第41話 ヒーロー
憤怒の顔で歩み出す亘さん。
その後方から、シュリさんと英美里が見える。
止めてくれ。こんな姿の僕を見ないでくれ。
知っている人なら、知っている人だからこそ、止めてくれ。
もういい。
無理なんだ。
僕は弱いから。
だからもてあそばれるのだ。
僕には夢も希望もないんだ。
最初から刈り取られるだけの人生なんだ。
「亘。手加減してあげなさい」
「な、なんだよ。お前ら!」
今城がひるみ、後ずさる。
「俺は今、力をセーブできる気がしない」
「それは国際法に引っかかるって」
ため息を吐き、鞄を降ろすシュリさん。
英美里は動画を撮っているようだ。
本当に止めて欲しい。
こんな汚れた僕を撮らないで欲しい。
「証拠は充分です。やってください。先輩方!」
「ああ。やってやるさ」
「はっ。何を言っている。こっちは十八人だぞ?」
今城は額に浮かぶ脂汗を拭きとり、余裕の笑みを浮かべる。
「そうよ。やっておしま――」
洋子が言い終える前に、口から血が吐き出される。
「吸血鬼なんでな。強いんだよっ!」
亘さんが瞬間移動した?
いや、単に走っただけだ。
それでも三メートルはあった距離を一瞬で詰め寄る。
それほどまでの身体強化がされている。
「私も。こんなことのために痛めていたなんて」
シュリさんも駆け出し、今城たちの群の中に突っ込む。
二人の抵抗に今城の部下は散り散りに去っていく。
「ふーん。逃げられると思っているんだ」
英美里がスマホを操作し始める。
先ほどの動画を加工し、僕にはモザイクをかけている。
そしてその動画をネットにアップし始める。
「英美里、それはやり過ぎでは?」
僕は制服を着始めていた。
「ネットって怖いよね。一生残るもの」
今城を始めとし、まだ残っていた連中がひるむ。
その隙を見て、シュリさんと亘さんが回し蹴りを食らわせる。
さらに頭をつかみ、壁に叩きつける。
「俺はお前らを許さない! 殺してやる」
「亘。落ち着いて。それはやり過ぎ」
「はっ。だったらシュリはいいのかよ!?」
「よくは、ないかな」
怒りで血の気がましている二人。
「失礼ながら、邦彦くんの過去を調べさせてもらったわ」
英美里が駆け寄り、僕の頭を撫でてくれる。
「もう大丈夫よ。女の子でも、わたしは大丈夫でしょう?」
「うん。……うん」
僕は泣き出し、思わず英美里に抱きつく。
それを見ていた亘さんの力が少し抜ける。そして今城に殴られる。
「うざい」
小さく吐き捨てて、亘さんは今城の顔ぶったたく。
「死ねよ」
「亘さん!」
本当に殺しそうになっている亘さんを止めに入る僕。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます