第42話 ジュース
デジタルタトゥーを張られた加害者たちは警察に全員連れていかれた。
まあ、現場から逃げ出した僕たちは逮捕も事情聴取もされなかったけど。
「警察にはあとで言っておくわ」
シュリさんが警察と懇意にしているらしく、悪魔の笑みを浮かべていた。
怖い。
やっぱり女の子って……。
「何しているの? 邦彦くん」
後ろから抱きついてくる英美里。
先ほどの一件で、少し距離が縮んだ気がする。
助けてもらったこともあり、少し気が楽になった気がする。
「うん。シュリさんが怖いこと言うから」
「ありゃりゃ。シュリ先輩、うちの邦彦くんを怖がらせないで」
「ふふ。まあ、それもそうね」
シュリさんの柔らかい笑みを見て一安心する僕。
やっぱり僕の仲間だ。味方だ。
「そろそろ帰るぞ。シュリ」
亘さんはまだ怖い顔をしている。
「はーい。またね」
シュリさんはそう言って亘さんと一緒に二年の教室に戻っていく。
「そろそろ期末テストも近いし、頑張ろうね?」
「うん。ありがと」
僕はそう言って机に教科書を出す。
先生がやってきて、テスト前の勉強が始まる。
いよいよ期末テストだ。
「ここテストに出るぞ!」
そう言われ僕は必死に書きうつす。
でも綺麗にうつすことができて満足した気分。
うんうん。よくやった。
自分で自分を褒めている間に授業が終わる。
あれ。なんだか聞き逃した気がする。
「お疲れさま」
英美里がジュースを机にのせてくる。
気を遣わせているな。
「うん。お疲れ様」
僕はジュースを受け取り、蓋を開ける。
その英美里もジュースを口にする。
ちなみにどっちもコーラだ。
「どうして僕が好きな銘柄を知っているのさ」
「え。だってこの間の焼肉パーティの時によく飲んでいたじゃない」
「ああ。そっか」
苦笑を浮かべる僕。
「次の授業を乗り越えたら昼休みだよ。気張っていこう」
「はいはい。英美里は頭いいからいいよね」
勉強会の時も先輩の亘さんに教えていたくらいだし、いつも学年トップにいるし。
「努力も、しているんだけどね……」
悲しそうな顔を、一瞬だけ見せた気がする。
「さ。そんなことよりも、ゲーム実況の配信も予定しているからね。覚悟して」
「べ、勉強は!?」
「テストは楽勝でしょ? 夏休みに入るし、投稿頻度上げないと!」
根っからの実況者なんだ。
英美里は好きなものがあって幸せだな。
僕も好きなもの見つけたいな。
これから僕の人生が始まった気がする。
過去との決別を、今ようやく迎えた気がする。
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