著者の偏執的な姉への拘りが今回は象徴として扱われる短編。大衆の目を奪う光と化した光のような姉の目覚しい活躍と対する妹の姉への執着心が肥大化する対立構図が、短編の中でしっかり活きている。序文のエキセントリックな口火の切り方から、しばらくは緩慢──良くも悪くも終盤の為の過程としての趣が強く、訴求力という意味では更なる突飛さが欲しかったかも──だが、成る可くして成る結末は満足感があり収まりも良いように感じた。迂遠な目的意識の芽生えとその成就は、最後に至極簡潔で感情的な落とし所があるからこそ狂気が際立つ。そういう意味ではもう少し紙幅を増やしても成立する話かもしれないが、短編だからこその歯切れの良さがあるのはたしか。