第46話 旅行計画

 連絡先を交換したあと、僕たちは夏休みの計画を立てていた。

 まずは英美里の提案で動画を撮ることになった。

 前回のでかなり収入があったらしく、旅行に行けると言う英美里。

「でもなー。物価高で、どこも……」

 亘さんは渋い顔をする。

「大丈夫です。百万円くらい貯まっているので」

「ひゃ、百万!?」

 シュリさんも亘さんも驚く。

 無論、僕も驚いた。

 でも人は驚くとき、声が出ないらしい。

「じゃあ、どこに行くか、話し合おう♪」

 英美里はちょっとテンションが高そうに見える。

「俺、沖縄がいいな」

「私は北海道」

「ふふっ。なんでみんな国内なのよ。わたしは……京都!」

「いやいや国内じゃないか」

 僕は呆れたようなため息を吐く。

「そういう邦彦は?」

「僕? 僕は日本三景でもある『松島』だね!!」

 みんな困ったような顔をしている。

「だって、あの温泉娘の松島名月なづきちゃんと会えるんだよ! サイコーじゃないか。あの銀髪。楚々な振る舞い。なにより可愛いルックス!」

 ハッとする僕。

 あれ。二次元嫌いな人いる?

 ゴクリと生唾を飲み下す僕。

「あー。松島もいいねー」

「わたしもいいかと」

「うんうん。それもありだわ」

 みんな優しい!

 ぶわっと溢れそうになる涙。

「みんな、ありがとう」

「松島って何があるんだ?」

 亘さんが興味津々といった様子でこちらをうかがう。

「えーっと。温泉……?」

 言っておいてなんだけど、僕もあまり詳しくないんだよね。

「松島には恋愛成就の橋があったりするわね」

「あと、笹かま焼きの体験とか、牡蠣カレーパンとか?」

「ほへー。みんなの方が詳しい……」

 僕は全然知らなかったな。

「ふふ。まあ、みんなで一つずつ思い出を増やそうよ」

 英美里は満点の笑みを浮かべてスマホを手にしている。

 ああ。みんなスマホで調べていたのね。

 つい苦笑が漏れる。

「うん。みんなで思い出増やそう」

 それを見ていた亘さんも、シュリさんも暖かい視線を向けてくる。

「じゃあ、どこに行くか決めよう!」

 僕が言うとみんな拍手をする。

「じゃあ、資料集めだね!」

 僕がそう言うとみんな周りを見渡す。

「いい加減に黙りなさい!」

 そして、図書委員の一人が怒り出す。

「あ、いや。ごめんなさい」

 みんなで旅行の計画を立てるとなったとき、情報集めに図書館に行こう。そう言ったのはシュリさんだ。

 ジト目をシュリさんに向ける。

「すみませんでした」

 シュリさんの珍しい失態。

 ちょっと距離感が近づいた気がする。

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