「さ、お嬢様、お好きなドレスをお選びください」

アビーに促されて、私は大きなクローゼットの前に立っていた。浴室で散々アビーに磨かれた後の私の肌は、まるで新しい命を吹き込まれたかのように滑らかで輝いている。久しぶりでちょっと恥ずかしかったわ…

でも、それより、今目の前に広がるドレスの数々に、私は圧倒されている。え？この量はいったい…。生地の光沢や刺繍の繊細さ、色とりどりの装飾品が、所狭しと並んでいる。

「ヴィルフリード様のご指示で私が見立てたんです。もちろん、仕立て屋もあとで呼びましょう」

「い、いいえ、十分よ。でも、どれも素敵だけれどサイズが合うかしら」

思わず私は自分の体を見下ろした。小さい頃と違い、今のやせ細った体がドレスの美しさに釣り合うのかも心配だった。アビーはそんな私の不安を察したのか、優しい目で私を見つめ返した。

「とりあえず着てみましょう。このアビー、裁縫は得意なのですよ。お忘れですか？合わなければお直しします」

アビーはさっさとドレスを選び出し、私に手渡した。その手際の良さに、私は少し気持ちが軽くなった。アビーと相談しながら、ドレスを決めた。お兄様は覚えていないかもしれないけれど、初めて会った時と同じミモザ色のドレスだ。あの頃は、まだ何も知らず、ただ無邪気に未来を夢見ていた…。

「…ぴったりだわ」

なぜ…？

ドレスを身にまとった瞬間、私は鏡に映る自分の姿に驚いた。ぴったりと体にフィットしていたのだ。

「本当ですね。ぴったりです。ヴィルフリード様からもらったサイズ通り作ったのですが…ん？なぜご存じだったのかしら？」

お兄様が？

アビーもまた、驚いた表情を浮かべる。

「まあ、とにかく、首を長くしてお待ちでしょうし、ドニの作った料理も覚めてしまいます。下へ参りましょう」

アビーはすぐに微笑みを取り戻し、私を促した。彼女の言葉に従い、私はお兄様への感謝の気持ちを胸に抱いて、ゆっくりと階段を下りていった。

「お兄様、素敵なドレスありがとうございます」

「っ、ああ、リア。とてもよく似合う。素敵だ。是非エスコートさせてくれ」

お兄様は少し驚いたような表情を見せた後、すぐに穏やかな微笑みを浮かべた。お兄様の手が私に差し出され、私はその手を取り、エスコートされて席に着いた。

「あれ？セシル殿下は？」

「ああ、迎えに来た魔法省の職員に引きずられながら帰っていった…」

お兄様が肩をすくめながら答えた。その様子を想像し、私は思わず、くすりと笑ってしまう。やっぱり忙しい方なのね。

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