第40話 過去は今も
翌日、僕は学校に向かって歩いていた。
と忘れることのできない相手の顔が見えた。
その連れも。
「よ。光のプリンセス」
半笑いでこちらを見る
「こん、じょう……」
「あは! やっぱりくにひこじゃん。一緒にあそばね?」
「い、いや。僕は……」
「いいじゃん。ちょっとだけ」
そう言って肩に手をのせてくる今城。
「へへ。相変わらず綺麗な肌しているな」
肩にあった手をそーっと胸元まで撫でる今城。
この屈辱を、僕は覚えている。
男なのに。
男同士なのに。
僕はオモチャとして扱われる。
ガス抜きに使われる。
「お。身体が反応しているじゃん。いいぜ。いこう」
僕の身体を強い力で抑え込むと、今城たちは路地裏に向かう。
「へへへ。相変わらず、いい身体しているじゃねーか」
抵抗するものの、今城は力づくで抑え込む。
「待っていろよ。少し遊ぶだけだって」
僕のズボンを脱がせにかかる今城。
降ろされるズボン。
下着まで露出され、僕は涙を流す。
変わらない。
何も変わらない。
僕は亘さんと出会い強くなった気がしていた。
でも違う。
何も変わっていないのだ。
弱い者は強い者に屈服するしかないのだ。
現実の前に理想は夢でしかない。
何も変わらない。
何も終わっていない。
僕はオモチャなんだ。
人の尊厳も、人の命もない。
ただの人形。
屈服するだけの奴隷。
心を壊し、性格が破綻し、ただ生きているだけのオモチャ。
なんの役にも立たない。
蹂躙されるだけ。
今城の下っ端の一人、
「わたくしも、参加させてよ~」
「いいぞ。ようこ」
今城と洋子は二人で僕を脱がしにかかってくる。
全裸にされた僕は、そのまま地面に転がる。
ああ。早く終わらせて。
終わってほしい。
男だって尊厳もあるし、心もあるんだ。
そんな当たり前のことすら、みんな忘れていく。
消えていく。
離れていく。
僕は僕でなくなっていく。
辛さも悲しみも。
全ては強者のためにあるのだ。
弱者に選択肢などない。
持つ者と持たざる者。
そんな僕を猥雑な目で見る今城たち。
「たまんない顔しているわね」
「だろ? こいつそそるんだぜ?」
今城たちはそんな馬鹿げたことを言っている。
相手の気持ちなんて考えないのだ。
自分のことが一番、大事なのだ。
何もできない自分が悔しい。
心の中の何かが切れる音がした。
「おい。何をやっている!?」
低く唸る声がした。
「あん?」
今城が下着を脱いでいると、路地裏に立つ男が一人。
「わた、る……さん?」
知った顔だった。
「何をやっていると聞いている!?」
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