第45話 テストの結果

 定食屋『ヴァンパイヤ』で食事を済ませた。

 その次の週。

 テストの返却が始まる。

 最初は数学だ。

 数字って見るだけで苦手意識を持ってしまうけどね。

 返ってきたテストの点数は38点。

 赤点だ。

「今回はみな成績が悪かった。赤点は平均点から差し引いた結果になる。今回は36点以下が赤点だ」

 おお。やった!

「よっしゃ。おれ36点だ」

 信士しんじが喜んでいる。

「こら。36が赤点だと言っただろう? 以下はその数字も含むんだよ」

 先生がきつい顔をしている。

「ええーマジかよ……」

 信士はぐったりとした顔を浮かべる。

 教室内で笑いが起きる。

 英美里も僕も笑っている。

くれないはもう少し勉強しろ。せめて以下は理解してくれ」

 先生は困ったように忠告する。

「まったく。ほらみんなもバカにするんじゃない。紅はこう見えて国語は90点代なんだぞ」

「先生。個人情報の漏洩です。酷い!」

「す、すまん。だが、お前のすごさをだな……」

 なんだろう。

 ちょっと先生が可愛く見えてきた。

 クラスの雰囲気もだいぶ良くなってきた気がする。

 なんでかは分からないけど。


 テストの返却が全て終了し、放課後。

「じゃじゃーん。赤点回避だよ!」

 僕は自慢げに亘さんたちに見せる。

「ということはみんな夏休みは楽しめるな!」

 亘さんは嬉しそうに僕を抱き寄せる。

「もう、男の子って……」

 少し冷めた目で見てくるシュリさん。

 でも嬉しいのだからしょうがない。

「ふふ。でもこういうのもいいよ」

 英美里は少し目を腫らした顔で喜んでくれている。

「そうね。でも、あんたはいいの?」

 英美里に投げかけるシュリ。

「良くないよ。でも今はその時じゃない。今は」

 ほの暗い顔を見せる英美里。

 少しの葛藤と悩みを抱えた彼女の顔を注意深く観察することもできなかった。

 僕は亘さんと一緒に喜びを分かち合っているのだから。

 しばらくして落ち着くと、身体を離す亘さん。

 僕からもう一度ギュッと抱きしめ、離す。

「満足したかしら?」

「終わり? まるでBLだったよ」

 女子二人は少し不満げにこちらを見やる。

 そこに含まれた意図など、当の本人たちには届かないとも知らずに。

 浮かれた僕と亘さんは帰る準備を始まる。

「さて。ゲーム実況はいつがいいかな?」

 英美里がそんなことを言う。

「また集まれるんだな。良かった」

 一安心した様子の亘さん。

 そう言えば。

「連絡先、交換しない?」

 僕が提案すると、英美里も亘さんもびっくりしていた。

「え。ダメ?」

「いいや、いいぞ。やろう!」

 良かった。

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