ミヒャエル・エンデの伝記を読んで。

昨日のジャーナルでは、私が作家になりたいと思うようになった原点の作家の伝記を読んだ話を書きました。

今日は、その昨日のまとめたメモを読みながら、自分自身に問う時間にしたいと思います。

今日の話で語る「はてしない物語」、「モモ」の感想意見、考察はあくまで個人の主観であり、正しいものでは思っておらずあくまで私自身が感じたものです。


私が作家になりたいと強く思ったのは、ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」を読んだとき、「こんなステキな物語を書けるようになりたい」と思ったからです。

では、その時、子供の私が考えた「ステキな物語」とは、具体的にどんなものだったんだろう。それを突き詰めてみたいです。

「はてしない物語」は、読書好きな少年が、物語の世界の中に入り込む、という話です。同じ作家の「モモ」も読み、こちらも好きなのですが、やはり「はてしない物語」の方が個人的に強い思い入れがあり、好きなのです。

では、「モモ」と「はてしない物語」、どちらもファンタジーには変わりはないのですが、「はてしない物語」の方が好きな理由は何なのか。

大きく分けて2つあると思っています。

①主人公の性格の違い

②主人公の冒険する世界の違い

③共感しやすい主人公


①の主人公の違いは、「はてしない物語」の主人公バスチアンは、臆病で運動も勉強もキライで、自分の見た目にコンプレックスを持った少年で、人一倍読書が大好きで空想想像力の強い少年です。

「モモ」の主人公モモは、髪の毛ボサボサ、着ているものもボロボロですが、「人の話をじっと聞くことができる」才能があります。自分の見た目や性格に負い目を持っている描写は多分なかったと思っています。様々な遊びを考える天才たちの輪の中心にいました。


②の主人公の冒険する世界の違いについてですが、「はてしない物語」の主人公バスチアンは、嫌いな自分のいる現実世界から物語の世界に入り込み、そこで魔法のアイテムを手に入れ、英雄になり周りから慕われます。彼が望むものはすべて与えられます。けれども彼は元の世界で、ありのままの自分で生きていくことを決断し元の世界へと帰っていきます。

「モモ」では、モモが暮らしている世界に、別の世界から来た「灰色の男」たちがやってきて、大人から「時間」を奪っていきます。そしてモモは、「元の日常を取り戻すため」、灰色の男たちのところへ自ら飛び込んでいきます。

私が考える構図としては、「はてしない物語」は、現実から異世界にいざなわれて、現実世界の自分をよく思っていない主人公が異世界へ自分の意志で行き、自分の意志で現実に帰ってくる。「モモ」は現実世界に異世界に住む者たちが侵攻してきたため、元の日常を取り戻すために異世界へ行き、そして現実世界に戻ってくる構図です。

かっこよく言えば、どちらもきっと、物語論や脚本論などにおける「ヒーローズジャーニー」に則った流れだと思います。

(日常世界からどこかに冒険に行き、宝や成長を糧に戻ってくる、というもの)

エンデはプロットを作らず、数行後に何が起きるか分からない状態でわくわくしながら書いた、とあります。物語論や脚本論といったマニュアルを気にしながら作ったものではなく、今までエンデが触れてきた神話やおとぎ話といった物語の中から自然と物語の流れの作り方をなんとなく学び取り、それを自身の物語になんとなく、まぜこんでいった、という形なのではないかと思います。


③の共感しやすい主人公ですが、私が「はてしない物語」の方が好きな理由に大きく関わったこととして、主人公のバスチアンが、自分にとって共感しやすい主人公だったことが挙げられます。

性格の話とも重なりますが、全体的にバスチアンは自分自身をマイナスイメージでとらえています。当時、この本を読んだ私もどちらかというと自分をポジティブイメージでは見ておらず、マイナスイメージで見ていました。どうせ自分はいてもいなくても、誰も気にしない。バスチアンはどこか、そういったことを考えているイメージでした。だからこそ、そんな主人公が別世界に行き、英雄ともてはやされ、仲間ができ、大事にされる経験をすることで、ああ自分は存在してもいいんだ、と思うけれどもその存在理由が魔法アイテムによると思って、願いを叶え続けて、でも最終的にはありのままの自分をまずは自分自身が肯定することが大事で、それは魔法アイテムを手に入れて願いを叶えても、自分を肯定することはできない、自分で肯定するしかない、ということを感じます。

エンデ自体が「物語はたった一つの正解を作者が読者に押し付けるものじゃない。

物語がどんな色に見えるかは人それぞれ。その時々で違ってもいい。今の自分だけの物語がある。物語に入り込んだら、思うままに体験していい。してごらん。そうして見つけた何かを胸に抱いて現実の自分に帰っておいで。」

こう言っているので、正しいとは思いませんが少なくとも、今の私はそう感じました。だからこそ、今の私が感じた、そしてここで長々とまとめた内容をもとに、自分の書きたい物語を振り返り、しっかりと物語を書いていきたいと思います。

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