第47話 松島
「おお! ここが松島かー!」
僕たちは電車で松島まで来た。
「じゃあ、まずはお昼にしよう」
シュリさんがそう提案する。
予定では松島おさかな市場だったっけ。
「スマホで調べてみるね」
英美里がそう言い、場所を検索しているみたい。
「しかし、潮風が気持ちいいな」
亘さんも喜んでくれているみたいで嬉しい。
「ええ。そうね」
シュリさんも両手を広げて潮風を浴びている。
「こっちだよ。皆さん」
英美里はそう言い、旗を持って案内を始める。
「まるで観光ツアーだな」
苦笑を浮かべる亘さん。
「まあでも悪くないんじゃない?」
「ふーん。邦彦君も言うようになったんじゃない?」
「ああ。こいつ、ずいぶんと長い間殻に籠もっていたからな」
苦笑を浮かべる亘さん。
ぶすっとふてくされた顔を浮かべていると、二人ともため息を吐く。
「もう、気にしないの」
「そうだぞ。俺はお前を認めているから言ったんだ」
「……僕だって傷つくんです」
「はいはい。ついたよ。おさかな市場」
「うん。あっ。香ばしい匂いがする」
「そうだな。何を食べるかなー」
「震災前は牡蠣で有名だったわね」
シュリが看板を見て串焼きになっている牡蠣を見やる。
「まあ、松島まで来たんだ。海鮮がいいだろう」
「牡蠣ラーメンとか、牡蠣ハンバーガーとか。オススメは色々あるよ」
英美里はすでに牡蠣の串焼きを頬張っていた。
「あー。ずるい。俺も買う」
まるで子どものようにはしゃぐ亘さん。
そんな亘さんが好きだ。
「……」
「どうしたの? シュリさん」
僕の顔をじーっと見つめていたので、声をかけてみる。
「いえ。なんでもないわ。それより私たちも何か食べましょう?」
「そうだね。でも何がいいかな?」
「そんなの私に聞かれても困るわよ」
「それもそうか。じゃあ、まずはホタテの串焼きにしようかな」
「ふふ。私は軟骨にしようかしら」
「しぶいね」
「あら。女性を口説く言葉ではなくってよ?」
「口説くつもりはないよ」
僕はシュリさんと苦笑を漏らし、串焼きの売っているキッチンカーに向かう。
他にも牛タンやホヤといった各種串焼きを取りそろえており、その幅広さはすごいと思う。
「おう。俺はホヤを買ってみたぞ」
亘さんはニコニコしながら串焼きを見せびらかす。
「えっと。僕はホヤが苦手で」
「そんなー」
「ふふ。私にも一つ頂戴」
「ん。ああ、いいぞ」
亘さんはそのままあーんする。
僕だってやったことないのに!
シュリさんはこちらを一瞥すると悪い笑みを浮かべる。
むっとする気持ちがこみ上げてくる。
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