泊まる際使用していた。部屋で布団を引き明日読む本について考えながら意識を闇の中に落とした。
・・・・・
「うぅ~~む....いま、何時だ?」
喉の渇きを覚えて目を覚まし、窓からは月明りが部屋に差し込んでいたので時間が気になりスマホを見ると2時を回っていた。流石に父も祖父も寝ているようで寝る前に聞こえていた声は聞えなくなっていた。スマホのライトを頼りに1階へ降りて台所で水を飲んでまた、自分の布団へ潜ったが不思議なことに眠気がまったくなく仕方がないので夜風にあたるため再び下へ降り玄関から外へ出た。
『こっちにこい』
それは突然現れた。
青い炎の玉が目の前に現れかすれた様な声でそう囁いてきた。
「!?....どこへ行けばいい?」
炎の玉は大きさは野球ボール程度だがそれからは悪寒が肌を刺す
『....蔵だ、蔵へ来い』
「く、蔵?なんで蔵なんだ?それにこの尋常じゃない寒気は!?」
その見た目から今は鬼火(仮)として、その鬼火についていき蔵へ向かった。
「ケホッケホッ、埃っぽいな....随分放置されてたんだなこの蔵」
蔵の中はもう何十年も放置されているようで扉から入ってきた風に積もった埃が立ち上った。あまりの埃の量に思わず目を細め服で口と鼻を隠す。蔵は2階建てとなっていて、鬼火は二階の方へ行ったので、はしごを使い2階へ上った。はしごを上り切り周囲を見渡すと鬼火は一つの木箱の上に静止していた。
『こっちだ、その箱を開けろ』
その木箱は170cmある僕の腰より少し長いくらいの縦長だった。鬼火の言った通りに箱を開けた。
「刀?」
そこには鞘、柄、鍔の細部まで漆黒に染まっており、不思議とその刀に惹かれてしまい思わず手に取った。
そう手に取ってしまったのだ。
「!?なんだ、こ、これは.....うぐっ、記憶が...知らない記憶ガ流れ込んでくる!ぐぁぁぁぁ!!」
そう、その瞬間異常なほどの悪寒と共に何人もの誰とも知らない人の記憶が刀から大樹流れこんできたのだ
・・・・・・・・・
女性の悲鳴、子供たちの鳴き声、生きたまま自分の体を食われる感覚。そして、場面が変わりそこはネットで見たことのある。刀を打つ場所、いやゆる鍛刀場だった。
キン、キン、キン、キン......
一定のリズムで鉄で鉄を打つ音が鳴る。そのおとの方向では、男が一人体中から汗を滝のように流しながら、その手は一向に止めず、顔はまるでこの世の全てを憎んでいるかのように、目端からは血の涙が滴り、しかし、そんなことなど意に介さず鉄を叩き続けた。
・・・・・ようやく形になってきたところでまた場面が変わった。
次の場面は先ほどとは違い誰かの視点だった。その人は手にしている刀には見覚えがあった。それは、先ほど僕が手に取った刀だった。その人は刀を握り、突然何もない方向へ走り出し、空を手に持っている刀で切り裂いた。目を凝らしてよく見ると明らかにこの世の者ではない異形の、まさしくそれは妖怪と呼ぶにふさわしいそれを刀で切り裂いたのだ。
・・・・・また、場面が変わり今度は、何もない真っ白な空間だった。目の前には刀を持った侍が一人。その侍は言った。
「お前に託す!」
瞬間おそらくこの侍のものであろう記憶が長年で得た技能が一気に流れ込んできた。そして、そこで意識は途絶えた
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