第39話 夕食後の散歩

 勉強会が終わり、夕食を食べている。

「ここはトンカツ定食が一番おいしいのよ」

「そうなんですね。頼んでみます」

「じゃあ、僕は青椒肉絲定食で」

「俺はサバの味噌煮定食だな」

 並ぶ料理はどれも美味しそうだ。

 僕は甘辛なソースを堪能しつつ、タケノコのシャキシャキ感を楽しんだ。

「おいしい」

 うっとりするような声が漏れる。

「本当です」

 英美里も同じような声を上げる。

 食べ終えると満足したみんなは帰ることになった。

 僕は英美里と一緒に帰ることになった。

 シュリの家は裏手だし、ここは亘さんの家でもあるから、当たり前か。

 英美里が扉を開けて、夏の湿気混じりの熱を感じ、いやそうな顔をする。

「うへ~。熱いよ……」

「泊まっていくわけにもいかないでしょ。帰るよ」

 僕は引っ張る形で英美里を連れ出す。

「あの二人も仲良いよね」

「…………」

 シュリさんがそんな言葉を漏らし、隣にいる亘さんは無言で見送る。

 その視線が気になったけど、長居する訳にもいかない。

「英美里。もう少し早く歩け」

「ダメ。吐いちゃう」

「え。まさか食べ過ぎ!?」

「うん。美味しいからつい」

「あー。もうデザートのおはぎまで食べるから!」

 僕はなんとなく今の生活に満足しているのかもしれない。


「で。告白はまだしないの?」

「え。ええっ!?」

 僕は面食らい、つい大声を上げる。

「どういう意味さ」

「そのまんまだよ。好きなんでしょ?」

「う、うん」

「シュリ先輩のことが」

「え?」

「え?」

「「…………」」

 あー。僕が嫉妬していたのを勘違いしているのか。

 まあ、スルーしておこう。

「違うんだ」

「違うね」

 一瞬しゅんとしたあと、英美里は嬉しそうに微笑む。

「いや、それならいいだ」

 鼻歌を歌い出す英美里。

 スキップを踏んで、かなり嬉しそう。

「そうだ。わたしと一緒に来て」

「え。もう夜も遅いよ?」

「その方が都合がいいんだ」

 どういうことだろう。

 暗いところに連れ込むなんて。

 まさか。

 貞操の危機を感じ、ジト目を向ける。

「ん? どったの?」

 なんだろう。この間の抜けた顔は。

 当てが外れたみたい。

 僕はため息を吐き、言葉を吐き出す。

「暗がりに男を連れ込むって、あんまり良くないんじゃない?」

「あー。なるほどね。でも、わたしはただ単にいきたい場所があるだけだよ」

 本当かな。

「うん。秘密の場所」

「……分かったよ。行く」

「本当!? ありがとう!」

 手を合わせて喜ぶ英美里。

 そんなに行きたい場所があるなんて。

 もう八時くらいになる。

 明日も学校なのに。

 丁字路を右に曲がると、英美里の言っていた意味が分かった。

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